バスケットゴールに入り損ねたボールのバウンド音が静けさが満ちた体育館に虚しく反響する。




全国大会がもうすぐ近い。いつもの部活練習が終わり、部員達が帰った後。たった一人・俺だけが残り、
毎日のようにドリブル、納得いかないシュートを何度も繰り返しながら試行錯誤を重ねていた。


…だめだ、こんな調子じゃ。あの子が見てくれる訳がない。もっと、もっと強くならなくては。
自分に約束したんだ。シュートが決まったら絶対あの子に、マネージャーに俺の想いを伝えるって。


時計は既に20時を指していて体育館の窓から覗く景色は漆黒の闇にどっぷりと包まれていた。
顧問ならまだしも、残っている先生が居たら確実に大目玉喰らわれるな。
しかし時間なんか気にしていられる程の余裕なんか無い。一瞬たりとも気を緩めたくないから。
それぐらい必死に練習をしていた事を物語るように、額からいくつもの汗が流れ出ている。
熱中している時は気にも留めなかったが、初めて意識しだすとユニフォームが汗で張り付いていて気持ちが悪い。喉も乾いてきた。
…少し休憩しようかな。と思った時。不意に明るい声が響き渡り、同時に肩にふわりと柔らかいタオルが掛けられた。



「練習お疲れ様っ、翔くん!」

「マ、マネージャー!?」



火照った頬から更に熱が上昇し、ドキッと肩をすくめてしまった。まさかまだ帰っていなかったのだろうか。
部員一人ひとりにタオルを掛けるのはマネージャーの役目だったので、思わずその名を呼び慌てて振り向くと、
――――別のクラスのにっこりと笑いかけている の姿だった。



、なんで、まだここに…?」

「私も部活で遅くなっちゃったの。それで帰ろうとしたら体育館に電気が点いてたからさ、もしかして、と思ったら。
はい、自販機で買ってきたウーロン茶、どうぞ!」

「ありがとう、助かるっ…!」



先程まで願っていたアイテムが二つ。体育館の端に腰掛けると が一緒に買ってきたであろう苺ミルクをストローで飲みながら
俺の隣に座ってきた。冷え冷えとしたウーロン茶を喉に一気に流し込むと熱を抑えるように全身が徐々に冷たく潤され、
空気が涼しく感じた。じっとりとした汗粒をタオルが吸収してくれる。



「今度の日曜日の大会に向けて練習してるんでしょ?優勝、出来るといいね!」

「あぁ。それもあるし、俺の好きなマネージャーに告白、するため…一生懸命努力しているんだ。」

「へぇ、何だか学園ドラマみたいで素敵で、ロマンチックね!」



「すごいすごい!」と興奮してはしゃぐ 。言われてみれば確かに。そんな意識は全く無かったので今更気恥ずかしくなる。
俺が遅くまでこんなに必死に練習している本当の理由を部員以外に打ち明けたのは が初めてだった。
告白、のところで言葉が少し途切れてしまったけど。



「けどね、シュートを決める翔くんもかっこいいけど自分の好きなバスケ部に全力を注ぐ翔くんもすごくかっこいいよ!」

「え、」



少し驚いて の顔を見る。



「頑張っているいつもの翔くんでいれば、シュートも優勝も絶対決まるから!マネージャーさんもきっとそれを望んでいるし、
翔くんの努力は必ず実るよっ!」

「…そう、かな……。」

「うん、そう、だからもっと自信を持って!」



そう言うと はバッグの中から油性のマジックペンを取り出すと、肩に掛けていたタオルに何かを書き始めた。
見ようとしたら「一人になってから見てね。」と念を押された。そして白い歯を見せてにこっと俺に笑いかけた、笑顔。



「大会、頑張ってね!試合、絶対見に来るからっ!」

「!……」



頬に再び熱が生まれた。心なしか、 の屈託ないその笑顔が―――俺の想い人に何となく似ていたから。



「じゃあ私、先に帰るからねっ、バイバイ、翔くんっ!」



その声にハッと我に返った時は、 は出入り口付近で大きく手を振ってから夜の闇へと小走りに去ってしまった。
再び訪れた静寂。タオルに書かれた場所をそっと見てみた。たった一つの、簡単な英文。



『Do your best!』




「…ありがとう、 …!」



今まで以上の大きな勇気がグッと奮い立った。



-end-






★ラピストリア翔くん、キャプテンになったのかな??更にかぁいくなってますね(*´д`*)
翔くん書けて良かた〜〜ヽ(*´∀`)ノいやぁ部活動とか、今や懐かしいですね、、、しみじみ。
中学は練習が鬼畜なブラスバンド部、高校は楽しい漫研部に入ってました(差がwww)
今思えば中学ん時は何故、ブラスバンド部だったのでしょうか謎です(おいおい;)美術部か合唱部に入っとけば良かったなぁ。。



15.1.18