今年もやって来た烈くんのお誕生日ももうすぐ近い。去年はあんまりできなかったので、
今年は思いっきりお祝いしてあげられると思うと胸が踊った。どんなプレゼントがいいかな。
これから寒くなるから手袋がいいかなぁ。などなど色んなアイデアが次々と浮かぶ。
私の生活が今日から忙しくなるけど、苦痛ではない。寧ろ楽しくって、何より嬉しかった。
クラスの人気者で誰からも好かれ、体育の授業が特に大好きでいつも一番を争う熱血な姿。
時には居眠りをして先生に怒られる少し滑稽な姿。傍らで見ていてとても愉快で楽しくて、そして大好きだった。


友達、としての意味ではなく、…もちろん大きな別の意味で。





…今日も彼の席は空だった。聞くと季節の変わり目で風邪を引いて寝込んでしまったらしい。
彼が休んでから今日で2日目。しんとした教室はとても寂しい。烈くんの誕生日が間近に迫る。
明日こそは来てくれないかな…。と祈るような形で来ることを願っていた。

━━━━10月24日。黒板で白い文字で書かれた今日の日付。


結局放課後のチャイムが鳴っても、とうとう烈くんは現れなかった。









「(…また来年までお預けかなぁ……。)」


下校時間。皆が和気藹々と帰り始めたり部活動へ行ったり、と好きなことをしている中、私だけ
肩を落として浮かばれない気持ちでプレゼントを手に、烈くんのいない席をぽーっと眺めていると。


「今日も恋人さん、来なかったな。」

「ひゃぁっ!?ふ、風雅くんっ!」


肩口から声をかけられ、びっくりして振り向くと口の端を少し釣り上げからかうように、
烈くんより落ち着いた性格の転校生・風雅くんが私の顔を覗き込んできた。そして後から
お転婆で可憐な女の子・鈴花ちゃんと、女子生徒の憧れのクールな生徒会長・氷海さんが私の
席の周りに集まってきた。『恋人』という単語にぼっと顔が赤くなり、慌ててそれを否定して見せる。


「なっ、何が恋人なのよ〜;;べ、別に烈くんとは恋人でも何でもなくてっ…」

「本当かなぁ〜〜? ちゃんよくよく烈くんのこと一日中眺めてばっかで顔もニヤついているしさっ♪」

「困った ちゃんだこと。恋に悩むのはいいけれど、授業も疎かにしてはいけないわよ?」

うぅ、氷海さんにそこまで言われるとたまったもんじゃないっ…。

「Σもっ、もう3人揃って私をからかうのは止めてよねっ!;;っていうかこの頃の鈴花ちゃんと氷海さん
最近おかしいっ!風雅くんもそんなにニヤついているの見たことないしっ!何かいいことでもあったのっ?」

「…別に? の気のせいじゃないのか?」

「そうそう。きっと気のせいだよ♪」


訝しげに見る私をほっとくように何やら3人だけで楽しそうに笑い合っている。一体何だっていうんだろう。。
私が烈くんのことが好きなのは既に相談しているし、その事はよくよく知っている。…けど何だか
風雅くん達の表情がいつもよりすんごく柔らかいというか…。私を見る目が変わっているというか…
そんな顔で見つめてくる。正直、何だか気持ちが悪い。話題をわざとそらすように鈴花ちゃんが言い出した。


「そうだっ!せっかくだから烈くんのお見舞いに行こうよっ!」

「えぇっ!?」

お見舞い…つまりれ、烈くんの家にってこと!?心臓がどきり、と反応した。
…実は恥ずかしい話、長い友達関係のくせに私は烈くんの家には一度も寄ったことがないのだ。

「いいわね。私も今日の生徒会の仕事休みだから久々に付き合おうかしら。 ちゃんも行くでしょ?」

「…………。////」


ど、どうしよう…。こんな私がいきなり烈くんの家に入ってきたら本人も驚くだろう。迷いが頭の中を
ぐるぐる駆け巡る。そんな私にさらに追い討ちをかけるように風雅くんが言った。


「どうした 。まさか恥ずかしくて行けないのか?」

「はっ…恥ずかしくなんかっ、ないわよっっ!!!それにっ、ちょうど良かったわっ、烈くんに渡したいものがあったし」


…しまった、なんて私は余計なことを言うのが好きなんだろうっっ。。。「あっ」と口を押さえたがもう手遅れだった。


「分かった、烈くんへの誕生日プレゼントでしょ」

「あ〜〜〜〜っ!!! ちゃんやる〜〜〜〜☆」

「これはもうカップル確定、だな」

「な、なんでそう断言できるのよっっ!!;;こ、こらっ、にやにやのレベルを増すなっ!;;;」

「とにかくっ、暗くならない内に烈くんの家にレッツゴー☆だよっ!」


こんな機会に寄れるなんて思いもしなかった。けど…烈くんの家。一体どんな家なんだろう。。と
好奇心が湧く。それに一人で行くより4人一緒がとても心強い。3人の後を追うように
まだ人がちらほらと居る夕焼けの教室を出た。━━━━





















━━━━「…一人で行けなんて聞いてないよぉ〜;;もうっ、3人とも、非常識すぎるっっ!!」



4人一緒の行動は校門を出て数分歩いた場所まで終わり、ここから先は何故か私一人だけの行動となった。
その場所は烈くんの家があるであろう住宅街。「グッドラック!」と笑顔で言われ、止めるのも聞かずに
風雅くん達とそのままあっけなく別れてしまった。…きっと私が烈くんが好きなことを知って
わざと二人っきりにさせようという魂胆なんだわっ。うううっ、ましてや烈くんと二人だけになった事がない、
家にも遊びに行ったことがないこんな私に対して、あまりにも言語道断すぎるわよっっ!////
…あぁなんとなく足取りが重い…。せめて烈くんの家まで案内してくれたら少しは気分が違ってたのに…。
でもでも早く進まなければ時間だけが無駄に過ぎるだけだ。烈くんのせっかくのお誕生日が終わってしまう。
もちろん、毎日徹夜して作った手作りプレゼントは忘れずに持って。


…それに風雅くん、妙な事を言ってたわ。「玄関前に和服姿の女の子がいたらそこが烈の家だ」って。
烈くんに妹さんがいるなんて話は一度も聞いたことがない。お婆ちゃんはいるって聞いたけど……。


緊張の面持ちで色々考えながら歩いていたら、玄関前で掃除をしているひとりの女の子を見つけた。
あ、ひょっとしてここの家、かな…?恐る恐るその子に声をかけてみた。

「あ、あのー、私、烈くんのクラスメートで っていうんだけど…烈くんは、いるかな?」

「おぉっ、貴女が さんか。孫が大変世話になっているな」

え……。この子、孫って言わなかった!?…ということはっ…いや、まさかっっ……。

「初めまして。わしは烈の祖母で茜という者じゃ。」

そのまさか、が当たってしまったっ。こ、こんな小さい子が烈くんのお、おばあちゃん!!??

「Σご、ごめんなさい、失礼しましたっっ!!;;お婆さんだとは、露知らずにっ…!!」

慌てて何度もぺこぺこと謝る。それでも茜さんは笑って許してくれた。

「いや、構わん。驚くのも無理はない。烈の見舞いに来てくれたんじゃろ?遠慮せずに上がるといい」

「は、はいっ!お邪魔します!」


お、驚いちゃったなぁ…;;などなど思いながらも茜さんに連れられて初めて烈くんの家に入った。





━━━━「烈から話は聞いたんじゃが…なかなかの美人さんじゃな。」

「いっ…いや、私、そんな美人と呼ばれるほどのものじゃぁっ…////」

「いやいやもっと自信を持っても良いぞ。ひょっとして烈以外の男からも好かれているんじゃないか?
そうじゃろう??」

心なしか、茜さんの口元が笑っているように見える。。。

「Σとっ…、とんでもないですよっ!ははは…;;」


そんな他愛ない会話のおかげで少しだけ茜さんに親近感を持てた気がして安心した。そして一つのドアの前に来て
茜さんががちゃりと開くと━━━ベッドの上で横たわっている、久々に見た烈くんがいた。返事に応えるように
布団の中でもぞもぞと動いている。私の緊張が高まってきた。


「烈。お前のお友達…いや違うか。恋人の さんが来てくれたぞ。」

「ちょっっ………!!!!////」

っと、茜さんまでそんな事言うのっっ!?……まさかっ、風雅くん達とグルっ!!?
からかうようにニコニコ笑っている茜さんに、顔をぼっと燃やしながら手を横にぶんぶん振って否定した。
しかも本人のいる前でっ……!!

「ちちち、違いますってっっ!!しかもちゃっかり訂正しないでよっっ!////」

「ん?だって二人とも卒業したらいつか結婚するんじゃろ?こんな可愛い女の子を手に入れるとは
烈の奴もなかなか隅に置けんのう。わしも自分の事のようで誠に嬉しい限りじゃ。」

ちょっと、当たり前の事のように言わないでよっっっ……!!!!
しかも本人のいる前でぇっっ………!!!

「も、も、も、もう〜〜、茜さんってばぁ〜〜〜;;;ていうか烈くんに聞こえたらどーすんですかっ!」

「…ばーちゃん」

烈くんの掠れた声が聞こえ、ハッとなって振り返る。ほら、聞こえちゃったじゃないっ…。

「… と二人にさせて」

「(えっっっ…………!)」


予期せぬ展開に心臓がどきっと飛び上がった。それを聞いた茜さんは「そう来たか」と微笑むと
ドアの前まで行き、笑顔でこう言い残して出て行ってしまった。


「じゃあな烈、 さん。二人こころおきなくゆっくり過ごすといいぞ」

「(あっ、茜さんっ…。)」




…ドアが閉められると私と烈くん二人だけの空間になる。窓から真っ赤の夕日が射し込む、
烈くんの…部屋。今にも私の心臓の音が…大きく部屋中に響き渡りそうだ。
とりあえず断ってから烈くんの椅子を借りて遠慮がちに座り、傍に寄った。


「…初めてだな と二人になるの」

「そ、うだね」


いつも見ている顔のはずなのに。いつも一緒にいて会話が途絶える事のないぐらいの仲なのに
…静かだ。こういう時はあとの3人のうち必ず誰かがいて完全に二人っきりなんて機会は全く無かった。
………何だか妙にくすぐったく感じる。言葉が上手く出せなく、口の中がからからに乾いている。
茜さんがもう少しいてくれたら良かったような…いや、寧ろ嬉しかったような、…やっぱりそうでないような…
そんな複雑な心境だった。そして本来の目的を忘れないように、と丹念込めて作り上げた誕生日プレゼントの
入った包みをさっと手渡した。


「?…何それ」

「き、今日、烈くんの誕生日だから…手袋、編んできたの!」


まさか私がこの日の為にプレゼントを作ってくるとは思わなかっただろう、烈くんの顔が驚いている。
私を見つめたまま無言でそれを受け取った。


「… 、手袋なんか編めんのか、器用だな」

「何、その意外と驚いたような顔と言い草わっ!;;女の子なんだから手芸のひとつぐらい出来ますよっ!」

「…え、まさかっ、氷海と鈴花がまだ寒い時期に履いてたあの手袋って、 の作ったもんっ!?」

「そうよ、今頃気づいたのっ?遅っ!スーパー遅ッッ!;;」

「いや…あんな店で売ってないようなものが の手作りだとは思えないぐらいいい出来栄えだからさ。
まさか俺の元にも届くとは思わなかった。何か…その…ありがとな。」

「えへへ。どういたしましてっ」


烈くんにそこまで言われると誇らしい気持ちになる。…私の気のせいだろうか。あの烈くんが
こんなに照れている姿は初めて見た。女の子からプレゼントをもらうのは慣れてないから
それで照れているんだよね。きっと。…


「今日烈くん来るかなって期待していたのに。せっかくのプレゼント渡せなかったら
どうしようかと思ってた。」

「あぁ。本当ついてねー誕生日だぜ。」

「早く元気になって学校に来てね」

「おう。治るように頑張るよ。」

「…烈くんがいないと調子狂っちゃうから」

「は?なんで」

「…っ…烈くんが…好き、だから…!」

っ…?」


そう言った瞬間━━━━烈くんの胸板を強く、ぎゅっと抱きしめ顔を埋めた。友達としての「好き」ではなく…
本当の「好き」の言葉を、とうとう言ってしまった。そして私らしくない大胆な行動。もう、後には引けない。
…顔は見えないけどきっと烈くんも突然の私の行為に動揺しているだろう。しばらくの無言が続いていた。
何秒か後私の両肩に手を置かれ、静かに体を離された。烈くんの何時にない真剣な眼差しが
夕日のオレンジ色の光によって反射されている…


「… 。…実はな…」


烈くんがこれから何を言うのか…その暗い口調からもう予想していた。きっと、良くない結果なんだろうと。
聞くのが怖かった。けどどちらにせよ聞かなきゃならない。恐怖で…いつの間にか唇が震えていた。




「俺も、ずっと前からそう言おうとしてたところだったんだよ」




「えっ、」


聞き返す間もなく━━━━唇に何か熱く、そして柔らかい感触が伝わった。何が起きたのか分からず、
状況を理解するのに何秒かかかってしまった。





……私、…烈くんに………キス…………されてるっ……………………!?




体中にかーっと血が昇った。



「…それにな」

烈くんの囁く言葉が私の唇にかかる。

「俺がお前を好きだって事…風雅達やばーちゃんも既に知っているんだよ。」

「えぇっっっ!!?////」

「本当可愛いな、 は」

歯を見せ、にかっと無邪気に笑って見せると改めてベッドに座り直し…


「来いよ」


と言って、私の腕を掴むとさらうようにぐいっと引き寄せた。

「ふわっ!?れっ…、烈くん!?」

「心配すんなよ、抱きしめる以外変なことはしねぇから」

「で、でもっ…あっ、茜さんに見つかったらどうすんのっ!」

「もう知っているんだから別に何にも言わねぇよ。」

「………………。////」



…………烈くんの体……ぽかぽかして、あったかい……………。


目をうっとりと閉じ、一筋の炎が灯ったようなその温もりに身を任すように肩口にそっと頬を寄せる。
今…烈くんの心の中の炎は真っ赤に、煌々と燃え盛っているだろう。思わず眠くなってしまうのを堪えて
烈くんの温かい体を静かに抱きしめた。


「好きだよ、 。」

「私も………。」


その炎が、いつまでも消え去ることの無いように。━━━━























━━━━あぁ、昨日はなんて幸せなひと時だったんだろう………。


と、ぽーっとした頭の中で未だ覚めない夢に浸りながらのろのろと登校していると、
いつものあの元気な声と共に肩をぽん!と叩かれた。


「よっす、 っ!おっはよっ!」

「……あぁ烈くん…おはよ……。」

ゆ〜っくりと振り向いたマスク姿の私と対面した烈くんはぎょっとなって少し後ずさった。

「わっっ!!ど、どうしたんだよ、風邪っ!!?;;」

「う、うん…。昨日の夜から頭がぽーーーっと痛くて………。」

「ハッ、まさか、昨日のキスが原因で俺の風邪のウイルスがそのまま移ってしまったとかっっ!?;;;」

「ばかっっ、声が大きいってっっ!!!!////」

周りの人達に聞こえないように慌てて人差し指を口に当てた。

「とにかくそんな状態で授業を受けるなんて体に余計悪いぜ、今日は休めよ!お詫びに
の家まで送ってやるから!」

「い…いい、の…?」

「大丈夫だよ先生には俺から伝えておくからよ!それに心配しなくても帰りはまた会えるだろ、
見舞いに必ず来てやるからさっ!」

「うん、ありがとう、烈くん…。」


その魔法のような言葉で私の風邪を一瞬で治してくれたらどれだけ最高なんだろうか。
こうして来た道をUターンし、8時間早い帰路に着いた。


「そだ 。昨日のプレゼント、ありがとな!」

「あ、気に入ってくれた!?」

「おう、デザインもいいし、すごくあったかいからこれで今年の冬も乗り越えられるってばーちゃんが喜んでた!
にお礼伝えとけって」

「え”っっっっ……!!??」

い、いや、あの手袋…茜さんの為に作ったんじゃなくて、烈くんの為に作ったつもりだったんだけどっ…;;;
マスクの中で口をあんぐりとさせた。烈くんが申し訳なさそうに言う。

「いや〜、 が帰った後、俺が履いてみようとしたらばーちゃんに見つかってしまってな、すぐに気に入って
返せ言っても聞かねーもんだから…そう落ち込むなってっ!;;」

「ふふ、別に落ち込んでないよ。茜さんがそんなに喜んでくれたのなら、私も嬉しいよ。結果オーライってことで」

「今度クリスマスにケーキか何か作ってくれよ!期待しているから、な!」

「うん。その時は3人抜きの二人だけのパーティーね!」

「おうっ!絶対だぜ!」




心が熱くなりそうなそんな大好きな笑顔の為なら、なんだって出来る。

私と烈くんの、熱い恋に満ち溢れた学園生活。ここから始まる。



-end-





烈(れっ)ちゃんっっっっ!!!!!ラピストリアの主人公だから気合入れちゃった よっ!!(何”)


はい、今作大活躍のつぎドカ族の夢小説ついに書きましたよ♪…やばいっ、何だか意外と楽しいっっ、
バースデー夢小説っっっ!!!!!(←

本当一ヶ月毎に書きたいキャラが多すぎてこれから忙しくなりそうで、またまた絵を描く暇がありません;;
けどけど楽しいですけどね、仕事するより遥かに♪♪♪(←

ポップンラピストリア、家族キャラが登場したり、と色々楽しい展開になって、これからも続きそうな予感が
しますけど果たしてどんなキャラが絡まって、どんな壮大なストーリーとなるのか、
見逃せませんね!!!!!( ´∀`)bグッ!!☆


(独り言)…誕生日毎にupするという予定ですが、今はいいけど一年ごとに気が変わって
止めてそうな自分がいそうで怖いよなぁ〜〜〜(((゜Д゜;)))もうぽんぽん書いてとりあえずupって形で
こっそり載せるっていう手もあるけど…………。。。。。


14.10.22