「殺し屋の男と二度と付き合うな」






充実した生活は当然長くは続かなかった。
優しかった親からの厳しい警告。心をグサリと突き刺された。







ごく普通の男性と付き合っている、と嘘を貫いてきた。仕事は?清掃員。バイト?正社員。・・・なんて。
親は特に何も文句は言わなかったし、上手く長続きが出来ると思っていた。嘘が流れるまでは。
その噂が最悪、親の耳に届いてしまった時は案の定。嘆き悲しまれた。大激怒された。
そして考えてもみなかった言葉。 「もしその男と一緒に居たいのならば親子の縁を切る」
これが、今まで私を温かく育ててくれた優しい親の台詞なんだろうか。
殺し屋、と聞いただけでいい顔ひとつされないこの世の中。親のそんな気持ちも分からないことは無いけど。


・・・好きな人と、もう一緒に居られないの・・・?居ちゃダメという事なの・・・・・・?


頭が眩む程のショックを受け、その日の晩は泣き寝してしまった。










「バレちまったもんは仕方ねぇ。無理に付き合えとは言わねぇよ。お前さん次第だぜ」





一部始終聞いて納得したように頷いたその彼は、私と同じ壁に背を預けるとライターに火を点け、
煙草をふかし始めた。本業殺し屋の、好きになってしまった彼━━━━KKの口から白い煙が
灰色の空へと棚引いて行く。・・・灰色の空。正に今の私の心境を表しているようだ。


「しかし、
も よくここまで隠し通してくれたもんだな」

「・・・早くもバレてしまったら私達今頃面会禁止になってるでしょ」

「・・・で?結局お前さんはどっちを取るんだ」


「・・・・・・・・・・・・。」


苦しい決断に迫られた。両方も大事だ、という私にどちらか一方を取れという事だろうか。




家族。━━━━生まれた時から私を一人前の女として育てて来てくれた親、兄弟。

早く結婚しろと五月蝿い20代になった今でも変わらずに、大事な一員として受け入れてくれる、
そんな優しい家族が大好きだ。出来ることなら、いつまでも私の大切な家族として一緒に居たい。


彼。━━━━恋人に全く恵まれなかった私の前に現れた、唯一の彼。KK。

私も直ぐに好きになり、人生初めての恋に出会ったと実感し、毎日がいつもと違って輝いていた。
殺し屋を勤めていると知った時は流石に驚いたけれど、そんな彼にますます惹かれてしまった。



家族も、恋人が出来たと伝えた時は勿論喜んでくれた。しかし、裏を知った時は一変。

激しく怒鳴られた翌日。あの時の親の一つ一つの言葉がひしひしと身に染みて、未だに痛い。
また涙が溢れ出て来て、止まらない。ぽたり。と地に黒い染みを作った。


「女って弱い生き物なんだな。何故泣く必要があるんだよ」


「・・・だってっ・・・」

KKの無表情の瞳が私を見つめる。

「・・・私、KKの事が好きだよ。」

「俺も、
が 好きだ」

「・・・っ・・・よけいっ・・・辛い、よっ・・・・・・・・・。」

「・・・・・・・・・・・・。」


一旦肉体関係を持ってしまった彼とお互い身を引けなんて、そんな容易い事がすぐに出来たら

どんなに気持ちが軽くなれるんだろう。家族もそれで安心するだろう。だけど、私自身が問題。
いつまでも後ろ髪を引かれる思いで毎日を過ごして、断ち切ることが出来ない自分がいそうで、怖い。


「父ちゃん母ちゃんが恋しいんなら家へ帰りゃぁいい」


「・・・やだ。」

「じゃあ黙って俺についてくるか」


「・・・それも・・・やだ。」

「なかなか欲が深いなぁ、
。 そんな我侭はたとえ天の神様だって許してくれねえぞ」

「・・・・・・。」

分かってる。分かってるよ、それくらい・・・・・・。


「人間の人生は、何かの犠牲無しじゃ生き延びることは出来ねぇんだぜ。たとえそれが大事なもんでも。
両方とも欲して抱え込むと自分だけが苦しいだけ。俺を取るか、家族を取るか。
二つに一つしか、得られねぇんだぜ」

「・・・・・・・・・・・・。」



・・・KKは親が居ないからそんなに他人の事が簡単に言えるんだ。せめてKKが裏の仕事を辞めて

ただの平凡な清掃員になってくれれば話は別だけど。私の為に仕事を辞めて下さい、なんて言えやしない。
彼の望んだ道だから。


二つに一つ、か・・・・・・・・・・・・。



どっちを取るかで、運命は決まる。その決断を下すのは━━━━結局は私。

私が、決めなければならない。けれど・・・踏み出すのが、怖い。どれか諦めろなんて言われても辛い。
相変わらずただ泣いて立ち尽くすだけ。



「・・・・・・・・・・・・。要は、お前も、お前の家族も満足出来たら、それでいいんだろ?」


「・・・うん。」

「じゃあ話は簡単だ。」


「・・・KK・・・?」


何やら余裕の笑みを零した後、口に咥えていた煙草を地に投げ捨て壁から体を離すと、私をそのまま壁に追い詰める。

まるで獲物を捕らえるような、鋭い眼光で。


「お前さんのその家族を、説得しに行く。それでも拒否するんなら・・・

この手で殺るまでだ」

「・・・っ・・・!!!やめてっ、そこまで望んでないっっ!!!KK、嫌いになっちゃうっ!!」

「心配すんなって。そんな馬鹿な真似はしねぇよ。」


涙目で否定する私を喉を鳴らして笑い、安心させるための口付けが落とされる。




「家族に会って、こう言ってやるんだよ。お前さんたちの大事な娘・
は 俺の手で必ず
命に代えても幸せにしてみせると」




-end-





まさかこの俺がKKさんを書く事になるとは、思いもしなかっ たっっっっ。。。。(爆”)


勿論彼の話は↑とは全く別の話が浮かんでたんですけどね。まさか急遽書こうという衝動になるとは
予想もしませんでした。。。まぁ、でもKKさんが書けて楽しかったですけどねっっ!!!☆( ´∀`)b


・・・ここで暴露話。私の実体験を元に書きました。さすがに相手は殺し屋ではありませんけど(死)


14.9.18