━━━━天国のお父様、お母様へ。


私は一人の義賊に出会いました。


私に食べ物を与えて下さり、


そして悪い人たちから守って下さった、


まるでヒーローのような


かっこよく、勇ましく、とても素敵な方。


あの日以来、彼の顔が忘れられません。


もう一度会いたいと願うけど、彼は滅多に姿を見せず、


私にとっては遠い存在のようなもの。


・・・そう、私は


初めて・・・恋をしてしまったのです。━━━━




「此の世界、半分見えずとも」






「では叔父様、叔母様、行って参ります。」



今日は週に一度、外出が許される日。着慣れた着物に身を包みながら
玄関に足を運ぶ。叔父様と叔母様の「あんまり遠い所へ行くんじゃないよ」という
いつもの言いつけに軽く返事をして、一週間ぶりに外の世界への扉を開けた。
何故私がこんな鳥籠の中の鳥のような、自由のない生活をしているのか・・・。
それは、悪い人達が私に触れさせないためである。
叔父様、叔母様は、お父様お母様を亡くした私の為を思って、外出させないようにしてくれてるんだ
けども・・・。だからといって、私はいつまでも子供じゃない。私だって外の世界をもっともっと知りたいし・・・
色んな人と触れ合ってみたい。体験したい。そして何より・・・




あの方に・・・もう一度会いたいため。






 
「 (・・・今日も・・・・・・会えないかな・・・・・・。)」


今日はちょっと遠出を試みて誰もいない、とある駅のホームにふらりと立ち寄った。
まるでここに電車が来るとは思えないぐらいの静かなホーム内。そんな場所で、私は現れるわけがない
あの方を待っていた。
・・・勿論違う時間帯で、違う場所で・・・一週間前も2週間前も、その前の週も・・・・散策を楽しみながらも
僅かな期待を抱いていた。けど・・・・・ ・・・結局暗くなってもあの方は姿を見せてくれなかった。
怒られるといけないから諦めて帰る・・・。ずっとこんな日ばかりだ。

・・・初めて出会って、そして助けられたあの日は・・・たまたま運が良かった、だけなのかな・・・。
それにこんなにまだ明るいのにあの方が、あのかっこいい姿で現れるとは・・・とても考えられない。

・・・・・・・・・。うん、そうだよね。私ったら一体何を考えているんだろう。・・・

「(・・・帰ろ。)」

諦めてきびすを返した━━━━その時だった。



━━━━「?」



「(!!!・・・え・・・?)」

どこかで聞いた事のある、私を呼ぶ声。その声の方に振り向くと・・・
黒のジャケット。おしゃれなアクセサリーを身につけた一人の男の人。・・・眼帯・・・?
いや、でも・・・まさか・・・。私がぽかんとして見つめていると・・・

「・・・お前、自分を助けた恩人の顔、もう忘れたのかよ?」

「!!!!!!マ、マサムネ様っっっ!!??」

思わぬ予想外の出来事にびっくりして飛び上がってしまった。だって会えないと思っていたあの方に
・・・こんな場所で再び会えるとは思わなかったからだ。・・・どうしよう・・・突然のマサムネ様の登場で
次の言葉が出てこない。

「そこまで驚く必要ねーだろ」

「だ、だって・・・そ、そのような格好でいるから・・・誰かと思って・・・」

「・・・おもしれぇ事言うなぁお嬢さん。俺様があんな格好で街ん中うろついてみろよ。
あっきらかに不審者扱いか異常なコスプレマニアと間違われるだろ;;;」

「ふふっ、そうですよねっ・・・」

マサムネ様は見かけによらず、ご冗談がすごく面白い。思わずクスッと笑ってしまった。けど・・・

・・・こんな私を覚えてくれてたんだ・・・ ・・・嬉しい。

「ところで・・・はこんなところで何うろちょろしてたわけ??」

「えっ・・・えっと・・・・・」

マサムネ様がポケットに手を入れて私の前に立ってじっと見下ろしている。こうやって正面と
向き合うのがすごく初めてで目線を合わすのが・・・恥ずかしい。つい俯いてしまう。
・・・本当はマサムネ様を探してたんだ・・・・・・なんて言うのはとんでもない。恥ずかしくて言えやしないっ・・・
「ちょっと街まで行こうと思って」と嘘をついた。・・・すると・・・

「へぇちょうどいい。俺様も息抜きがてら街に足を運ぼうと思ってよ。良かったら一緒に来るか?」

「あ、はい、いいですよ・・・ ・・・って、えぇぇっっっ!!!??」

一瞬言葉の意味が分からなかった。俯いていた顔をばっと上げ、マサムネ様を見る。

「い、今、なんてっっっ・・・!?」

「は?;い、いや俺様も街でぶらぶら散歩したかったから同行させてもらうぜって話。嫌か?」

嘘っ・・・。信じられなかった。久しぶりに会って、しかもあのマサムネ様とデーt・・・いやいや、
一緒に行くことになるなんてっ・・・!!私は顔をかーっと燃やした。

「いっ・・・いえ、と、とんでもないですっっ!お、お付きあ・・・いえ、一緒に、行きましょう!!」

、興奮気味になるのはいいがまずは落ち着けよ;;;うっし、じゃぁまずは街の何処に行くか先決だな。
俺様の知ってるとこでもいいし、お前の知ってるとこ、どこでもいいぜ。」

「・・・は、はいっ・・・。」

・・・あわわ、ど、どうしよう・・・こんな事、全く頭に入れてなかったのにっ・・・
マサムネ様が私の隣に立つ。それだけでも私の心臓はドキドキが止まらない。初めてのマサムネ 様との
・・・お付き合い。迷惑・・・かけないようにしなくちゃ・・・。
その時、マサムネ様が私の服をじーっと見てきて・・・

「・・・お前、これから遅い初詣にでも行くつもりか?」

「え?い、いつもこの格好で出かけてますし・・・私の普段の外出着ですよ」

「・・・最強だな;;;;お前、そんな可愛い格好着てるから変な奴とかに絡まれるんだよ。俺様と初めて
会った時も確か似たような着物だったよな」

「・・・!・・・」

「可愛い」・・・マサムネ様にそれを言われた瞬間、思わずドキッとなってしまった。嬉しいような・・・
・・・恥ずかしいような・・・そんな気分だった。

「・・・ちょっとその格好で街ん中出歩くのはどーかと思うぜ?;・・・俺様の知ってる場所あるから
まずはそこに寄ろうぜ。」

「は、はいっ!」

マサムネ様の知ってる所・・・一体どんな所なんだろう。私は楽しみにしながら遅れないように
後をついていった。━━━━







━━━━「あっらぁ〜あなたがちゃん!?かわいい〜〜vv初めましてこんにちは〜」

「こ、こんにちは・・・ ・・・うぐっっ;;;」

「あやめ・・・抱きつくのはいいがちっと自重しろよ。苦しがってんだろ;;」


とあるお洒落なお屋敷にお邪魔した私達。派手な格好をしたとってもナイススタイルのお姉さん・
あやめさんが私の姿を見ると、飛んできて抱きついてきた。羨ましいぐらいのあやめさんの大きな胸に
ぎゅ〜っと埋もれる。

「だって〜、マサムネちゃんがよく話してくれる女の子、思ったよりも小柄ですっっっっっっごく可愛いじゃな〜い!
もう、いじめたいぐらいよ♥」

「え・・・?」


マサムネ様が・・・私のことをあやめさんに ・・・?

・・・はっっ・・・・・・・恥ずかしいっっ・・・・・・。どうりで私のこと、知ってるはずだ。どんな事・・・話したんだろう・・・。
・・・・・・・・・・・・。い、いや、余計なこと・・・考えないでおこう・・・。ありえないよ・・・。


「とにかく、お前を癒しにを連れてきたわけじゃねーからよ。こいつの服を選んであげてくれねぇか?
服が無い(´・ω・`)ショボーンって困ってたんだよ」

・・・・・・・。。。。私を貧乏人みたいにそうおっしゃらないで欲しい。。。しかもその顔文字は何ですか;;;

「あ〜らお安い御用よ。私、女の子の服選びは別に嫌いじゃないんだから。さぁこっち来て着替えましょ♥」

と言うとあやめさんにグイっと手を引っ張られる。私は別の部屋に通された。

「・・・おいっ、あんまりどぎついもんは着せるんじゃねーぞ・・・って聞いてんのかあいつ。。。」





━━━━「あ、あの・・・別に私、いつもの服の方が慣れてますから・・・」

「何言ってんのよ♥着物のちゃんも可愛いけど、大変身したちゃんももっと可愛いかもしれないわよ?
私に任せて♪マサムネちゃんをあっと驚かせるように、メイクアップしてあげるから★」


と言うとあやめさんは私の着ていた着物を脱がし、見た事ないようなドレスみたいな服を次々と着せる。
まるで着せ替え人形になったような気持ちだ。それに私が全く付けないようなアクセサリーやら何やらを
つけさせて・・・あぁ・・・下駄まで変えられちゃった。電車とかでよくよく派手で、けど何処か可愛い服を着た
女の人たちを見かけるけど、まさに今、そんな人たちになった気分だ。叔父様叔母様が私の今のこの格好を
見られたらきっと驚かれるだろう。・・・それにしてもあやめさん・・・いいなぁ、そんなスタイルで・・・。
いかにもマサムネ様が好みそうなタイp・・・ゲフンゲフン;;

そしてあやめさんが私の顔にお化粧をしながら、にっこり笑って聞いてきた。なるべく小さな声で。

「・・・ねぇちゃん、マサムネちゃんとは・・・どこまでいったの??」

「え、どこまでって?」

あやめさんがうんうんと何度も頷く。何だかお顔がニヤニヤしているのは気のせい・・・ですよね。

「いえ、まだ、何処に行くのかは決めてないです。ゆっくり、決めようと思って。」

私の答えを聞いたあやめさんがハァ・・・と言いたそうにがっくりと肩を落とす。・・・え、何か
いけないこと言っちゃった???;;;

「あ〜、ちゃんそういう意味じゃないのよ。・・・分かりやすく言えば〜・・・ん〜〜〜そうね、
ほら、A、B、C、Dって聞いたことない??」

「? ? ?」

アルファベット・・・だよね。う〜〜〜ん、何か意味があるのかな・・・?分からない・・・というように
首を傾げると・・・・・・・・・

「Σんもうっっっ、ウブなちゃん可愛すぎるぅ〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!!」

「Σきゃ━━━━llllll」

あやめさんがさらにぎゅ〜と抱きしめてきた。さっきよりも・・・苦しいですからっ・・・

「ごめんなさいね、今のは恥ずかしい話だったわよねっ;;・・・まぁ最初は分からなくても、
・・・マサムネちゃんと上手く恋人になれば、次第に分かるわよっ♥」

最後の文章は耳元にこっそり囁いた。・・・・・・・・・・・・。えぇぇぇぇぇっっっ!!!!???
ちょ、ちょっと、今のは聞き捨てならないっっっ・・・!!!!

「あ、あやめさん、冗談はやめてくださっ・・・」

「マサムネちゃ〜ん、お待たせ〜」

私が言い終わらない内にあやめさんは再び私の手を引いた。



「・・・さっすが女の子ってのは時間かかってるもんだな、もう2時間だぜ・・・って、おぉっ。」

「じゃ〜ん♥大変身したちゃんよ♪どう?見違えたでしょ〜??」

「(うぅ・・・恥ずかしい・・・)」


別室から出てきた私を見たマサムネ様は驚きの声を上げる。白のワンピース。頭には
あやめさんお気に入りのお花の装飾品。足にはサンダル。まさに私が着たことないようなものばかりだった。
私はもじもじしながら一歩前に出る。

「やっぱり男の人と出かけるときは女の子も気合、入れないとね!」

「へぇ・・・。全然悪くねぇぜ?意外と考えてチョイスしたんだな。お前のことだからすっげぇとんでもないモン
着せるもんかと正直ヒヤヒヤしたが・・・。」

「もうっ、失礼ねぇ〜マサムネちゃんったらぁ〜」

「(ど、どうしょうこんな格好でマサムネ様とっっ・・・)」

マサムネ様は私の服をまじまじと見つめてくる。・・・そ、そんなに見ないで欲しいっ・・・。
は、恥ずかしすぎるっっ・・・・・・・・・。

「まぁこれで街ん中ぶらついても全然違和感ねぇな。似合ってるぜ。ありがとなあやめ。」

うぅ・・・。ますます恥ずかしい。そう言われただけでもまたドキドキが止まらない。

「うふふっ、お二人でどこ行くか知らないけど、楽しんできなさいよ♪」

「ありがとうございましたあやめさん。」

私はぺこりとお辞儀する。そんな私にあやめさんがこっそり耳打ちして・・・

「・・・大丈夫よあなたたちお二人さん、絶っっっ対ぴったりのカップルになれる!信じてるわよ♥」

「えぇっっっ!!!;;;(か、カップルってっっ・・・・・・;;;)」

「おーい、。行くぞー。」

「あ、はいっ!では、さよならあやめさん!」

手を振るあやめさんに再度お辞儀をして、先に行ってしまったマサムネ様の後を慣れない足取りで追う。
私たちはあやめさんのお屋敷を後にした。━━━━












━━━━「・・・多いですね・・・;;;」

「そりゃぁ、な。平日だろうが休日だろうが関係なしだぜ。」



「街まで行こうと思って」・・・という発言は嘘だった。いや、嘘と言ってもおかしいけど。
実は街なんて行く自体初めてであって何処に何があるのかさえ・・・全く知らない。(テレビとかでよく見るけど)
あの時、マサムネ様とばったり出会った為、緊張のあまりに何故か「街」と言ってしまったのだ。
こんなに人が沢山で埋め尽くされている街の中を歩くのかと思うと・・・めまいがした。
しかもこんな慣れない靴で・・・。大丈夫かな、私・・・。

。どうした?具合悪いのか?」

「あっ、い、いいえっ、だ、大丈夫ですよっ!」

心配そうに顔を見るマサムネ様。私は気合を入れて見せた。

「突っ切るしかねぇな、ここ。ちょっと早歩きで行くけど、手、引っ張ってやろうか?」

「えっっっっ・・・・・・・・・い、いいい、いいですっっっ!!!これぐらい、歩けますっっっ!!!!」

私は顔をボっと燃やした。そっ、そんな事・・・想像しただけでも恥ずかしいのにっっ・・・つい裏声になっちゃった。

「ほんとに大丈夫か??;・・・じゃぁしっかりついてこいよ」

「はいっ!が、頑張りますっ!」

マサムネ様を見失わないように、目で追いながらしっかりと後をついて行く。・・・けど周りの人達の歩くスピードが速すぎて、
次第にどんどんとマサムネ様との距離が空いてゆく。しかもサンダルなので、マサムネ様みたいに速く歩けるわけがないっ。
ついに私は「あっっ」と言わせ、ガツっと足を踏み外し、その場ですっ転んでしまった。顔を上げた時には
既にマサムネ様の姿はもう何処にいるのか分からなくなってしまった。・・・どうしよう・・・こんなに人が多いから
私なんてすぐ見つかるわけがないっっ・・・。

「・・・っ・・・マサムネさまぁ・・・・・・・。」

歩いている人たちがしゃがみ込んでしまった私を避けていく。・・・うぅっ・・・情けないっっ。まるで親に置いてきぼりにされた
子供になった心境だ。もう少しで泣きそうになった直前━━━━私の姿が消えた事に気づいたのだろう、マサムネ様が
人の波に逆らうように押し退け、颯爽と探しに戻ってきてくれた。あぁ絶対怒られるっ・・・。

「・・・全く、だから言っただろうが。手を引っ張ってやるぞって。」

「すっっっ・・・すみませんっ・・・・・・・・;;;」

「ほら。」

マサムネ様が私の手を無理やり掴むとグイっと体ごと引っ張った。

「き、きゃっ!」


手元をしばらくポーっと見つめる。・・・・・・私、手を握られている・・・マサムネ様の・・・大きな手・・・。体中が心臓になったみたいに
どくん、どくんと激しく脈打った。どうしよう・・・嬉しいような・・・恥ずかしいような・・・・・・・・・。

そしてマサムネ様が私の手を引っ張ってどんどん進みながら聞いてきた。

「お前、街ん中とか別に初めてじゃねーんだろ?」

「・・・・・・い、いいえ・・・実を言うと・・・・・・まるっきり、知らないんです・・・・・・・」

「・・・・・・・・・Σはぁ???;;;、それでよく軽く、『街とか行きたいなぁ〜w』言えたもんだな。
どんな生活してきたんだよ;;;」

・・・w、まで言ってないですよ;

「・・・まぁ歩きながら話するのもなんだから、とりあえずどっかで腰、降ろさねぇか?ついでに
腹も減ってきたしな。俺様の奢りでいいぜ。」

「わっ・・・い、いいんですかっ?ありがとうございます!」

・・・マサムネ様、お口は少々乱暴だけど・・・すごく優しい。外見だけじゃなく、こういう所にも
私は惹かれたのかもしれない。・・・けど良かった。怒られなくて。私は安心し、手を繋がれたまま、
マサムネ様の行く場所へと向かった。━━━━































━━━━「親・・・・・・・・・亡くしてんのか・・・」

「はい・・・。」




私の為を思って選んでくれたのだろう、お洒落な喫茶店の中に入った私達。カップを片手に
マサムネ様は驚いたような顔で私を見つめる。なるべく暗い表情を見せないように無理に笑った。

「・・・・・・・・・何だか、すまねぇな。飯の時間なのにこんな暗い話になっちまって・・・」

「へ、平気ですよ!私がまだ幼い時の話で、最近の話じゃないから・・・」

「・・・それでお前の叔父、叔母がお前を危険な目に合わさないように、あんまり外に出さねぇってわけか・・・
一人娘を失くしたくない気持ち、分かるぜ。確かに外の世界は泥棒とか、強盗とか・・・
悪い奴らがわんさかいるもんな。けど・・・・・・。お前、淋しくないのか?」

・・・・・・こんなにも私のこと・・・気遣って下さってるんだ・・・。マサムネ様・・・やっぱりお優しい。・・・
私は嬉しくなって、精一杯笑って見せた。

「いいえっ、全然、淋しくなんかないですよっ!叔父様と叔母様が居て下さるし、それに・・・・・・・・」

「・・・?それに?」

・・・っ・・・。想いを伝えるのは・・・すごく恥ずかしい。で、でも・・・せっかく目の前に居るから・・・
今、伝えなくちゃっ・・・。今じゃないと・・・いつ言える時があるの?

「それにっ、マサムネ様がいて下さるかr「あっ、、危ないっっっ」

「え???」

「Σきゃぁ〜〜〜〜〜〜ちゃん、また会えて嬉しい〜〜〜〜〜!!!!♥♥♥(ハグ攻撃)」

「(ぎゅぅ〜〜)く、苦しぃ;;;・・・って、あやめさん!?」「あ”ー遅かったか・・・;;;」


・・・努力虚しく。先程お屋敷で会ったあやめさん。さっきの時よりも露出が激しいお服で私を横から
抱きしめてきた。まさかこんな所で再び出会うとはっ。・・・あれ?あやめさん、私の知らない女性を3人
連れてきている。お友達・・・かな?

「マサムネ殿!久しいのう、このような所で出会うとは、珍しい事があるのぅ。」

「寿々、その言葉遣いは少し控えめにした方がいいぞ。慣れぬのは分かるが。」

「ほーう、これはこれは寿々姫様とカガミ様、せんごくのお嬢方のご登場か。そして紅嬢!!珍しいなぁ??」

「・・・フンっ・・・あやめと寿々達がうるさいから付き合ってるだけだっ。・・・・・・・・・で。
・・・アンタ、妹がいたのか???」

「(Σ妹っ!!!??;;;)」  「Σなんでやねんッッッ!!!!;;;」

「もーう、違うわよ紅ちゃん、ほら、前に話したでしょっ??この子がそうよ♥可愛いでしょ?」

「へぇ。あのマサムネが女子を連れて二人いるとは滅多に無いことだな。耳にはしていたけど・・・
・・・フフッ、なかなかやるものじゃないか」

「お主たち、俗に言う・・・・・・・・・『でぇと』 の最中なのか?」

「!!!!!!!!!・・・・・・・」



・・・寿々姫さんのその言葉を聞いた瞬間、私の心臓は跳ね上がった。顔をさらにカンカンに燃やし、
何も言えずに俯いてしまった。・・・マ、マサムネ様、何て・・・答えるんだろう・・・。
答えを求めるようにちらりとマサムネ様を見る・・・



━━━━・・・ドキ、・・・ドキ・・・



「・・・Σばーか、んなわけねーだろ。ただの同行だよ。ど う こ う。。。」


・・・・・・・・・・・・・・・・・・。・・・ですよね・・・。・・・うん、そんな訳、無いよね・・・・・・・・・。
期待が大きかった分、がっくり度が大きかった。

「同行にしては何やら楽しそうな雰囲気が臭っていたが、のう?三人共。」

「フフフっ、確かに。」

「・・・まぁアタイ達は邪魔はせん。二人で心ゆくまで楽しんだらいいさ。」

「じゃぁね可愛いご夫婦さん。ごゆっくり〜♥」

「Σあっっ・・・あやめさっっっ・・・・・・・;;;」

・・・・・・。も、もう、余計に恥ずかしいよっ・・・。あやめさん達はクスクス笑いながら私達を見届けるとその場を去ってしまった。

「・・・全く女ってのは好きだよなぁこういう話が・・・。。。まぁけど、あいつらのおかげでちょっとは暗い雰囲気が
飛んだな。早いとこ食って、どっか行こうぜ。時間はまだたっぷりあるから」

「くすっ、そうですねっ。」



・・・そうだ、まだまだ時間はある。こうしてマサムネ様と一緒に居れる、とても貴重な時間が・・・。

私の手元には三色お団子。マサムネ様と初めて出会ったあの日、お腹を空かせていた私に
マサムネ様が与えて下さった食べ物・・・それが、このお団子だった。あの日以来・・・そして彼の影響で
お団子が大好きになったのだ。マサムネ様と出会った、大切な、思い出の品だから。

「よーし、んじゃ食いながら打ち合わせをしようか。街で精一杯散策するだろ。その後・ハラハラドキドキ体験ってことで
街外れまで行って、廃墟巡りとか、誰もいないお化けがいそうな屋敷ん中の探検とか。いわば心霊スポット巡りしねぇか?」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。。。。。。」

・・・私はお団子をもぐもぐ言わせながら体を硬直させる。・・・次第に血の気が引いたように顔をサーっと青ざめる。
・・・っていうか・・・私の大ッッッッッッ嫌いなところばっかりじゃないですか・・・・・・マサムネ様は何だか楽しそうだ・・・。
不気味な笑みを浮かべながら私をじーーーーーっと見つめてくる・・・・・・・・・

「・・・・・・・・・、どうする?お前の後ろを歩いていた俺様が悪霊に取り憑かれ、化け物のように豹変し、
お前にいきなりΣグワ━━━━!!!!っと襲いかかって来た ら・・・!!!!」

「やっっっ、やめて下さいッッッ!!!!私、怖いのダメなんですぅっっ!!!!!!!!!」

これ以上聞いてられない、というように思わず耳を塞いでしまう。もう既に涙目だ;;マサムネ様はそんな私をからかって・・・

「ハハハハ、お前、反応がマジおもしれぇな。こりゃ街散策より遥かに楽しくなりそうだぜ★おーし決まりだ、今夜直行だ。
・・・、何が起きても決して逃げんじゃねーぞ?」

「Σ絶対嫌ですぅっっ!!・・・っ・・・ぐすっ・・・もう、マサムネ様ったら、意地悪ですよぉ・・・;;;」

「なーんてな。冗談だって。悪ぃわりぃ、また飯が不味くなる話になっちまったな。」

「もうっ、悪い冗談は止めてくださいよっ。 ・・・ふふふっ。」


・・・楽しい。すごく楽しい・・・。マサムネ様とこうして初めて向かい合ってお喋りして・・・笑い合って・・・
好きな人と一緒に過ごすこのひと時が・・・こんなに楽しいなんて・・・。そのあとも続く、マサムネ様の楽しい世間話や、冗談話。
マサムネ様の話すお話しは どれも面白くって私は涙が出るほどたくさん笑った。

・・・あぁこのまま、時間が止まったら・・・ いいのにな・・・。
ううん、出来ることなら・・・止めて欲しい。・・・


こうして私とマサムネ様は楽しいお喋りを何時間も繰り広げた。━━━━









━━━━「あーあ。お前のワガママで結局心霊スポット行けなかったなぁ〜、つまんねーの。。」

「もう、マサムネ様ったら・・・軽く言ってますけど本当に取り憑かれたらどーするんですかぁ〜;;」

「平気だって。俺様を甘く見んなよ?勿論お前も強制参加だ。」

「そんなぁ・・・;;;」

「・・・大丈夫だって、俺様も一緒についてやるからよ。後ろから。」

「もう、やっぱりいじわるっ・・・。うふふっ」



その後。私達は街の中で色んな素敵なものを見て回ったり、イベントに参加したり、美味しい物を食べ歩きしたり・・・。
外の世界はこんなにも楽しく、そして美しい所がたくさんあって、今まで知らなかった自分が恥ずかしいと
思うぐらいだった。マサムネ様がいなかったらきっと、こんな素晴らしい体験は出来なかっただろう。
悪い人にも会わず、今までにない最高の時間を、マサムネ様と過ごす事が出来た。それだけで十分幸せだった。
だって・・・。マサムネ様は私が転んで以来、あれから私の手を取って、離さず握ってくれるから。
ずっとドキドキしてしまったけど・・・。こうして居ると・・・まるで本当に恋人になったみたいで思わず恥ずかしくなってしまった。
そんな事・・・夢のまた夢なのに。・・・

気が付けば夕方になってしまい、オレンジ色の太陽が私たちを照らしてくれる。楽しい時間は・・・過ぎるのが早いものだ。


「綺麗な夕日だな。明日もいい天気になりそうだぜ。」


明日・・・本当は明日なんて来て欲しくない・・・。だって明日が来てしまえばまた閉じこもりの生活が待っていて
そして何より・・・マサムネ様に会えないため・・・。
私はマサムネ様の手をギュッと握り返し、逞しい腕にしがみつき・・・自分の頬をそっと寄せた。

「・・・?」

マサムネ様は私の大胆な行動に少々驚かれた様子。静かに呟く。

「・・・ねぇ、マサムネ様・・・。」

「ん?」

「・・・私・・・マサムネ様と・・・ ・・・もっと、ずっと・・・一緒に居たいです・・・。夜が来ても・・・マサムネ様のお側に居たい・・・」

「・・・・・・・・・・・・。」

私の言葉を聞いたマサムネ様は・・・突然黙りこくってしまった。

「・・・マサムネ様・・・?」

「・・・・・・夜までは・・・・・・無理かもな・・・。」

「!!・・・どうしてっ・・・?」

「知ってんだろ。俺様は義賊なんだ。ちなみに今宵も・・・仕事が入ってる。」

「・・・あ・・・・・・。」

・・・そうか・・・。マサムネ様は夜のお仕事があって・・・・・・。お忙しいんだ・・・・・・・。

氷の棒を入れられたような大きなショックを受け俯く。


「・・・そう、でしたよね・・・・・・。ごめんなさい、何だか・・・無理を、させてしまって・・・・・・。」

「いや、構わないぜ?俺様もと出会って共に過ごせて、充分楽しませてもらった。」

「!・・・・・」

・・・こんな不器用で何にも知らない私と一緒にいて・・・楽しかったなんて・・・。・・・嬉しかった。
胸がいっぱいになっているこの気持ちを抑えながら、マサムネ様の手をぎゅっと強く握った。

「・・・一人で帰れるか?本当なら送ってやりてぇけど、そんな暇ねぇからな。くれぐれも
変なおっさんについて行かねぇようにするんだぞ。」

「・・・・・・・・・・・・はい・・・。」

・・・本当なら「子供じゃないですよっ」と笑って小突きたいところだった。けど・・・そんな気には全くなれず、
顔から笑顔が一気に消え失せてしまった。慰めるようにマサムネ様はポンポンと私の頭を優しく叩くと・・・


「今日は楽しかったぜ。━━━━あばよ」


今まで握られた手がゆっくり、ゆっくりと離されていく。ぬくもりが・・・徐々に消えていくように。

「・・・っ・・・マサムネ様っ!今度いつまたお会いっ・・・・・・できっっ・・・・・・・・・・・・」

そう声を上げた時。マサムネ様は人ごみの中にかき消されるように・・・・・・姿を消してしまっていた。
後は私一人だけが取り残され、ただポツンと・・・彼の消えていった跡を黙って見続けるしかなかった。



「・・・・・・・っ・・・・・・・・・・。」



その場で崩れ落ちてしまった。涙が・・・・・・後から、後から流れ落ちた。━━━━


































━━━━「・・・すみません、こんな時間になってしまって・・・電車に・・・乗り遅れちゃって・・・・・・ いえ、大丈夫です・・・
ちゃんと・・・帰ってきますから、心配・・・しないでくださいっ・・・。・・・はい。では・・・。」




叔父様と叔母様から渡された携帯電話でそう伝える。・・・やっぱり怒られてしまった。家に帰れば耳にタコが出来る程の
長いお説教が待っているだろう。・・・最悪外出を禁止されるかもしれない。けど・・・私には家に帰ろうなんて気は全く無かった。
帰りたく・・・なかった。何となく一人でいたい・・・そんな気分だった。


今・・・街から離れた丘に一人立っている。遠くに見える綺麗な夜景。星空。そして・・・大きくそびえ立つ一本の桜の樹木。
今年も変わらず満開で美しく咲いていて、花びらがひらひらと舞う。ここによく立ち寄る、私のお気に入りの場所だった。
そして・・・お父様、お母様と、私の思い出が詰まった大切な場所でもあるから。


寒い冬もとっくに終わり、暖かい春風が感じられるつもりだけど・・・冷たく感じた。私の目に映っているもの全てが・・・寂しく見える。



・・・彼は今頃、何処にいるんだろう・・・。本当ならもう一度、・・・もう一度彼に会いたかった。自分から、探して・・・。
・・・けれどそんな事、到底無理な話だった。いつでも会えるように連絡の番号とか・・・教えてもらえば良かった。後悔しても
もうどうしようもならなかった。だって彼は・・・いつも会えるとは限らないから・・・。


私の手をずっと握って下さり、色んなことを教えてくださり・・・そして私に楽しく、面白い話をしてくださったマサムネ様。
初めて恋に落ちた・・・ ・・・好きな、大好きなマサムネ様・・・。もう、・・・・・・二度と・・・会えないの・・・?
繋いだ手の温もりが既に消え去り、彼のとびきりの笑顔が、思い出される。その度に私は悲しくなって・・・。

・・・本当に・・・想いを伝えられないまま、ここで終わってしまうの?会える日は・・・これからもずっと・・・無いの・・・・・・??


出会えただけで幸せなんて・・・言えやっ・・・しないよっっっ・・・・・・・・・・・・。



「・・・・・・うっ・・・・・・・っ・・・・・・・・・・・・・・・うぅっっっ・・・・・・・・・・。ひくっっ・・・・・・・・・。」



夜景が涙のせいで霞む。ギュッと目を閉じるたびにぽろぽろと零れ落ちる涙。止める事は出来ずに、地を濡らしていく。



━━━━その時、突然誰かに後ろから両目を手で覆われた。


「ひゃっ!?」

「だーれだ?」

さっき聞いたばかりの声。ずっと・・・会いたいと願っていた、愛おしい・・・あの人の声・・・。

「・・・っ・・・!!マサムネ様っ!?」

「正解♪お前相変わらず反応がおもしれぇな。」

「っていうか・・・み、見えません、離して、頂けませんかっ;;;」

「わりぃわりぃ」


ようやく解放され、見ると・・・・・・ ・・・紛れもしない、マサムネ様だった。黒のジャケット、ではなく、
黒いマントを翻し、黒の兜を被り、そしてキラリと光を放つ、黄金色の三日月。私が彼と初めて会った時と
全く同じ格好をしていたのだ。・・・・・・・私服のマサムネ様もかっこいいけど・・・やっぱり貴方のそのお姿も・・・
もっとかっこいい・・・。まるで最初のあの頃に戻ったみたいで・・・とても嬉しかった。嬉しくて・・・もう少しで
号泣するところだった。

「・・・、目、濡らしてたのか?まさか・・・泣いてたのか?」

「いっ、いえっ、違いますよ!か、風が、目に当たっただけでっ・・・・・・」

「・・・そうか?ならいいけど。」

「・・・って、マサムネ様!お、お仕事の方は・・・!?」

「あ?あぁ、抜けてきた。・・・何だかお前に・・・無性に会いたく・・・なってな・・・。ずっと探し回ってた。
そんでここに行き着いたわけよ。」

「い、いいんですか;;;・・・・・・・・・え・・・?」


わ、・・・私、に・・・?会いたくなった・・・?


「それに・・・あん時軽く言ってしまったけど、俺様は別れの言葉は嫌いだからな。」

「・・・マサムネ様・・・。」


・・・良かった。貴方と再び出会えて。そしてマサムネ様は私の隣に立ち、遠くの夜景を眺めた。

「・・・にしてもここ、絶景だなぁ。空気も美味いし。よくこんな綺麗な景色、
独り占めしてたもんだな。」

「えぇ。私の大好きな場所でもありますし・・・お父様お母様がここで
結婚の誓いを交わした場所でもあるんですよ。」

「・・・へぇ・・・。いいところでプロポーズしてたんだな、お前のご両親さんは」

「ふふっ、ロマンチックな話ですよねっ。」

「あぁ。・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」

「マサムネ様・・・?」

ちらりと彼を見ると、表情が・・・何だか寂しげだった。

「・・・・・・羨ましいな、は。視界いっぱいにこの景色が全部見えてんだろ?・・・・・・・・・俺は半分しか見えねぇ。」

「・・・・・・っ・・・あっ・・・・・・。」

マサムネ様は、右目に眼帯をしている。


「・・・生まれつきこの眼でずっと生きてきたからよ。両目が完全に開けて見えるこの世界はどんな風に映ってんだろうなぁって
・・・考えていた時があった。両目の人間たちが羨ましくて仕方ない時があった。・・・だが・・・回復できるわけがねぇ。一生・・・な。」

「・・・・・・・・・。」


・・・片目を失われた時の思い・・・マサムネ様はどんなにお辛いだろうか・・・きっと、私がお父様とお母様を失った時と同じ、辛い気持ち
なんだろう。一つだけ残されたもう片目。もし失われてしまったらマサムネ様は・・・ううん、そんな事、考えたくない・・・・・・。
私は何も言えずにただ黙ってしまった。


「・・・けどな?右目を失くしたからって、今は寂しくもこれっぽちもないんだぜ?

━━━━俺様の右目は・・・いつも ”ある人” を見続けているからな。」



「え・・・?」

・・・”ある人”・・・?

「・・・変な言い方だけどっ・・・。そいつは俺様と初めて出会い、ずっと想い続け・・・そして初めて恋した人でな。」

「へぇ・・・マサムネ様が恋に落ちた方って、一体どんな綺麗な女性なんですかっ?ぜひ聞きたいですっ」







「━━━━お前だよ。。」








・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・え・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・?




わ、・・・・・・・・わたし・・・・・・・・?え・・・・・・・そんな・・・・・・まさか・・・・・・・・・。





「・・・綺麗だぜ。。しかもあやめが選んでくれた服だから・・・より一層な。」

「・・・っ・・・え、そ、・・・そんな・・・・・・私っ・・・・・・。」

・・・マサムネ様はにっこり笑って私を真っ直ぐ、じっと見つめる。・・・どう返事をすればいいのか分からず、
赤くなった頬に思わず手を当ててしまう。・・・


「本当、何やっても初々しいなぁお前。けどそういうところ、俺様は嫌いじゃねぇぜ?」

「・・・っ・・・も、もう・・・やだ、マサムネ様ったら・・・・・・相変わらずご冗談がお上手なんですからっ・・・。」





その時、マサムネ様の顔からフッと笑顔が消え、私の肩を掴み、そっと顎を持ち上げ━━━━








「・・・・・・・・・・・っ・・・・・・・・・・ん・・・・・・・・・・ぅっ・・・・・・・・・。」





━━━━えっっ・・・・・・・・・・・・?




時が止まったような気がした。舞い散る桜の花びら。頬を撫でる暖かい風。私の目の前にはマサムネ様の顔。
そして・・・私の唇にマサムネ様の唇が重なっている。





コレは・・・・・・・・・・・何・・・・・・・・・・・・・・・・・?
キ・・・・・・・・・・ス・・・・・・・・・・・・・・?





チュッ、と音をたてて唇が離されると・・・・・・。

「・・・・・・・・・・これが・・・・・・冗談に、見えるか・・・?」

「・・・・・・・・・・・っ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」

・・・・・・・・心臓が・・・ばくばくと激しく動く。一瞬、何が起きたのか分からなかった。しばらくマサムネ様を見つめる・・・。

「・・・・・・・・・・・・・っ・・・・・・・・・・・・・い、・・・いけませんっ、こ、こんな女なんかとっ・・・・・・!」

私は恥ずかしさでいてもたってもいられなくなり、思わず逃げ出そうとする。

っ・・・・・・。」

不意にマサムネ様に強く抱きすくめられた。まるで・・・逃がさないというように・・・。そしてそのまま私をさらうと
桜の木を壁に、追いやった。


「・・・・・・・・マ、・・・マサムネ・・・・・・・・・さまっ・・・・・・?」


マサムネ様はただ黙って・・・
私をずっと見つめている。その瞳はいつもの悪ふざけのお顔で はなく・・・・・・
真剣の眼差しだった。私はただ、ドキドキと・・・彼を見つめるしかなかった。

「・・・・・・実は俺・・・あの日以来、お前に会えないものかと・・・ずっと難儀していた」

「・・・・・・えっっ・・・・・・?」

「・・・こうして・・・・・・・・・お前と出会えて・・・・・・良かった。・・・・・・ずっと、ずっと・・・・・・お前が、大好きだった・・・」

「・・・・っ・・・・・・・・・。」

「・・・・・・お前の両親・・・ここでプロポーズしたんだっけな」

「え・・・はい・・・」

そう言うとマサムネ様は懐から何かを取り出し、私の左手を取ると薬指にそれをはめた。青く光る、宝石・・・。


・・・・・・・・・・指・・・・・・輪・・・・・・・・・?



「お前の為に、奪って来た。」

「!!・・・こんな、盗まれたものっ・・・頂けませんっっ・・・・・・!」

「受け取れよ。」

そしてマサムネ様は指輪のはめた私の左手に唇を近づけ・・・



「俺と共に・・・人生を歩んで欲しい。」




「・・・・・・・・・!・・・・・・」

「桜の樹の下でプロポーズ、ロマンチックだろ?」



・・・っ・・・・・・。信じられなかった。・・・今まで憧れて、そして恋に落ち・・・初めて大好きになったマサムネ様に・・・・・・

お父様、お母様の時と同じ場所で・・・・・・


愛の・・・・・・・・・誓い・・・・・・・・・・・・。



「・・・・・・っ・・・・・・マサ・・・ムネ・・・・・・さまっっ・・・・・・・・・。」

「・・・・・・・・・・・・。」

声が、震えた。嬉し涙が・・・一気に出そうになった。マサムネ様はお父様、お母様が名づけてくださった私の名前を優しく呼びながら
長い黒髪をそっと撫でてくださった。とても優しく・・・微笑んで。


・・・・・・っ・・・・・・あぁ・・・この気持ちっ・・・どう言い表せばいいんだろうっ・・・・・。もうっ・・・幸せの絶頂だったっ・・・。



「・・・っ・・・・・・・私もっ・・・ずっと前からっ・・・貴方のことをっ・・・・・・愛してっ・・・・・・いましたっ・・・。ずっと・・・ずっと・・・・・・
大好きっっっ・・・・・でしたっ・・・・・・。マサムネさまっ・・・・・・・・・私っ・・・・・・・・・ ・・・うれしいっっっ・・・・・・。」



桜舞い散る花びらと共に涙も落ちていく中・・・私とマサムネ様は桜の樹の下で抱き合う。そして・・・誓いの口づけを交わしあった。

「・・・っ・・・んっ・・・・んふっ・・・・・・」

頬に涙が伝う。頬を包み込んでくれる温かい手。私の口の中に入れられる、マサムネ様の舌。ゆっくりと・・・ゆっくりと
絡 めあった。

「・・・はぁっ・・・・・・・んっっ・・・・・・マサ・・・ムネ・・・さまっっ・・・・・」

「・・・・・・っ・・・・・・っ・・・。愛してるぜ。・・・・・・」

「・・・わたしもっ・・・・・・愛・・・・・・して・・・るっっ・・・・・・。」


私が愛おしい名を呼ぶと呼び返して下さるマサムネ様。私の頬に唇を移し、真っ赤になった耳に優しくキスをし・・・
そっと甘噛みしてくださった。体をピクンとさせる。

「・・・・・・・・・っっ・・・あっ・・・・・ぃやっ・・・・・・マサムネっ・・・・・・さまっっっ・・・」

「・・・可愛いぜ・・・・・・・・・。」

マサムネ様の低く、甘い声が私の耳元にそっと囁かれる。・・・
そしてマサムネ様と目があった時、すでに私の目と顔は涙で真っ赤になっていて・・・涙を数滴零していた。

「・・・痛いか・・・?」

「・・・いいえ・・・・・・私・・・・・・今・・・すごく・・・幸せなんですっっっ・・・。」

「良かった」


マサムネ様はにっこり微笑むと流した涙をちろりと舐めて下さった。そして・・・

私たちは力が抜けたようにそのまま崩れ落ち、優しく、押し倒されて━━━━




















━━━━「・・・何だか・・・すごく・・・恥ずかしいっ・・・・・・////」

「気ぃ使うなよ。俺達、夫婦なんだぜ?」



桜の花びらが華麗に舞う。遠くに見える煌く夜景。そして・・・愛する彼と二人。柔らかい草原に寝かされ、
私は幸せそうに微笑みながらマサムネ様と見つめ合う。手を繋ぎ合う。もちろん・・・恋人繋ぎで。


「・・・マサムネ様・・・・・・。」

スっと静かに手を伸ばすとマサムネ様の右頬を優しく撫でる。

「何だ?」

「・・・私っ・・・貴方の為にっ・・・この右目を、捧げたいですっ・・・。貴方のお話が・・・気の毒に思えてっ・・・ だからっ・・・。」

「恐い事言うなよ。」

そう言うと彼は私をぎゅっと抱きしめて下さった。

「・・・お前にはまだまだ知らない世界がたくさん待っている。これからもその両目で・・・もっと色んな世界を見続けろ。
俺様がお前を・・・もっと楽しいところへと連れてってやるさ。そしてお前に群がる悪い連中も・・・
この俺様が全部蹴散らしてみせる。男は愛する女を・・・守り通さねばな。」

「うれしい・・・。あやめさんみたいに・・・お友達も・・・出来る・・・?」

「あぁ。お前なら友達100人余裕だ。俺様が、保証してやる。」

「・・・マサムネ様・・・。」

「だから・・・。自分の眼を・・・もっと大事にして、生きろよな。」

「はい・・・。」



そして私たちは桜の樹の下で抱きしめ合いながら眠る。マサムネ様の逞しい腕に抱かれながら・・・。
流れ落ちるひとしずくの涙。薬指に光る青い宝石の指輪。今夜の月は・・・綺麗な三日月の形をしていた。





━━━━天国のお父様、お母様へ。


私、は・・・マサムネ様と、共に一生を歩みます。━━━━


-end-







★・・・まさかの・・・結婚ENDですかっっっ!!??爆ぜろ 〜〜〜〜〜〜★(いやいやいや・・・;;;)

もうっ、ポップンのマサムネさんもすごいかっこよすぐる!!!彼が人気のわけが分かりますし、
嫁キャラ認定せずにはいられないでしょうっ(←

私の中のマサムネさんは片目が見えてない・・・っていう設定なんですけど皆さんの描く
彼は一体どうなんでしょうかね。。。ヽ(*´∀`)ノあぁぁぁぁにしても今回は甘いというより、熱いッッッ!!!!
火傷しそうなぐらいですよっ!!!(自分で書いて何言うとんねん。)そこまで熱々に書くつもりじゃなかったんですが・・・

・・・あれれ、今回は妙に長い気がしますけど;;;;;;;ま、まぁ 愛がこもってればいいんじゃないですか(←


                                                              14.4.28


※7/14一部修正致しました。