大牙くんがとても可愛いと初めて思った。


それは、唇で触れてみてすぐに分かったからである。













「キス、してみたいね」



冗談っぽく、でもやってみたいな、という好奇心からそうポツリと言ってみると、
アイスを食べていた大牙くんの手がぴたりと止まり、きょとんと目を丸くして私を見つめる。
アイスの食べかすが残っている口元をへの字にして黙り込んでしまって「?」に近い顔。
もしかして知らないのだろうか。映画やドラマのワンシーンなどで、一回だけ見た事が無いのだろうか。


いや、実は知っているみたい。
みるみる顔をカーっと真っ赤にして、頭を掻きながら、男の人とは思えないぐらい恥ずかしそうに
もじもじしている。黙っていたのはどう反応すればいいのか分からず、戸惑っていたからだ。

鈴花ちゃんの好きな恋愛ドラマを無理やり見せられたのがきっかけらしく、キスなど恥ずかしいシーンが
ちょっとでも出てきたら思わず目を背けてしまうような、うぶなタイプなんだろう。
そんな意外な大牙くんを初めて知った。


お互い惹かれあって付き合い始めてからもう一ヶ月。手を繋いだり、抱き合ったりしてきたけれど
大好きな大牙くんと、もっと恋人らしいことがしてみたい。




やっぱりお互い恥ずかしいから止めた方が良かったのかな、と思った時には
誰もいない夕焼けに染まった橋の下にもうすでに来ていた。上で時折、電車の通る音が聞こえる。
その音が過ぎ去った後の静けさは、まさに私と大牙くん二人だけの世界。背が頭一つ分ほど低い私の為に
腰をぐっと抱き上げてくれる。目の前にお互いの顔。今、とても緊張して心臓がドキドキしている。
きっと大牙くんも同じ気持ちなんだろう。表情が強張っていてすでに頬を赤くさせている。

こういうシーンは男性の方からするのが女の子にとってはロマンチックなんだけど、なかなか勇気が出せずに
ただ私をじっと見つめているだけ。お手本を見せるために一歩踏み出すように唇を近づけた。
ゆっくりと、ふんわりと包み込むような、優しいキスを。


「…大牙くん、キス、本当に初めて?」

「…当たり前だろ。もし 以外の女としていたら、…浮気って事になってしまう」

「ふふ、そうだね。」

も、その、…う、上手いじゃないか。やっぱり…他の誰かとした事が、あるだろ」

「上手いほどでも無いよ。ドラマを見て真似してるだけ。」


私を抱き締めてくれるまま、「次はどうすればいい?」と訴えるように真っ直ぐ見つめる大牙くん。
目は真剣そのものだったけど、大牙くんの胸板がドクンドクン、と伝わって来るのが体中に感じる。
「今度は私のやった通りにしてみて。」と囁いてから目を閉じ、大牙くんからのキスを待つ。
数秒かかったのは、彼が初めてだから無理も無い。大牙くんの唇の感触が唇で伝わり、逞しい首に
両腕を回し、静かに抱きしめ合う。本当に映画やドラマの甘いワンシーンの気分になって嬉しくなる。


「ん…」


思わずこんな声が漏れてしまうなんて自分はなんて淫らな女なんだろう、と思う。もっとそう思ってしまうのは
ちょっとしたいたずら心で舌を入れた事だ。ここまで予想もつかなかった大牙くんの体がびくん、と強張る。
大牙くんからすれば今まで味わったことのない、女の子の柔らかいフニフニとした唇の感触と柔らかい舌。
…その時に大牙くんに熱い何かを感じたのか、抱きしめる手に力が込み、いきなり舌が深く入れられる。
さすがに驚いた私は思わず唇を離してしまった。


「!…ご、ごめん っ…苦しかったか?」

「…っ…た、大牙くん、ちょっと強引すぎる」

「ごめんっ…その、…興奮…してしまって」


……。また黙り込んでしまった大牙くん。ひょっとして私を…変な言い方だけど喜ばせるために
つい必死になってしまったのかな。キスが慣れてない事で悔しいのか分からない。しかめっ面になって
唇を尖らせていた。さっきよりも顔が数段と赤くなって更に可愛さが高まった。


「…ダメだよな俺って。もっと…慣れるように頑張るよ。」

「ううん。そんな初々しい大牙くんも、とっても可愛いよ」

「いや、でも…こんなんじゃ の求めているような男じゃないよ」

「大丈夫。焦らなくてもいいし、急がなくてもいいよ。私がちゃんと大牙くんに教えてあげるから」

「………。////」



そんな貴方がますます可愛く見えて、そして愛おしさがこみ上げてきて、何度も唇を重ねてしまう。


-end-




★大好きな恋人にちゅー(^ε^)-☆!!をしたい、そんな女の子の淡い乙女心を書いてみました♪
こんな青春真っ盛りの恋愛に憧れるということは私もまだまだ若いってことですね!!うん!!
(何言ってんだ俺。)
それにしても大牙くんは一体何歳なんでしょうね。。。私より年下だったらマジワロ…エないんですけど;;

14.9.5