その日は特に何も用事が無ければ、いつもの通りお風呂に入って自室で髪を整えて23時ピッタリに寝るという予定だった。
だけど特別な日、という理由で特にこの私が彼の傍に居てあげないと一日が終わった気がしなかった。
何故って、――――彼の、ワンくんのお誕生日だから。なので今日だけはこうして付き合ってるわけで。



普段は彼から誘う夜の散歩。その日は珍しく私から誘った。するとライブで疲れきった彼の顔が180°一変し、
心の底から嬉しいと言わんばかりのはっちゃけたような笑顔になって。
「デートねっ!」ときっぱり置き換えられて現在に至るわけだ。














「マジで嬉しいよ、 お姫様からお誘いが来るなんて夢みたいだぜぃっ!」

「言っとくけど、今日ワンくんのお誕生日だから特別に付き合ってあげてるだけだから。…感謝しなさいよね。」

「相変わらずツンデレな所が多いんだからー。…今日だけじゃなくて毎夜の方がもっと嬉しいんだけどな(ボソっ)」

「聞こえてますけど。」

「Σ冗談に決まってるってっ!つか、 の目マジで怖いってっっ!;;;」



いつ春が来てくれるんだろうと少しの焦燥感を覚えるような寒さが残るいつもの場所。公園。今宵は雲がひとつ無く満月が一際綺麗な夜だった。
白い照明が照らす夜道を二人だけで何処へ向かうでもなく、ただ歩いていく。これが本当に普通の散歩だったらこんなに緊張して
体を強ばらせる必要なんて無かったのに。いつの間にかワンくんの手が、私の手を温めるように離さず繋いでいたから。
初めて繋がれた時は流石に驚いてしまったけれど、…何でだろう。不思議と嫌いではなかった。
そんな私の慣れない戸惑いを知らないワンくんは子供のように無邪気に笑っていた。



「そういや 。今日は何の日だったか、知ってるか?」



突然訳の分からない質問をしてきたので、「は?」と言いたいように眉をしかめる。



「何言って…。だから今日貴方のお誕生日に決まって、」

「ちーがーうーよっ!それ以外っ!今日は2月14日。と言えば〜??」

「…あ。」

「そうそうっ!恋人からチョコという愛の証を貰う、世の男がいっちばん楽しみにしていた日っ!」



そう言った後のワンくんの顔が一層綻びる。そうか、世間ではバレンタインデーだったのか。初めてそう知らされるまでは
全く頭に入っていなかったし、ましてやチョコレートを作った経験は一度も無い。…もしお願いされたら頑張って作っていたかもしれないけど。
いたずらっぽく笑うワンくんの声が何処か残念そうに聞こえた。



「サプライズ&どっきりバースデープレゼント、のつもりでくれるのかな〜って敢えて黙って密かに楽しみにしていたんだけど
結局何もしてくれなかったよな〜 。…へへっ♪俺が何言いたいか分かるよな??」

「…まさか、作って欲しかった、とか?」

「Σあったりまえじゃーんっ!恋人同士としての当然のお約束行為だろー???」

「なっ、い、いつから恋人なのよっ…////悪いけど私はチョコなんて作れるほどのお料理の達人じゃありませんっ、
キビさんから貰った多めのきびだんごと散歩だけで今日は満足と思っときなさいっ。」

「なんでだよー、 の意地悪!本当はすっごく後悔してるくせにー♪」

「別にしてないしっ!全くワンくんったらいつまで経っても子供なんだから」



直後。空いているもう片方の手の甲に、横に生えていた木の枝が引っかかり、「痛っ!」と小さく叫んで跪いた。
それに気づいたワンくんが咄嗟に私に振り返って一緒にしゃがみ込む。



、大丈夫か!?」

「う…うん、平気。…あっ、血がっ…。」



斜めに一直線に出来た赤い線。よっぽど強く引っ掻いたのだろう。傷口から血がじわじわと滲み、しばらく止まりそうになかった。



「ご、ごめんね。私の為に…ドジだよね」

「いや、ドジな も逆に可愛いよ。…大丈夫、俺が応急手当してあげるから」

「い、いいよ、これぐらいの傷何ともな」



私の手の甲を手に取り顔をゆっくり近づけると――――ぺろり。と濡れた舌の感触が這った。



「…っ…!?ひゃっ!ワ、…ワンくん何、するのっ…!?」

「包帯とか薬持っていないから、これしか出来なくて。…唾液は消毒の代わりになるし、さ。」

「だ、だからってっ…!ん、んんっ、ぃ、やぁっ…あっ…。」

「…ん、可愛い声出してるよ、 …。」



傷口から尚も溢れ出てくる血を舌で掬い取るようにゆっくりと舐められる。上目遣いに反応を窺うワンくんの妖しげな二つの瞳が
私にいけない何かを掻き立てられる。自分でも情けない声が口の間から漏れてしまうのはそのせいだった。決して傷の痛みではなくて。
ワンくんの柔らかい舌が手の甲を這う度に、体がぴくん、ぴくんと小刻みに震えてしまう。息が出来ないくらいの強引なキスをされてる訳ではないのに
何故か頬に熱が伝い、少量の涙を目に浮かべていた。



「…もう興奮した顔になっちゃって、そんなに気持ちいい…?」

「ばかっ、そんな、わけっ……」

「もっと素直になっていいし、声をもっと上げてもいいんだぜ?周り誰もいないからさ」

「…あっ、あっ…!ぅんっ……」

「…マジで可愛い、 …。」



そしてようやく血が止まったのか満足したように笑って、「バレンタインチョコの代わり、美味しく頂きました」と言い残してからそっと唇を落とした。










「…っ…もうっ、ワンくんったら最っ低!!そんな変態みたいな人だとは思わなかったっ!」

「だからつってグーで殴る事ないだろ〜〜??;;;いいじゃん怪我を治してあげたんだからさ〜〜」

「ちょっとはエチケットというものを考えなさいよっ、もう明日キビさんに言いつけてやるんだからっ。」

「Σそれだけは勘弁っ!今日だけは俺の我侭を聞いてもいいじゃんかよ、だって誕生日だから、さっ☆」

「…何が今日だけよ。ほぼ毎日のくせして」

「てへへ。。。」



キビさんもよくこの人を雇ったものだ、と呆れ笑いを一つ。甘えるように私を後ろから抱きしめるワンくんを「やっぱりお子様なんだから。」と笑って
温かいその両腕に包まれた。何故か憎めなくて彼の行動が何でも許せる、この不思議な気持ち。





―――― こんなにも貴方が ”好き” だからだろうか。





「ワンくん。お誕生日おめでとう。」

「ありがとっ!
、大好きっ!!」



そっと囁いてあげたつもりが聞こえてしまったらしく、恥ずかしくて顔を真っ赤にさせる私。抱きしめる腕に力が入り首筋に顔を埋められたので
あぁ。幸せだな。とほんのりと実感した。いつも素っ気ないこんな私だけど本当はね、



私も貴方が大好きだよ。ワンくん。




-end-






★先に言っておきますっ、ひた甘要素が含んでいる&凝っている&長い
バースデー夢小説
それぐらいっっ、そのキャラに熱い愛情ビームを注いでいるという事ですから ねっっっ!!!!(全然先じゃねぇーーーーーー…!!!(怒))
……いや、よく考えてみればほぼ全員かもしれないですね((∀`*ゞ)テヘッ

只今ワンくんが嫁キャラまでには行かないけど大大大好きキャラランキングのトップです♪あんな狭いスペースじゃなくて映画のような大画面で動き回るポプ キャラちゃん達を
見てみたいと常々思うてるのは私だけでしょうか。。。。。もしそれが叶ったら私は現実の世界には帰らんぞっ!!!(自重っっっ)

最近小説を書くペースが遅くて困っております;;;;;精神的に頭も文章力も弱た弱た…orz(仕事連勤が原因。)


15.2.10