━━━━眩しいぐらいの朝日が窓から射し込む。


白く照らされる部屋内。


大きなソファーの上で


貴方は体を伸ばすように眠っている。


掛けてくれた黒の上着を大事に纏って


貴方にそっと近づく。


初めて出会ってから貴方のことがずっと忘れられずにいるのは  


こんなに熱く、息が詰まるほど苦しい気持ちになるのは  


・・・・・・どうして・・・・・・・・・?



「その寝顔にくちづけを」






「あぁいけないっ、また遅刻だよ〜」



とある会社の平凡なOLとして働いている私は いつもの悪い癖を今朝も起こしてしまった。
急いで化粧をし、髪を整え、パン一個食べる時間すら無くて、いつものように会社への道を駆けていく。
本当なら朝の早い時間帯を優雅に過ごして、そして優雅に出社したいのだが
私が寝坊という名の悪癖を直さない限り、それは叶わない夢だろう。


「そうだっ、時間、どうなってるんだろっっ・・・」


きっと恐ろしい時間帯になっているだろう。でもどっちみち時計を見なけりゃ分からない。
時間を確認しようと鞄から急いでスマホを取り出した━━━━その時だった。


━━━━Σドンッ!      


誰かと肩がぶつかってしまった。同時にカシャッと何かが落ちる音がした。


「きゃっ!!ご、ごめんなさいっ!!・・・・・・・・・って、あれっ・・・?私のスマホっ・・・・・・」


手に持っていたスマホが跡形もないようにいつの間にか消えて失くなっていた。
それにようやく気づいたのは誰かとぶつかって4,5歩走っていた時だった。


「・・・っ・・・い、嫌だっ、こんな急いでる時に〜、ど、何処に落としちゃったんだr」

「おいっ、コラァっ!!」

「Σひっっっ!!??」


ビクッとなって怒鳴り声の上げた方を見たとたん━━━━「・・・まずいっ・・・」と青ざめた。
何故ならさっきぶつかった人は、煙草を咥え、サングラスをつけて、・・・いかにもヤクザといった風貌の
怖い雰囲気のある男性だったからだ。ぶつけられた事か、私の謝り方が気に入らなかった事が理由なのか
その人は私のことを視線を外さずじっと睨んでいる。そしてずかずかと近づいてきた。

「土下座して謝れ!!」フラグだ・・・・・・今日はなんという厄日なんだろ・・・・・・・・・。
半殺しにされるっっっ・・・・・!!その人が近づくにつれて思わず頭を伏せていた。


「ほら。」

「・・・・・・・・・え?・・・・・・」

「これ、さっき落としたろ。」

「あっっ・・・わ、私のっ・・・!」

怒られる、と思ったのに、その人は探していたスマホを拾ってくれていたのだ。

「あっ・・・・・ありがとうございます・・・!」

「お前、・・・って名前なんだな」

「?!!え、わ、私のこと、知ってたんですかっ!?」

「いや、ついさっき知ったばかりだが。。だってストラップに書いてあるぞ、小さく。」

「・・・!!!!!・・・(恥ずかしいッッッ・・・!!!)」

恐らく拾った時に目に入ってしまったんだろう。こんなに早くも名前を知られるなんて、とか〜っとなって思わず俯いてしまった。

「全くちゃんと前を見ねぇからこうなるんだぞ。最近の奴らは本当よく器用な真似が出来るもんだ。
お前の事だからゲームしながら歩いてたんだろ。リ○ミンかパズ○ラか?ん?」

「あ〜面白いですよね〜って、急いでるのにそんな悠長なことが出来ますかッッッ!!;;;」

「・・・まぁとにかく、俺はルールを守らん輩は嫌いだからな。気をつけろよ。ほら。」

「は、はい、すみませ・・・」


と、愛用のスマホがその人から手渡される。お礼を言おうと顔を見上げた━━━━時だった。



「・・・!・・・・・・・」



何かが体の中でばくん、と鳴った。思わず男性の顔にそのまま見入ってしまった。



「・・・ん?どうした?」

「・・・・・・あっ、い、いえっ、何でもありませんッッッ!!」
 
「・・・で。急がなくていいのか?」

「あっっ・・・い、いけないっ・・・!!ほ、ほんとにありがとうございました!!」


思い出したようにハッと我に返ると、深く一礼してその場を去った。
しばらく走っていると、遠くから先ほどの彼の声が聞こえた。


っ、お前の名前、綺麗な名前だなーっ。」

「〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!!」



ちょ、ちょっと、もうっ、やめて、恥ずかしいっっっ・・・・・こんな場所でそんな事言わないで欲しいっ・・・
周りの人達が誰の事なのか探している中、振り返りもせずに、会社へと道を急いだ。━━━━


































━━━━それから数日が経った。





あれからあの男性とは、全く会わない日々が続いていた。━━━━








「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・はぁ・・・・・・。」





今朝も慌ただしいオフィス内。ワープロを打つ手を止め、パソコンの液晶に映る自分をぼんやりと見つめていた。


・・・・・何だかここ最近、仕事に全然集中できない・・・・・・・・・。どうしてなんだろう・・・・・・?


いつもなら今日もさっさと片付けようと励む自分だったのだが別にどっちでもいいような、そんな投げやりな気分だった。
むしろ、一人にして欲しい時間が欲しいぐらいだった。
・・・そのせいか、仕事のミスがやたらと多い。長い仕事がようやく終わっても、皆と同じように解放された気分にはどうしてもなれない。
徹夜続きだからとか、疲れているからとか・・・全くそんなものじゃない。激しい運動をしていたわけでもないのに
私の心臓は何故か鼓動を止まないのだ。




あの日以来。・・・




名前はまだ知らない。見た目はすごく怖そうな人だったけど、私の大事なものを拾ってくれ、
怒りもせずに注意をしてくれたとても優しい男性。そして・・・・・・・・・



私の名前を「綺麗だ」と言ってくれたこと。あの言葉が、未だに忘れられない。



・・・・・・・・・・・・・・・。あの人なりの冗談かもしれないのに、何真に受けてる私がいるんだろう。
そんな自分がおかしくて、一笑する。最も馬鹿らしいな、と思ったことはいつもより少し早めに家を出て同じ道を歩き、
またあの時みたいに肩をぶつかれて、「久々だな」・・・って声をかけられないかな、と期待してしまうこと。
それが全然違う人だった時は、どれだけショックが大きかったのだろう。何度もがっくりとしてしまう。そのおかげで何度か遅刻しかけた。
もしかしたら向こうもとっくに忘れているのかもしれないのに・・・。そんな叶わぬ出来事を描く毎日。
にも関わらず、今日もこんなに活発に心臓が動いている。最近の私・・・やっぱり変だ。友達や周りの皆にも心配されたほどだ。・・・



ちゃん。」

「は、はいっ!あっ、キリ先輩!」


声をかけられ慌てて反応し見上げると、私の会社の先輩でもあって、社内一の美人と呼ばれているキリ先輩。
入社してからよくよく面倒を見てくれて、悩み事があれば何でも相談に乗ってくれる、いわば憧れの存在だ。


「どうしたの?今日もぼーっとして・・・。恋のお悩み?」

「え”っっっ・・・////な、何を言ってんですかっ!!し、仕事の事、考えてたんですよっ!」

「ふーん。これが仕事のこと考えてるように見えるかしらね。」

と言うとキリ先輩は私がさっき仕上げていた書類をパサリと置いた。

「え?な、何か問題点でも・・・?」

「部長さんがカンカンに怒ってたわよ。書類の数字が全然違ってるぞって」

「う”っっ・・・嘘ッッッ!!??ご、ごめんなさいっっ!!!;;;」

やっぱり今日もやってしまった、と頭を抱える。それでもキリ先輩は「ふふ。」と笑って優しく怒ってくれた。

「考え事もいいけど、仕事は仕事。一緒にしてもらっちゃ困るわよ。」

「うぅっ・・・すみませんっ・・・・・・・」

「それと、部長さんから今日も残業よろしくって。・・・
ちゃんこのところミスが多いから、気合入れて
頑張りなさいよ?」

積まれた書類の山。これを全て終わらさない限り、私に考え事をさせてくれる時間は与えられないだろう。

「・・・・・・はい、頑張ります・・・・・・。」

今日も残業確定。私は重い溜息を零しながら気が進まない中、作業する手を動かした。━━━━












━━━━「ちゃん。午前のお仕事お疲れさま。」

「あっ、キリ先輩、ありがとうございます!」



お昼の休憩時の食堂にて相変わらず一人で考え事をしている私に、キリ先輩がやって来て
温かい缶コーヒーを差し出してくれた。キリ先輩が私の向かい側に座って、心配の表情で見つめる。


「・・・ちゃんパン一個だけで足りるの?午後から大丈夫?」

「あっ、はい、足りますよ!・・・何だか最近食欲、無くって」

「・・・本当に?けどあなた、このところおかしいわよ?ポーっとしてたり、ミスも毎日のように多いし・・・。具合でも悪いの?
それか悩みだったら、私が話聞いてあげるわよ。」

「えっ・・・。い、いいんですか?」

「えぇ。最近の
ちゃんをいつまでも放っておくわけには行かないからね。」


・・・キリ先輩、今日まで悩んでいた事全部、馬鹿にしないで聞いてくれるかな。そういえばキリ先輩には
私が羨むほど、かっこいい恋人がいたんだ。どんなアドバイスをくれるんだろう。私はあの日の出来事を全て一部始終話した。


「・・・実は仕事以外のほんと、しょうもない事でずっと前からの話なんですけど・・・」









「・・・へぇ〜〜、あなたも会ったんだ。蔵ノ助さんに・・・」

「!・・・」


蔵ノ助・・・私があの日出会った男性の名前か。初めて知り、キリ先輩に話して良かったと思えた。


「知ってるんですか?」

「えぇ。この街をよくよく歩き回っている所よく見るからね。男の人でも怯えるぐらい、怖〜いことで有名よ。
この間だってちょっとぶつかっただけで『馬鹿野郎っっ!!!』って呼び止められて、長いお説教喰らわれたって、
男子社員泣きべそかきながら話してたわ。・・・ふふふ、ご愁傷様ね。」


やっぱり・・・。私、女である意味良かったのかもしれない・・・。もし男だったら絶対生きて帰れなかっただろう。
けどあの後、見かけによらずすごい気さくで話しやすかった雰囲気があった。・・・私が女だからかもしれないが。
キリ先輩がそんな私を見てクスクス笑う。


「そんな人にちゃんが一目惚れしてしまうなんて・・・。ひょっとして、蔵ノ助さんみたいな怖い男の人がタイプ?」

「ちっ、ちちち、違いますよっっっ!!!き、気になってるだけでっ・・・」

「ほら、やっぱりどう見たって恋の悩みとしか言いようないじゃない。素直に言いなさいよ。・・・
ちゃんの
仕事のミスの原因がようやく分かったわ。」

「だっ、だから〜・・・」

「・・・けどね?誰かが誰かを好きになることは、しょうもない事じゃない。むしろ素晴らしい事だと思うわよ。
・・・ふふ、ちゃんも恋をする、そんなお年頃だものね」

「・・・うぅ・・・////」


・・・そういうものなのかな・・・。じゃあずっと止まないこのドキドキも、寝ても覚めても彼の事ばかりがちらつくのも・・・まさか・・・。


・・・心の中でブンブンと首を振ってその考えを打ち消し、自分に嘘を吐いた。もうすぐ休憩が終わりに近い。キリ先輩が席から立つ。


「とにかく蔵ノ助さんの事ばっかり考えて変なミスを起こさないように、今日も残業頑張ってね。
私は夜から彼とデートなの♥」

嬉しそうにルンルン気分でそう話すキリ先輩が羨ましくて仕方なかった。恋人が居るってやっぱりいいよな。いつもの自分が
違って見えるんだろうな。・・・そんな思いを見透かしたようにキリ先輩がからかうように言った。


「心配しなくてもちゃんは美人だからすぐに彼氏の一人や二人、出来るわよ。蔵ノ助さんみたいな・・・ね♥」

「ちょ・・・、ちょっとせんぱっ・・・・・・」


恥ずかしがっている私を放っておくようにキリ先輩は先々行ってしまった。ようやく打ち明けられても未だ心臓の鼓動は止まるわけがない・・・。
とにかく余計な考えは捨てて、怒られないように頑張ろう・・・。やる気のない体と精神に鞭打って、午後の仕事へと向かった。━━━━
























こんな時間までかかるとは思わなかった。



予想以上の仕事の量があり、ようやく全てが終わった時はもう私一人しか残っていないようなかなり遅い時間帯になっていた。
人がまだちらほらと居る夜の街を早歩きで再び駆けていく。ハイヒールの音がカツカツと辺りに響き、駅へとまっすぐ目指していく。
スマホで時間を確認。終電までもう僅かしかなかった。


「・・・やばい、早く急がないと家に帰れないよっ・・・。」


・・・しかしどんなに急がなければならない事態になっても、よくもまぁ悠長な行為が出来るものだ。ともう一人の自分は感心してしまう。
キリ先輩はここ周辺をよくよく徘徊している、と言っていた。だとしたら、私の勘が正しければまた会えるのではないか・・・?
・・・という確率0、1%に思いを馳せながらきょろきょろと辺りを見渡し歩いていたら、ドジなことに足がふらりと滑ってそのまま転倒してしまった。


「Σきゃあっ!!・・・・・・うぅ、見られなくって良かった・・・」


こんな情けない所、誰かに見られたらたまったものじゃない。必死にのろのろと立ち上がろうとしたが、足に激痛が走った。


「・・・えっ・・・・・・。う、嘘っ、やだっ、血が出てるっ・・・」


転んだだけで膝から血がじわじわと出ていた。ちょっと動かしただけでもじんじん痛む。


「・・・っ・・・立てないっ・・・・・・。」


転倒した時に落としたスマホを何とか拾い、慌てて画面を見る。・・・たとえ立ち上がれても走っても間に合わないような時間になっていた。
もうどっちみち終電には乗れない。野宿確定。そう思ったとき、絶望したようにその場でへたり込んでしまった。


「・・・あぁ・・・今まで恐れていた事がついに起こってしまうなんてっ・・・・・・。」


完全に諦めて切っていた━━━━時だった。



「・・・?」




「えっ・・・!?」


聞いたことがあるような声。見ると目の前に誰かが立っている。爪先からゆっくりと見上げると・・・・・・・・・


夜の街のライトに照らされて、見下ろしている一人の男性。
・・・よく覚えている。私の今まで探し求めていた人だった。



「久々だな。」

「!!!・・・く、・・・蔵ノ助さん!?」

「?俺の名前知ってたのか?」

「あっ、えとっ・・・噂で・・・色々とっ・・・。」

「・・・・・・・・・・・・・・・。まぁ無理もねぇな。」

「?・・・」



最後の一言の意味がよく理解できなかった。けど・・・こんなに暗いのに顔を覚えて、しかも名前まで覚えてくれていたなんて
予想もつかなかった。忘れていると思っていたのに・・・嬉しい・・・。しかしこんな情けない、見られたくない格好で出来れば再会したくなかったっ。


「何やってんだこんな所で座り込んで。今度は酒にでも酔ったのか?ん?」

「あ・・・あはは、いえ、別に、何でも、ありま・・・!!いっ・・・つっ・・・」

「!・・・お前、足に怪我してるじゃねぇか」

「い、いや、た、大したことじゃないですっ、ちょっと転んだだけでっ・・・・・・痛いっっ・・・。」

「大丈夫か立てるか?肩、貸してやるぞ。」

「!!!・・・いっ、いえっ、とんでも・・・ないですっ・・・!!」

「・・・あぁどっちみち歩けねぇか。・・・よし、しっかり捕まってろよ。」

「え・・・?な、何を」


その時、蔵ノ助さんが私のもとにしゃがみこんだかと思うと・・・いきなり私をヒョイっと抱え上げた。


「ひゃぁっっ!!??」


突然のあり得ない行為に驚き、慌てて落ちないように蔵ノ助さんの肩にしがみつく。
ちょ、ちょっと、この体勢、まるでお姫様抱っこみたいじゃないっっ・・・!!顔をかぁっと熱くさせ、蔵ノ助さんを見た。
まるで平然としたような、涼しい顔。


「くっ、蔵ノ助さんっ!!だ、誰かに、見られたらっっっ・・・」

「俺の屋敷に連れてってやる。手当してやるよ。」

「・・・・・・・・・っ・・・・・・。」


心臓が早鐘のように鳴り出す。足の痛みを忘れる程で今は逆に体の中の心臓が痛い。間近に蔵ノ助さんの顔。・・・近い。
私はしばらく彼をぽーっと見つめていた・・・・・・。


「・・・・・・・・・・・・。」

「・・・ん?何だ?」

「あっ・・・い、・・・いえ、・・・何でもっ・・・・・・。」

「あと、普段通りの喋り方でいいんだぜ。堅苦しいのは苦手だからな。」

「えっっっ・・・・・・・・・ ・・・・・・・・・う、・・・うん、あ、ありが・・・とうっ・・・。」


い、いいのかな・・・こんな友達同士が話すような会話で・・・・・・。戸惑ってしまった。けど何だか嬉しいな、と
思いながらも恥ずかしそうにくすっと笑いながら言葉少なに答えた。蔵ノ助さんの大きな両手が私の体を
大事に支えてくれる。この温もりが堪らなく、嬉しかった。怪我した理由を聞かれなくて良かった。
蔵ノ助さんを、貴方を探してました、なんて口が裂けても言えないから。


「重く・・・・・・ない・・・?」

「いや、全然。むしろ軽いほうだぜ。」

「・・・良かった」


・・・こうして蔵ノ助さんに抱え上げられながら屋敷へと連れられた。━━━━














━━━━「お頭!お勤めお疲れ様ですっ!」

「おう。・・・こいつ怪我しているからな。あまり手ぇ出すんじゃねぇぞ。」

「ではっ、俺が手当・・・」

「いいや、俺がする。お前らはゆっくり休んでいろ。」

「はいっ、お頭っ!」



蔵ノ助さんの屋敷に到着すると一人の部下らしき人がお出迎えしてくれていた。他にも沢山の男性たちが
蔵ノ助さんに次々と丁寧な挨拶をする。彼の意外な一面に思わず驚いてしまった。


「・・・・・・すごいっ・・・蔵ノ助さん、慕われているんだっ・・・。」

「まぁな。」

「ふふっ、尊敬しちゃうっ・・・。・・・・・・・・・っていうか、そろそろ降ろして下さいませんかっっ!!?
は、恥ずかしいよっっっ・・・!!!」

「あー悪い悪い。もうすぐ俺の部屋に着くからよ。」


周りの視線が気になるっ・・・。なのに堂々と見せつける(?”)蔵ノ助さんもどうかと思う。 
抱えられたまま、とある一室へと運ばれた。



  




「・・・あ”ーいけね、消毒液無かったな・・・」


・・・やっぱりボスだからすごく大きいなぁ・・・。椅子に腰掛けられ、私の部屋よりずっと広い蔵ノ助さんの立派な部屋に
感動してしまった。蔵ノ助さんはと言うと困った表情で頭を掻いている。そして私に振り向くと真顔でとんでもない事を言い出した。


「・・・。舐めて消毒してやってもいいぞ」

「あぁ舐めt・・・ ・・・って、えぇぇッッッ!!!???」


蔵ノ助さんらしくない発言に辺りに響くほど、咄嗟に声が出てしまった。な、舐めるって・・・まさか、蔵ノ助さんがっっ・・・!?
そんな事、急にされてしまったら、困るっっ・・・・・・けど。


「放っておいたらどんどん血が出てキリがねぇぞ。唾は消毒にも効くからな。」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・っ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。・・・・・・・・じ・・・じゃぁ・・・・・お願 い・・・・・・・・・します・・・・・・」


そう言った途端。蔵ノ助さんがゆっくり歩み寄って来た。私の膝下にそっと顔を近づけ、サングラス越しにじっ・・・と私を見つめて。
今にも口から舌を出してきそうな、緊迫した空気が辺りを包む。

・・・ど・・・どうしよう・・・私、変な声、出さないかな・・・・・・。鼓動が体中から大きく鳴り響く。



━━━━ドクン、ドクン、ドクン・・・・・・・・・・・・



・・・その時、蔵ノ助さんがいきなり「フッ」と鼻で笑うと、さっと傍を離れた。

「え。」

「・・・あのなぁ。俺が本気で舐めると思ってんのか?変な勘違いしてねぇか?」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。。。////」


━━━━ガチャ。


「お頭!包帯をどうぞ!」

「あぁ。すまねぇな。」


蔵ノ助さんの部下の人が入って来て包帯を渡し一礼すると、すぐにドアを閉めて行ってしまった。
・・・・・・・・・よ、良かった、一歩手前の所見られなくてッッッ・・・!!!もし蔵ノ助さんがあと5秒離れるのが遅かったら、と想像すると
恥ずかしくて堪らない。ポ〜っと顔を熱くし、俯いてしまった。


「・・・悪いなこれだけしか出来なくて。まぁ頑丈に巻いとけばすぐに血なんか止まるだろ。これで我慢しろよな。」


と言いながら私の膝下を包帯でぐるぐると巻き始めた。・・・何だ、これも彼なりの冗談だったのか。正直なところ、
少し残念だったような・・・って、何言ってんだろ私っ・・・。それよりも蔵ノ助さんは男の人なのに、手当てがなかなか上手い事に気づいた。
恐る恐る、口を開いてみた。


「・・・蔵ノ助さん、包帯巻きとか、すごく上手だね」

「ん?あぁ、部下が怪我した時にいつも俺が好きでやってるからよ。」

「・・・っ・・・そう、なんだ・・・。」

「ん、何だ、その意外に知ったような声は。えらく驚いてんな」

「見かけによらず、世話好きなんだなぁって思って・・・あっ、ごめんなさい、余計なこと言っちゃって」

「部下にもよく言われるぜ、そんな事。」


私の失言で怒らせてしまうんじゃないかと焦ったけどにっこりと笑った蔵ノ助さんに安心した。
・・・・・・・・・。しばらくの間、お互い喋ることなく無言が続く。・・・私も何か喋ったほうがいいんだろうか、せっかく会えたのに
空気が気まずく感じる。けどあんまり喋りすぎるとかえって逆効果になりそうだ。馴れ馴れしい女だって見られてしまう。
そしてどれだけ巻いてからだろうか、蔵ノ助さんがようやく口を開いた。


「・・・変な誤解すんなよ」

「え?・・・」

「外では俺が怖いだの、周囲が怯えてるだの、ビビってるだの、色んな噂がバカみたいに飛び交っているが・・・。
言っとくが、そのつもりで徘徊して、脅しているわけは全くねぇからな。・・・俺はただ、ルールを守らん奴を
注意しているだけだ。そこんとこ、分かってくれよな。」

「・・・・・・・・・・・・・・・。」


・・・・・・何だ・・・やっぱり、凄く優しい人だったんだっ・・・・・・。人は見かけで判断しちゃいけないなと思った。
安心したようににこっと笑った。


「・・・うん、蔵ノ助さんが私の大事なスマホを拾ってくれてから・・・分かってたよ。それに・・・話も面白かったし・・・。
だからあんなにたくさんの人たちに慕われているんだね。やっぱり尊敬しちゃうなぁ・・・・・・。」

「本当か?お前あの時『ふぎゃぁ!!??』とか言ってかなりビビりまくってたよな、踏んづけられた猫みたいにさ。」

「あ、あれは〜、絶対怒られると思ったし、知らなかったから・・・って、Σそんな甲高い叫び方が出来ますかッッッ!!!;;;」

「ハハハ、その時点で周りの注目の的だな。」

「ふふふっ・・・」


蔵ノ助さんがこんなに話し好きだなんて思わなくて心が和んだ。彼と一緒だともっともっと楽しい話が聞けそうだし、
こっちも少しだけど心を開けそうだ。そして・・・私の意志とは関係無しに思わずこんな言葉が漏れた。


「・・・あ、あのね、蔵ノ助、さん・・・。その・・・・・・」

「何だ?


サングラスの奥の瞳が私を真っ直ぐ捉えた。

「・・・っ・・・う、うぅん、なんでも、ないのっ。何でも、ない・・・から・・・。」

「何だよ、
ってほんと面白いやつだなぁ。最初から」

「Σなっ・・・どういう意味なのよそれ〜;;・・・ふふふっ・・・。」


・・・私ってば何を言おうとしたんだろう・・・。けど・・・こんな特に意味のないような会話でも蔵ノ助さんは弾ませてくれる。
彼といると、何だかすごく、楽しい・・・。最初の怖いイメージなんかまるで無かったようだ。     
気がついたらいつの間にか包帯が既に巻き終えていた。


「・・・これでしばらく持つだろ。どうだ、キツくないか?」

「あっ、うん、マシになったよ。ありがとう。ほんとに、色々と・・・。」

「いいや、構わないぜ。あれからだいぶ時間経ったけど、もう遅いだろ?ここに泊まっていけよ。
そんでここから直行でお前の会社に行けばいい。」

「えっ・・・い、いいの!!?」

「あぁ。この部屋でゆっくり休むといいぜ。」


地獄に仏、とはまさにこの事だった。あまりの蔵ノ助さんの優しさに感激で涙が出そうだった。
蔵ノ助さんはまだ仕事があるのだろうか、部屋から出ていこうとドアのノブに手をかける。・・・もっと話したいことがあったのに。
彼も都合があるのだから、仕方がない。


「・・・く、蔵ノ助さん」

「何だ?」

「・・・そ、その・・・・・・きょ、今日は、本当に、ありがとうっ・・・。」

「・・・二度も礼なんざいらねぇよ。」


にこっと微笑みかけ、蔵ノ助さんはドアを開けて行ってしまう。後は私一人だけが残された。


「・・・・・・・・・。蔵ノ助さんってなんて優しくて・・・・・・・・・かっこいいんだろう」


誰もいない部屋内。にも関わらず、やっぱり他人の部屋だからだろうか、すごく気を遣う。休めと言われても
自分の部屋でくつろぐように体を伸ばせない・・・逆にリラックスどころか、体が強ばってしまう。蔵ノ助さんの部屋だから尚更だ。



それに・・・・・・彼がいなくなったのにさっきから止まらないこの緊張。
私が・・・想いを伝えない限り一生止まないのではないのだろうか。・・・・・・
しかし、それも恐怖を感じた。


「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」


ふと目についたソファーに腰掛け、スマホである調べ物をした━━━━


















































━━━━「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・っ・・・・・・・・・ん・・・・・・・・・う、・・・ん・・・・・・・・・」




眩しい光に起こされて、ゆっくりと重い瞼を開けた。


「・・・・・・・・・やだ、私、寝ちゃってた・・・・・・って、ここ、どこ?・・・・・・・・・・・・・・・あっ、そうか、昨日・・・・・・。」


外を見てみると太陽が顔を覗かせ、朝になっていた。のろのろと体を起こしながら今までの出来事を整理してみる。
・・・昨日会社から帰る途中に足に怪我をしてしまって、蔵ノ助さんに運ばれて手当てしてもらって・・・。
今夜は遅いから泊まっていけと言われて・・・・・・それで今に至るんだっけ。おかげで足の痛みは徐々に消えつつあった。


スマホの時計を見ると・・・・・・・・・まだ6時手前。こんなに朝早くから目が覚めたのは、何年ぶりなんだろう。
本来の私ならこの時間帯はまだ眠りの世界にいる。やはり環境が違うと目覚めが違うんだろうか。
起きなくちゃ。肩に掛けられたものを纏いながらソファーから立ち上がった。


・・・あれ?そういえば私、さっきから何を羽織ってんだろ・・・・・・。
・・・・・・黒の・・・上着・・・?誰が掛けてくれたんだろう。一体誰の上着なんだろうか。


「・・・・・・?・・・誰か寝ているのかな・・・。」


誰かの寝息が聞こえ、奥に設置された一回り大きい黒のソファーに静かに近づいてみる。
・・・・・・蔵ノ助さんがいた。はだけた白のワイシャツ。だらしなく解けているネクタイ。静かに寝息を立てて仰向けになって
グッスリと眠っている。


・・・まさか、この上着は・・・・・蔵ノ助さんのっ・・・・・・?
抱えられた時に僅かに感じた、タバコの匂い。・・・間違いなかった。彼の、上着だっ・・・。


スマホであるものを検索している途中でいつの間にか眠りこけてしまって、戻ってきた蔵ノ助さんが、私が風邪をひかないように
自分の上着をそっと掛けてくれたんだろう。・・・温かい。今まで蔵ノ助さんがこれを着ていたんだと思うと余計緊張が高まる。・・・


・・・どこまで、本当に優しい人、なんだろう・・・。そしてその優しさで・・・何度救われたことなんだろう。
今まで助けられた感謝を込めるように、蔵ノ助さんの上着をギュッと掴んだ。



「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」



・・・どうしてなんだろう。・・・・・・



どうして、彼を見るだけで・・・・・・こんなに・・・胸が熱くなるの・・・?どうしてこんなに心臓の鼓動が・・・止まらないの・・・?
彼と出会った時からの私・・・・・・。やっぱり・・・おかしいよ・・・・・・・・・。


出会い頭ぶつかって、彼が私のスマホを拾ってくれたことから始まって。とっても怖い人に見えたけど外見とは裏腹に、
『普段通りに話してもいい』と言ってくれる程、すごく優しかった。私の名前を綺麗だと言ってくれたり、お姫様抱っこで運んでくれたり、
・・・傷を舐めるって言ってくれたり・・・・・・。たとえ彼なりの冗談だとしても、本当は嬉しかった。この・・・気持ちは・・・・・・



・・・・・・もう、これ以上自分に嘘はつけない。

私は・・・・・・・・・蔵ノ助さんのことが・・・・・・・・・こんなにも・・・・・・・・・

・・・・・・・・・好きに・・・・・・・・・なって・・・・・・しまったんだ・・・・・・・・・・・・・・・。



ちなみに今まで調べていたのは・・・・・・・・・いろんな人の恋に関する体験談や、悩み。
友達や先輩や、そして後輩の話でよくよくそんな恋愛話を聞かされるけど、私には無縁の話だと思っていた。
叶わないと思っていた。それが・・・・・・・・自分にもこんな出来事が降りかかるなんて信じられなかった。
心を揺り動かされるような、大きな出来事が・・・・・・・・・。


今こそ、想いを貴方に伝えたい。けど、それが怖い。

貴方を前にして突然好きですなんて言ってしまったら。

こんな私に驚く貴方。私はどう対応すればいいんだろう。

それまで仲良しだった雰囲気がぶち壊しにされ、距離を置かれてしまったら。

この気持ちを拒否されたら。拒絶されたら。それが堪らなく不安で、・・・・・・怖い。

けど伝えたい。でも怖い。怖すぎて・・・・・・・・・勇気が、出せない・・・・・・。

私は一体・・・・・・・・・どうすればいい・・・・・・の・・・・・・・・・・・・?

貴方の事で不安でっっ・・・・・・・・・・・・怖いっっ・・・・・・・・・・・よっっっ・・・・・・・・・・・・。言えないっっっ・・・・・・よっ・・・・・・。


いつの間にか泣いている私がいた。不安と恐怖が入り混じった、涙。床にぽたりと落ちた。


私が目の前に立って、見下ろしている事が当然知らないかのように、ただ目を閉じて眠っている蔵ノ助さん・・・・・・・・・。



貴方が好きすぎて、苦しい。貴方に、心の奥にしまい込んでいたこの気持ちを伝えられなくて・・・・・・・・・苦しい。・・・辛い。






「・・・・・・・・・。」



・・・音を立てて起こさないように、ゆっくりと、寝ている蔵ノ助さんの上に覆いかぶさる。他人から見ればすごいこっぱずかしい
光景だ。
自分でも分かっている。けど気にしてなんかいない。だって・・・・・・彼を・・・・・・・・好きになってしまったから・・・・・・・・・・・・。


蔵ノ助さんの頬を指先でそっとなぞるように静かに触れる。もちろん、起きる気配は無い。なんてかっこいい寝顔なんだろう・・・。
本当ならもっと、こうして見つめていたい・・・。永遠に止まらない、私の心臓の鼓動。動悸がすごく激しい。痛い。
黙っているのが苦しくなり、口から僅かな呼吸音が流れる。ドキドキの鳴りっぱなしで・・・頭や精神が・・・
どうにかなってしまいそうなくらいだった。蔵ノ助さんの半開きの唇。



・・・どんなに優しい蔵ノ助さんでも・・・流石にびっくりするよね。確実に・・・怒られるよね・・・。
でも・・・怒られてもかまわない。これが私の・・・本当の素直な気持ち、なんだから・・・・・・・・・・・・・・。



目をそっと閉じ、蔵ノ助さんの唇に、囁く唇を静かにゆっくりと近づけた。


「・・・・・・・・・好き・・・・・・。蔵ノ助さん・・・・・・・・・・・・。」















━━━━グイッ。



「・・・!!・・・・・・ぅっ・・・・・・・・・・・・・・ぅんっ・・・・・・。」



途端。頭を掴まれ、強く引き寄せられたかと思うと唇を重ねられた。今度は私の方が驚いて目を見開く。
突然の事にそのまま固まってしまった。もしかして・・・・・・最初から、起きてた・・・・・・・・・?

チュッ・・・と離される。


「・・・おはよう、女神さん」

「・・・・・・っ・・・・・・あっっ・・・・・・・・・、え・・・・・・え、と・・・・・・・・・」

「・・・・・・お目覚めのキスのつもりか?」

「いっ、いやっ・・・・・・。これはっ・・・・・・ご・・・ごめんなさいっっ・・・そのっ・・・・・・」


顔を炎のように燃やし、慌てて離れたかったけど離れなかった。というのも蔵ノ助さんが私の頬を両手でしっかり掴んで
離さないからだ。近すぎる。どうしようっ・・・。熱を含んだ蔵ノ助さんの大きくごつごつした手。頬を熱く上昇させた。


「・・・・・・・・・しいなら、・・・そう言えよな。」

「・・・・・・え・・・・・・?」

「俺が欲しいんなら・・・最初からそう言えよな。」

「く、蔵ノ助さ、んぅっ・・・。」



不意に降ってきた口付け。朝の部屋中に響くリップ音。上着がバサリと落ち、キスを繰り返しながら首筋から肩、腕にかけてゆっくりと撫でられる。
体が反射的にピクン、と反応を起こす。もう少しで胸まで触れそうになり、思わず声が漏れそうだった。再び唇が、離される。
蔵ノ助さんの何やら興奮した熱い吐息。私の顔にかかる。
 

「・・・・・・・・・

「・・・・・・・・・っ・・・・・・。」

「・・・何故、泣いている・・・?」


蔵ノ助さんは親指の頭でぐっと私の涙を拭ってくれた。尚も溢れ出てくる涙。蔵ノ助さんの顔を濡らしてしまった。


「・・・っ・・・っ・・・ず・・・・・・っと」

「ん?・・・」


私を落ち着かせてくれるように髪を優しくそっと梳いてくれる。その優しさ、微笑みが私を尚悲しませた。


「・・・ずっと・・・・・・怖、かったの・・・・・・・・・。」

「・・・怖かった・・・?」

「・・・・・・びっくりしちゃうよね・・・。私が・・・あの日、蔵ノ助さんと出会った時から・・・ずっとずっと好きだったってことっ・・・」

「・・・・・・っ・・・・・・・・・。」

「・・・蔵ノ助さんはあんなに優しいし・・・すごくかっこいい人だから・・・既に他の女の人がいてっ・・・・・・
断られたら・・・拒絶されたらどうしようって・・・・・・・・・今までずっと怖かった、のっっ・・・・・・。」

「・・・・・・・・・。」

「蔵ノ助さんのことでっ・・・・・・心配で・・・不安で、ならなかったのっっ・・・・・・だからっっっ・・・・・・・・・。」

「・・・・・・・・・俺も、お前にそう言われるまでは・・・・・・全く同じ気持ちだった」

「・・・えっ・・・・・・・・・?」


真っ赤になった私の顔を優しい眼差しで見つめながらそっと撫でてくれる。


「・・・あの日、初めてお前と出会った時から、毎日毎日ひどく悩んでいた。夜も寝られねぇ、飯も喉を通らねぇ有様でな。
お前のことで・・・・・・胸が張り裂けそうなほどに苦しかった。だから・・・俺から会うのを正直躊躇っていた。こんな気にさせたのは
・・・
。お前が初めてだ」

「・・・・・・。」

「・・・それがまさか、先を越されるとはな」


いつの間にか私の手が蔵ノ助さんに握られ、ぎゅう。と指同士を絡めさせる。小さくて細い私の指と、蔵ノ助さんの太く、ごつごつした指。
交互に重なり合った。



「道端でぶつけられたあの時が、俺と
の運命の出会いだ」



・・・じゃあ今まで私にしてきた、冗談だと思っていた行為は・・・全部嘘じゃなかったんだ・・・・・・。


「・・・っ・・・蔵ノ助、さん・・・」

「・・・
。何もかも綺麗だ。ずっとお前を探していた。・・・愛してる」

「・・・私も・・・んっ・・・・・・ふっ・・・・・・。」



腰を強くぎゅっと抱きしめられ、どちらからともなく唇を重ね合った。蔵ノ助さんの生温かい舌が口内に深く入れられる。
絡み合う舌と舌。口元からゆっくりと引いた唾液の糸が朝の光によって白く照らされる。顔はまるでサウナ室にいるかのように
既に真っ赤に燃えていた。手を強く、ぎゅっと繋ぎあう。そして蔵ノ助さんの片手によって私の服のボタンが一つ一つ外されていき、
少しだけ肩の肌が露わになる。蔵ノ助さんが上体を起こし、鎖骨に吸い付く。舌が這われて体が自然と仰け反る。


「・・・っ・・・・・・あ・・・んっ・・・、いやっ、だめっ・・・・・・。」

「いいだろ・・・


「やぁ、んっ・・・だめっ、遅刻、しちゃうぅっ・・・くらっ・・・・・・あっ−−!」

「・・・帰さねぇと言ったら?」

「もうっっ・・・いじ、わるっ・・・////」


それ以上服を脱がそうとするところで何とか規制をかけた。蔵ノ助さんも「しょうがねぇな」と承知したみたいで私を上にゆっくりと
寝かせてくれた。・・・・・・あぁ、こんな幸せなことってあるんだろうか。蔵ノ助さんの逞しい胸板に顔を深く埋めた。そんな私を
優しく抱きしめてくれる蔵ノ助さん。


「・・・蔵ノ助さん。私、今日会社休みたい・・・」

「それはダメだろ。真面目に会社に行かねぇと」

「・・・だって・・・幸せなんだものっ・・・・・・。」

「全く、本当に可愛いな
は」

「・・・・・・ねぇ。蔵ノ助さん・・・・・・・・・大、好き・・・だよ・・・。」

「あぁ。俺も愛している。・・・俺だけの天女。」




・・・まだ1時間あるからゆっくり眠ろう。・・・大好きな、恋人の腕に包まれながら。まだ溜まっていた涙が頬を流れた━━━━


































━━━━「お〜そ〜い〜!蔵ノ助さん〜!」

「おぅ、。今日も一番乗りだな。」



あれから一週間。日曜日の休日の待ち合わせの公園にてようやく来た彼の姿を見かけると大きく手を振りながら駆け寄った。
この日の為におしゃれに大変身した私を見てどぎまぎしてしまった蔵ノ助さん。よく見るともう顔が真っ赤っかになっちゃってる。可愛い。


「ふふっ、初めての徘徊デートだから緊張してるんでしょっ??」

「う、うるせーよっ;;;・・・あ、歩き方、もう少し直したほうがいい・・・か?」

「ううん、今の方が蔵ノ助さんらしくって、かっこいいよっ」

「そ、そうか?」


照れてる蔵ノ助さんがすごく可愛い。からかうように彼の腕をぎゅっと絡ませた。
色とりどりの花が咲いた小道を二人寄り添って歩くと、風に乗せられた花の匂いがとてもいい香りであたりを包んでくれた。


「・・・ねぇ蔵ノ助さん。夜になったら・・・また・・・あの時みたいに・・・抱っこ・・・して?」

「お、Σおいおい、あれは、お前が怪我してたから担いでやっただけで・・・・・・それ以外はさすがに受け付けねーぞ、恥ずかしいから。」

「あの時、堂々として見せつけてたくせに??」

「・・・・・・・・・。////」


からかうようにそう言うと確かにそうだ・・・と蔵ノ助さんは考え込む。そして「じゃあ今日だけだぞ」と言って、再び私を抱き抱えてくれた。


「きゃっ!ちょっ、い、今って言ってなっ・・・」

「いいだろ、俺たち出会った時から既に恋人同士なんだから」


と言うと彼は私の頬に優しくキスを捧げてくれた。


「・・・ふふっ、もうっ・・・蔵ノ助さんったら・・・。」



蔵ノ助さんの逞しい首筋に深く寄り添う。お返しに首筋に触れるだけの口付けを落とした。
私たち二人を見て、友達や皆やそしてキリ先輩も驚いてくれるだろう。そう思うと、自然と笑みがこぼれた。
来年も再来年も。これからもずっと。いつまでも大好きな蔵ノ助さんと一緒に、長く傍に居たい。




━━━━貴方を好きでいて、こんなにも愛されて、幸せすぎて苦しい。━━━━




-end-






★・・・・・・・・・もぉ〜〜〜〜う、あなたたち、どんだけ熱いんで すかぁ・・・・・・!!!!(;゚∀゚)=3

・・・なんだか一個一個作ってく度に熱々levelがだんだん上がってく感じがするのは気のせいですかね?;;;
そして長編levelといふ・・・・・・( ゚∀゚)・∵. グハッ!!好きキャラだとついつい文章を長くしてしまいますね!!!!
正直なところ、熱いのはロミ夫さんだけで十分だったのだが・・・・・・。。。。。。(´・ω・`)しょぼーん

蔵さんもマサさんと同様mikko.の嫁キャラですからねっ、(萌♥)同じように書いてみたんですけど
こっちの方が熱いというよりちょいエロが入ってしまってますね;;;;;;;;;;;; (死”)
ちょいエロというか・・・もう激甘を余裕で超えちゃってる???( ´∀`)bグッ!あはははは〜〜。。。(←


そして最近こういう小説を始めて思ったこと・・・・・・男性視点で書くより、女性視点で書くほうが・・・・・・


凄く★萌えるよね( ´∀`)bグッ!
                                                  


※11/4どーもぱっとせんかったので文章を一部変更致しました。


14.5.11