最近大牙くんの様子が変なの。






いや、変というか・・・何だか怒っているように見えるの。











毎朝私の姿を見かけるといつもしかめっ面の大牙くんの顔が柔らかい笑顔に変わり、


「おはよっす!本日も晴れ晴れとした爽やかでルンルンな一日になりそうだなぁっ!」


など、冗談交じりの面白く楽しい挨拶を欠かさず交わしてくれた。今日もどんな返事をしてくれるかなと期待していたのに
最近、突然人が変わったように何故か一方的に私を避ける行動。目をすかさず背けられたり、
ひどい時にはこっちが声をかけると無視をされたこともあった。それが一日だけなら
「今日は大牙くんに何か良くない事でもあったんだな」って納得できるけど
・・・お互い喋らない、鉛のようにずしりと重たい、険悪な日々がずっと続いている。


どうして彼が突然ああなったのか私には理解できるわけがなく、大牙くんの事で一日中悩んでしまい
心がズキズキと痛くて授業も耳に入らず、食事も喉を通らず、夜も安眠出来ないような有様だった。
・・・・・・どうしてなんだろう。私は大牙くんの気に入らない事を起こしてしまったんだろうか。




いつまでこんな苦しい日が続くんだろう・・・・・・

ちょっとだけでもいい。いつもの、お兄ちゃんぶりを見せる明るい大牙くんに戻って欲しい。






一緒にお昼ご飯を食べていた大牙くんの妹さん・鈴花ちゃんに悩みを打ち明けると
突然にんまり笑って何やら意味ありげに「あ〜」と呟いた。

「な、何?」

「それはね、お兄ちゃんが ちゃ んにヤキモチ焼いてるからだよ。」

「や、ヤキモチ・・・?」

「うん! ちゃ んは他の男子生徒から声をかけられるほど、可愛くて美人さんだからね!
それで嫉妬してるんじゃないのかなぁ??きっとそうだって!」

「そ・・・そう、かな・・・」

私が箸を持ったまま俯いていると、鈴花ちゃんは困った表情になりうーん。と考え込む。

「・・・けど・・・そんな軽い程度でお兄ちゃんがそこまで嫉妬深くなるわけないよね。無視されるなんて
よっぽどだよ!・・・・・・ ちゃ ん、何か心当たりとか・・・あったりする?」

「・・・・・・・・・。」

私と大牙くんはたまに悪質な冗談をぽろりと言い合う事がある。けどその後は普通通りに戻って
アイスを買って一緒に食べたり、夕日の染まる道を手を繋いで帰ったりした。全く変わらない綻んだ笑顔。
あの時の大牙くんの笑顔が懐かしくて、早く見たい・・・。無意識の内に彼の気に障る発言を
滑らせてしまったのだろうか。そんな覚えも記憶も全く無い。それとも・・・・・・。



私が烈くんと一緒に居たことが・・・もしかしてどこかで見られてしまって・・・?



軽くポンっと肩を叩かれてびっくりして顔を上げたらニコニコと笑っている鈴花ちゃんの顔。

「だーいじょうぶだよっ!お兄ちゃんはすっごく単純な性格だからすぐに機嫌直してくれるよ!
深く考えないでさっ、いつもの ちゃ んで居たらいいから!」

「・・・うん、ありがとうね。鈴花ちゃん。」━━━━




























━━━━今日も大牙くんとお話、出来なかったな・・・。





一緒に通っていた夕焼けの染まる道を一人歩いていると何処からか聞き慣れた悲痛の叫び声が
辺りに響き渡っていた。


「いててててっ!!こらっ、落ち着けっt・・・いたたたたっっ!!!」


こんな往来のど真ん中なのに平気で大声で叫べるのは━━━━彼しかいない。あの声は
間違いなく、大牙くんだ。久々に聞いた声に一瞬だけドキってなってしまったけど躊躇いなく、
真っ直ぐ彼の元に駆け寄った。


「・・・大牙くん・・・。」


「!あ”っっ・・・」


二人で偶然拾った一匹の野良猫を抱く練習を一生懸命していただろう、無数の引っかき傷の跡を残した
顔とバッチリ目線が合った。小さく声をかけると、見られてしまったと言いたいように頬をかーっと
真っ赤にさせる。そんな姿が滑稽で可愛らしかったけど、すぐに私から視線を逸らし
またいつもの不機嫌な大牙くんに戻っていった。


「・・・何の、用だよ」


「・・・・・・・・・・・・。」


あの明るくて優しかった大牙くんからは想像もつかない、冷たい態度と冷たい言葉。
何とも思わなかった彼特有のしかめっ面が何だかとても怖く見えた。まるで別人の大牙くんを見ているようで。
私には今のこの状況から抜け出せるような上手な言葉が見つからず、ただ黙ってじっと立ち尽くす事しか
出来ない。


「もう、俺の事なんか・・・・・・どうでもいいんじゃないのかよっ・・・。」


「・・・え?ど、どういう事」


「あいててててっっ!!!;;;」


抱き方が相変わらず上手じゃない為に腕の中の野良猫が甲高い悲鳴を上げながら激しく暴れ回る。
このまま放っておいたら引っかき傷がどんどん増えるばかりだ。そんな光景にちょっとだけ笑みを零しながら
スっと両手を差し出す。


「ほら、貸して。」


すぐに手渡され、子供をあやすように優しく抱っこしてやると、すぐに猫は大人しくなった。
まるで自分が今まで暴れていた事なんてコロッと忘れたような平然な顔。よしよし、と抱っこする私を
呆気にとられたように見つめる大牙くん。猫のおかげで少しは場の空気が和むかな、と期待していたけれど
現実はそんなに甘くなかった。大牙くんが小さく溜息をつき、ゆっくりと夕焼け雲を見上げながらボソッと呟く。


「・・・・・・俺、
の そういう所に、惚れたんだ」


「・・・・・・。」


「・・・
は 動物からも好かれるし、女子からも人気があるし・・・。そんなお姫様みたいな心が広くて優しい が 好きだったんだ。
それに・・・俺以外の男にも好かれるぐらい
は 綺麗だからな、・・・分かってるよ」


好き、だった・・・?なんで・・・過去形なの?今でも私・・・大牙くんの事が・・・


「・・・烈の坊やと・・・楽しそうに歩いてただろ」


「!・・・・・・・・・」


猫を抱く手に力がこもる。


「確かに烈の坊やは勉強も成績も優秀だし運動神経も抜群だよ。それに比べて俺なんか力馬鹿しか無いし
無知識だし、・・・。お似合いだったしな」


「・・・・・・っ・・・・・・。」


勝手すぎる言葉に心に針が次々と刺さってくる。自分の本当の気持ちを必死に訴えるのに精一杯な気持ちが
高ぶって、上手く言葉が出ない。


「・・・っ・・・ち、違う・・・よっ・・・・・・大牙くんっっ・・・・・・」


「何が違うんだよっ、どうなんだよっ、実際!!!」


したくなかった、口喧嘩。腕の中の猫はそんな空気を読み取れる訳が無く、首を傾げて小さく鳴くばかり。


「勉強で、分からない所があったから、・・・教えてもらっただけだよっ・・・。」


「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」


しばしの沈黙。「え?」と、目を丸くして私を見つめてくる。


「・・・楽しそうに見えたのは・・・大牙くんの話で盛り上がってたからなんだよ。烈くんも褒めてたよ、
いい彼氏さんが出来たなぁって」


「・・・そ・・・そう、なのかっ・・・・・・・・・?」


勝手に自分だけで決めつけて、勝手に思い込んで。決して貴方が嫌いになった訳じゃないのに。

・・・嫌いになった訳じゃ・・・・・・ないのに・・・。


「だから、別に烈くんとは、恋人とか、そんな関係じゃっ・・・・・・なく、てっっ・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・うっ、うぅっっ、ぅああぁぁぁっっっ・・・・・・・」


「!!!??おっ、おいっ、
っっっ!!??」


耐えよう、耐えようとずっと我慢してきたものが一気に溢れるように、見せたくなかった涙を大牙くんに
初めて見せてしまった。猫を抱えたままで涙を拭うことが出来ない。下唇を噛んで声を押し殺しながら泣き、
猫の体を濡らしていった。猫が心配そうに見上げる。
飛び上がって驚いた大牙くんは子供や女の子の泣いている所は弱く、周囲の目を気にしながら
ただオドオドするばかりだった。


「た、頼むから泣くなよっ!!俺が泣かしてるみたいに見られちまうじゃないかっっ!!;;」


「・・・っ・・・・・・だ、・・・って・・・・・・・わたし・・・・・・毎日、不安でっ・・・・・・怖、かったんだよ・・・・・・」


「・・・っ・・・・・・。」


「・・・わたしのことっ・・・もしかして嫌いになったんじゃないのかと、思ってっっ・・・・・・。ずっと、ずっと・・・・・・
怖くって仕方なかったんだよっっっ・・・・・・・・・」


こんなにも貴方の事を想って、変わらない気持ちのままでずっと想い続けて来たのに、
・・・抱えきれようもないこの苦しみをちっとも知らない大牙くんなんて、・・・嫌いだよ。


「・・・っ・・・好きっっ・・・・・・なのにっっ・・・・・・。大牙くんの、バカっっっ・・・・・・・・・」


「・・・・・・



「・・・!」


涙でくしゃくしゃになった顔を上げた瞬間。突然強い力で両肩を引き寄せられた。大牙くんの匂いしかしない
服に顔を無理やり押し当てられる。腕に抱えている猫が挟まれるんじゃないかと心配になった、けどそれを察したのか
すぐにぱっと腕から離れどこかへと走り去ってしまった。苦しくて息が出来ないぐらいに強く、強く
体を拘束される。


「・・・た・・・大牙・・・くん・・・?」


「・・・・・・ごめんなっ・・・!!
っ・・・・・・!!!」


「・・・・・・」


大牙くんの力強い声が若干震えていた。


「・・・
の 気持ちも知らずに、・・・ を ひどく傷つけてしまったっ・・・何百回 頭を下げて、
謝りたいぐらいだっっっ・・・・・・!!土下座して、謝りたいぐらいだっっ・・・・・・!!!だからっ・・・
本当にっっ・・・・・・・・・ごめんっっっ・・・・・・ごめんなっっっっ・・・・・・・・・・・・!!!!」


「・・・・・・・・・・・・・・・。大牙くん・・・」


そこまでして謝る必要無いよ。と逞しい背中に両手をそっと回す。初めての、抱擁。どこかぎこちなく感じたけど、
こうして抱きしめてくれるだけでも今までにない、最高の喜びだった。嘘のように乾いた目を閉じ、胸板に深く深く
顔を埋めた。


「・・・許して、くれるか・・・?」


「うん、もちろん。」


「ありがとう
っ・・・・・・ 大好きだ!!」


「私もだよ。大好きだよ、大牙くん・・・」



オレンジ色の夕日が辺りを綺麗に彩る。抱きしめ合う私たちを温かく、いつまでも照らしてくれた。━━━━
















「じゃあ、今日から仲直りだね」


「おうっ!お詫びにアイス奢ってやるよ、あと、
の 家まで送ってやるからっ!」


「い、いいの?途中で反対方向になるよ?」


「いいって、愛すべき
の 為なら、何だって!!」


「ふふっ。帰ろう、大牙くん。」


「よっしゃ、帰るかっ!」



手を差し出すともちろん応えてくれるように、大牙くんの大きな手が私の手を包み込んでくれる。
いつもより何倍も、何倍も優しく、弾けた笑顔。また見れて嬉しくなり、思わず指同士を絡める。
夕焼けの道を、大牙くんと手を繋いだまま再び歩き出した。



春の季節でもないのに、ひらりと舞う桜の花びら。鈴花ちゃんが何処かで優しく見守ってくれているような
そんな気がした。



-end-







★ラピストリア新キャラ・ダントツ一位大牙くん。最近彼が好きすぎてしょうがな いっっっ!!!!(*´∀`*)
つか、こんなかっこいいお兄ちゃんがいたなんて、なんでもっと早くおしえてくれなかったの鈴花ちゃ(ry


・・・今作のラピストリア、もう死ぬほどやばすぎますよね、イケメン達が多すぎるっ。(← そこかっっ!!)
最近は巨乳女教師もいて、もぉぉうヤバすぐるっっっっ。。。。(← だからそこだけかっっっ!!!)
こんな22作目でいいんですかっっ??mikko.、本気出し ちゃいますよっっっっっ!!!???(何のだ)


14.8.23