不思議だ、と思う。そして不思議な気持ちだった。




偶然出会って助けたお前が




こんなに




一番大切な人に変わるなんて―――――























桜の樹の下。暖かい陽気につられるように目を閉じて安らかに眠っている大牙くんの頭を膝の上に抱き、
愛おしいようにその髪を撫でていたら寝ぼけ眼の顔と対面した。



「……?」

「目が覚めた?大牙くん。」

「なっ、俺、いつの間にの膝枕で寝ていたっ?」



そう言ってぱっと目を見開いたあと、すぐさま離れてしまった大牙くん。
自分が寝ぼけて私の膝の上に眠りこけてしまったんだろうと勘違いして、顔を赤くしてその大きな体を縮こませる。
寝顔が可愛かったからもっと見ていたかったのにな。とクスリと微笑んで少し残念がった。



「私が膝の上に移動させたの。起こしたかったけど気持ちよさそうに寝ていたから。」

「ゆ、許せ〜;;;」

「ふふ、いいよ。誰でも寝たい時があるんだから」



それに貴方のお誕生日なんだから。と言うと、そうだった。と思い出したように呟く大牙くん。どこか抜けていて
可愛らしい一面があるのが大牙くんらしくて、私を和ませてくれたり愛おしさを込み上げさせた。それに我慢できなくなり
視線に合うように膝をついて、頬にキスを贈る。すっかり暖かくなった風に乗って、
可愛らしい桜の花びらが目の前をさらさらと綺麗に舞った。




「お誕生日おめでとう。大牙くん。」




















桜咲く樹が立ち並ぶ道を大牙くんと手を繋いで歩く。ガッシリとして逞しい手が、私の小さな手をすっぽりと包んでくれる。
この温かみと心地よさが私に幸福を与えてくれて、大好きだ。



「夢を、見ていたんだ。」



薄桃色の桜を瞳に映しながら大牙くんは言った。



「とても、懐かしい夢を」

「どんなの?」

と初めて出会った、――――あの日の夢を」




絡ませた指がぎゅっと強く握られる。





あの日も、今日と同じように暖かい春の日だった。周りには友人しか居なくて、まだ一人だった頃。
日が暮れて帰りが遅くなり、運悪く数人の不良に絡まれてしまった所を、一人の屈強な男性に助けられた。
強面の彼を見て、あの不良達の仲間なのかと最初は恐れてしまった。
だけどしかめっ面の怖い顔とは裏腹に柔らかく、ふわりとした優しい笑顔で私を安心させてくれた。
その彼が、――――今の大牙くんで、初めての出会い。初めての変化。そして幸せな日常はここから始まった。



















あれから一年。今になって考えてみたら、不思議だと思う。



生まれた場所も、自分の親も育ちも違う。性別も誕生日も違えば、家庭環境も違う。ただ一つの共通点といえば
同じ学園に入学した事だけで、あの日に出会うまでは私達は全くの赤の他人同士だった。
度々会う毎にいつの間にか気持ちが特別なものに変化していき、距離も段々近づいていき、お互いを語り合えるようになり。
何時しか同じ時間を共有し合う恋人となった。
初めて手を繋いだ時はお互いぎこちなくってとても緊張した。初めて抱きしめられた時は戸惑ったけどすごく嬉しかった。
そして初めてやってみた。慣れないけれど高揚感を覚えた、キスも。



思い返せば、数え切れない程の沢山の思い出を貴方と二人で築き上げてきたね。
共に楽しんだ日。共に笑い合った日。時には喧嘩してお互いを傷つけ合ってしまった日。
どんな時も最後に貴方はいつも笑ってくれた。その優しい微笑みを私に見せてくれた。



不器用な所があるけれど、そんな貴方だからこそ愛おしい。
貴方の存在。それだけで毎日の学園生活がこんなに光り輝いていて、嬉しくて仕方がないぐらいで。とても楽しい。
誰よりも逞しくて、大好きな貴方――――



「大牙くん」



本当に不思議だよね。
この世界という手の平の上で出会った、偶然の私と偶然の大牙くん。
誰もがありふれた出会いだと思うだろう。けどそんな些細で小さなきっかけが私達にとって大きな出来事であって
かけがえのない一番大切な、大事な人へと変わっていった。
最初のあの日が全ての発端になり、絵に描いたような幸せな未来に繋がることは
私と大牙くんは想像も予想もつかなかっただろう。



「卒業してしまっても、私達は一緒だよね。」

「おうっ!当然だろっ!」



別れ、そして新たな始まりを告げる季節――――春。私達が踏み出す道は何時だって希望の光で満ち溢れている。
桜咲くこの道を、この先真っ直ぐ続くこれからの未来を、貴方と手を繋ぎどこまでも歩いて生く。
貴方と出会えた素晴らしき出会い。貴方がこの世界に生まれてくれた喜び。傍に居てくれた大きな感謝を。
私は一生忘れないから。これからも。いつまでも。ずっと。





「大牙くん…」



今まで待ち望んでいたこの言葉が、彼の唇から囁かれた。



「愛してるよ」

「…私も……。」



思わずうっとりと目を閉じればそっと重ねられた、桜のように優しく甘いキス。





「ずっとずっと愛してる。大好きな大牙くん。」




-end-






★同時に完成させたかったのですが、絵派の私は先にイラスト完成させてしまいました(´∀`*)テヘ
3月後半、、、なんという素晴らしき季節にお生まれになったのでしょうか、この時期自宅の庭に丁度桜が咲いてて
めちゃくちゃ綺麗でしたよ(*´∀`*)


本当におめでとうっ、大牙くん…!!!!ラピストリアますます萌えさせてくれてっっっ………!!!!(え”)
貴方に出会えてマジ感謝っっっっ………!!!!!!!これこそ☆素晴らしき出会いだよっっ……!!!(感涙”)


15.3.27