その場所は美術館に展示されても良いぐらいの価値があると言っても過言ではない。
まさにキャンパスに描かれた絵になるような、ここ・昼下がりの公園が好きだ。
世間がお休みの日曜日などは親子連れや集団の子供たち、カップルで賑わっており、それ以外はがらんと静まり返っている。
この静けさの雰囲気が逆に良い。ぽつんと一人でいる時間が長いと、この公園をほとんど貸し切っている気分になれる理由で
平日が好きだった。今日も私は色鉛筆とスケッチブックを持参し、お気に入りの場所を描き写したり連想したものを描く。



絵を描く、と言っても画力はプロの先生並みに残念ながら上の方ではない。構図など難しい事にはあまりこだわらない、
本当に簡単なものである。しかし絵は心を落ち着かせてくれるし、想像力や表現力を高めてくれるので
見るのも描くのも昔から大好きなのは変わりない。



今日はこの辺に決めた。設置されたブランコに腰掛け、大好きな絵を描き始める。しばらく没頭していると、



「絵、上手だね。」



声をかけられたのでびくっと肩が竦み、思わず青鉛筆を落としそうになった。自分の意識していない間に見られてしまったんだろうか。
しかも絵が上手いなんて親以外褒められた事は全く無かったので、思わず恥ずかしくなって反射的に絵を隠してしまう。
見上げると私より大きめのスケッチブックを持った一人の青年。深々と被っている帽子から覗く緑色の瞳が
何処かクールで優しげな印象を与えた。腰から長く黒い尻尾が生えてゆらゆらと揺れている。
帽子のてっぺんに妙に盛り上がった先端。猫耳、だろうか。



「驚かせちゃってごめんね。何描いているの?」

「ここの、風景。」

「そうなんだ。君もこの公園が好きなんだね。僕も大好きだよ」



そう言うと隣の空いているブランコにふわり、と腰掛けパラパラとページをめくる。彼もどんな絵を描いているんだろう。と
興味津津に横からちらりと覗くと、私の描く絵より驚くほど画力が高いので思わず感嘆の声を上げてしまった。



「わっ、すごい、きれいっ…。」

「ふふっ、ありがとう。」

「…私も、それぐらいに上手く、なれるかなぁ…。」

「大丈夫だよ。絵が大好きだっていう気持ちがあれば、もっともっと上手になれるよ。自信を持って。」

「…う、うんっ、頑張るっ!」



見知らぬその人の唇から発した、励まされるようなその言葉で自信がつき、不思議とみなぎってきた。ガッツポーズを見せると
彼は目を細めてにっこりと頷いた。




「ねぇ、良かったら一緒に描こうよ。二人で描いたらいい発見があるし楽しいよ。」

「うんっ、賛成っ!えっと」

「僕は睦月。よろしくね。」

「私、 。」

、かぁ。いい名前だね。」

「!……」



ドキッと胸が高鳴った。あぁ、もしお母さんがいてくれたら後ろに隠れていたのかもしれない。頬が熱で真っ赤になるという、
恥ずかしい所を見られてしまった。私を真っ直ぐ見つめる優しい緑色の瞳。その絵のような微笑みで、私の心に
小さなものだけど、ほのかな恋心が生まれた。


いつもと違う心地いい風が吹く中で。楽しい会話に花を咲かせる中で。睦月くんの提案でお互いの似顔絵を描いた。
睦月くんが似顔絵を描きながら私をちらっと見つめてくるので、つい恥ずかしくなってしまい描くペースがいつもより遅く感じる。
おかげで完成が睦月くんの方が早かった。「焦らないでゆっくり描いたらいいよ。」と私の完成を待ちながらにっこりと私を直視する。
口には出さなかったけど、一生懸命似顔絵を描く事に、ますます集中出来なかった。



「うわっ、私、すっごい綺麗っ!どうもありがとうっ、睦月くん!」

「こちらこそありがとう、 。僕の似顔絵とても可愛いよ。」

「い、いいのかな、ちょ、ちょっとヘタ、だけど」

「ううん君の描いた絵だと思えばすごく嬉しいよ。この絵、貰ってもいいかな」

「えっ、そんな、いいのっ!?」

「今日、僕のお誕生日だから。」



照れたように笑いながら私の描いた似顔絵を大事に抱きしめてくれる睦月くんを見て、私も満足したように精一杯笑い、お祝いした。



「お誕生日おめでとうっ、睦月くんっ!」

「ふふ、どうもありがとう。 。」



貴方と一緒に過ごす、この昼下がりの公園がとても大好きだ。




-end-







★本日むしゃくしゃした出来事があったので小説をさっさと書き上げました。(…私が原因なんですけど…;;;)
心がど〜〜〜も晴れない時にあんまり書きたくなかったんですけどね。今日のお誕生日キャラに非常に申し訳無い…(;_;)
今後仕事以外の最悪な出来事を二度と起こさぬよう、日頃から心がけます。。。っていうかこんな調子でこれから一年大丈夫k(ry
睦月くんがきゃわいい猫青年だと気づくまでに何日かかったんだろうか;;;(あ”!?)

あぁぁ絵、絵、ばかり言っておられるっっっ…私に絵を描け、と命令しておられるのかあぁぁぁ〜〜〜〜〜(鬱。”)



15.1.24