私の学園には一風変わった人物がいる。彼は風紀委員を務めていた。
「おやおや皆さん。廊下は走る場所ではありませんよ。常に厳かな心をもって、静かに右側に歩くのです。」
「なぁんですかその制服の乱れはっ!服装の乱れは心の乱れと同様、きちんと清潔に、身なりを正すことを心がけるのですっ!」
「待ちたまえそこの乱れた風紀っ!!今あなたそこら辺にゴミを捨てましたね?きちんとゴミ箱に捨てなさいと
なんべん言ったら分かるんですか、あなたのその行為は我々の地球を汚しているのと同じですよっ!!」
「こっ、こらっ、誰が、お菓子やゲーム機など持ってきていいと言いましたっ、学園は輝くべき未来を担う立派な社会人になる為に
あらゆるものを勉強する神聖な場s…この私・桐生の注意を聞きなさーいっっっ!!!!」
今や知らない人は居ないと言われているほど学園中で有名になっている桐生くんの怒声が今日も響き渡る。
忙しい学園生活の中、乱れた風紀、というものを探し出す眼光は恐ろしい程鋭く、
彼に一度捕まえられるとただでは帰らせてはくれないと、ある意味評判だった。
私と氷海さんは注意されるような事はしていないけど「手から炎を出すんじゃありません」、「教室に花を咲かせるんじゃ
ありません」、「ヨーヨーを振り回すんじゃありません」と3人が目をつけられる事はしばしば。
その事で「罰として校長室の清掃を申し付けます」と言われてムカついた、と愚痴られたけど…それはきっと烈くんだけだろう。。
けれど、彼の存在のおかげで私達の大切な学園はこうして成り立っているわけで。
滅多に話をした事がない私はそんな彼にとても興味が沸いてきたのだ。
いた、いた。今日も乱れた風紀に長々とお説教している。ぶすっとして帰った生徒を尻目に見たあと、
勝ち誇ったような笑みを浮かべる桐生くんがようやく一人になったタイミングを見て思い切って声をかけた。
「あ、あの、桐生くん!」
「おや、これはこれはさん。こんな放課後に一体何の用d…!?”」
その時、私の手に持っている物を見た桐生くんの目の色がサッ!!と変わった。
「なっ……何なんですかその、いかにもお菓子だと思わせるような、目が痛いぐらいにカラフルにラッピングされた
破廉恥な小袋わっっっ!!!ここは勉強する為と様々な知恵を生かす為にある私達の学園。ゲームセンターのように
遊びに来る場所ではない事を貴女は知っているでしょうにっっ!!」
「う、…うん、知ってる、けど」
初めて怒られてしまった。案の定。桐生くんのお説教は一度始まってしまうと彼の気が済むまで
終わりがなかなか見えない、と聞くのでこれが厄介。さすが風紀委員は迫力が違う。私はただただ圧倒する他ないっ。
「あぁぁさん、貴女は風紀を乱さない正しく清潔な方だとばかり信じていたのに…私は失望してしまいましたよっ!
一度貴女にも風紀の神の天罰というものを味わってもらわないといけませんねっ、さぁ、今すぐ生徒会室まで…」
「ま、待って待って話を聞いてってば!;;今日桐生くんのお誕生日、でしょ?だからクッキー、焼いてきたの!」
「え、なっ……」
それを聞いてしばらく固まる桐生くん。ハッと我に帰った後、眼鏡の真ん中をツンと押し上げると慌てたように姿勢を正した。
あまりに予想外の事だったらしく自分の誕生日、と聞いた桐生くんの表情も口調も少しずつだけど和らいだ。
…何だかコントでも見ているみたいで一個一個の動作が楽しい。
「え、…えぇ確かに、私の誕生日は今日ですが…。何故、さんが知っているのですか?」
「ふふっ、プロフィールに書いてあったでしょ?だから、はい、素直に受け取って。」
「む、…むむむ……。」
何か言いたげに口ごもっていたけど流石の桐生くんも口喧しくダメです、なんて言い難いだろう。否か、応か。
彼にとって決死の選択。しばらく闘っていたけどやがて折れ、戸惑いながらもそれを受け取った。
今朝焼いたクッキーの入った小さな袋が桐生くんの手元に渡される。
そして「おめでとう。」と笑顔で一言お祝いしてあげた。
「…初めてですね。他の方から私の誕生日を祝われるなど」
「えっ、本当にっ?」
「今まで氷海さんと美結さんしか祝われる事は一度も無かったものですから。貴女みたいな方が今年初めてですね」
「ふふっ、それは桐生くんが知らないだけで密かにファンクラブなんて作られてるかもしれないよ?イケメンくんだからね。
たまには頭を少し柔らかくして、ゲームとか漫画とかにも触れてみたらそれこそ楽しいのに。輪がもっと広がるし、
桐生くんもっとモテるかも知れないよ?」
「くっ……、口を、慎みたまえっ!////ファンクラブ、など居ても居なくても私には無関係な話ですっ。
それに脳に直接悪影響を及ぼすそんな極悪なものは死んでもやりませんっっ、この学園の乱れた風紀を正す事が、
私の生まれてきた使命なのですから。」
こほんと上品に咳払いを一つされた。頭の固い人だとばかりイメージがあったけど、話してみると
意外と思った程ではなかったみたいで正直安心した。顔が少し赤くなっている。ひょっとして、かもしれないけど
照れているのだろうか。イケメン、と女の子から言われて本当は嬉しいくせに。と私はくすくすと笑ってみせた。
「じゃあさー、桐生くん。」
「何ですか。」
文句があるなら何でも聞きますよ。と言いたげに胸をしゃんと張ってわざと上品ぶって見せる桐生くん。
「もし誰かに私とデートして欲しい、と告白されたら…付き合ってくれる?」
「…っ…!!!!!なっ、なななっ……!!!////」
それを聞いた瞬間、本当に漫画やアニメみたいに真っ赤な熱が下から上昇し、あっという間に顔全体が赤くなった。
平静を失ったみたいに、今までの桐生くんとは思えないほどキャラがすっかり壊れてしまった。
「あ、あ、あ、貴女ねぇ、いつ頃からそんな、きききき際どい言葉を平気で口にするお方になったのですかっっ!!!
私をからかうのはいくらでも結構ですが、あんまり度が過ぎるとこっ、この桐生が、黙っていられませんよっっ!!!
ふ、風紀の神よっ、ここにいる乱れたさんに、て、天罰をーーーーーっっ!!!!!」
い、いやそこで風紀は関係ないと思う;;;オーバーなリアクションが見ていて思わず笑いが零れてしまう。
桐生くんってこんなに面白いキャラだったっけ。声に出して笑いたかったけど、それこそ怒られそうなので必死に堪えた。
そしてぜぇぜぇと息を整え、ようやく落ち着きを取り戻すと桐生くんの口から意外な言葉が漏れた。
「………ま、まぁ…その方がどうしても、とおっしゃられるのでしたら……別に付き合わないことはないですが」
「本当に!?」
「わ、私が理想だと思うような、決して風紀を乱さない方だったら、の話ですけど、ね。」
「じゃあ私、桐生くんの為にもっともっと頑張るからねっ!」
「はっっっっ!!!???////」
学園中に思わず素っ頓狂な声を響かせてしまったと悟った桐生くんは大慌てで再び眼鏡をツンと押し上げると
「…っ…と、ととと、とにかくっ、私は忙しいので貴女も早くお帰りなさいっ、ご両親が心配しますでしょうにっっ!」
それだけ言うとくるりと素早く背を向けその場から足早に離れた。あーぁ、また赤くなっちゃってる。
外見だけじゃ分からなかった桐生くんの意外とツンデレな一面が見れて、今日は何だか得した気分になった。
いっぱい話せて楽しかったな、と頬が緩む。その時、桐生くんの足がピタリと立ち止まった。
きっと恥ずかしくて見せられないぐらいの顔をしているであろう、そんな背中を向けたままのこの一言。
「さん。その……クッキーを、ありがとう。」
「ううんっ、どーいたしましてっ!」
一層緩んだ頬をそのままに、桐生くんに認めてもらうために頑張らなくちゃ!と気概になった。
-end-
★ポップン界の、丸○君!!(←
初めて彼を見てすぐさま浮かんだネタ。(笑)「おぉっ、イケメンくんや」と思って彼の曲を聞いてみたら
まさかのネタ曲。。。頭から吹いたというより、思わず大笑いしてしまったのは私だけでしょうか(死)そして大好きになった★(笑)
浮かんだ時と、書いてる時が楽しかったです♪桐生くんいいキャラ出してるわぁ(*´∀`*)
淀ジョルさん以来(かな?)ですねこういう変わったような曲は☆普通の曲よりこっちの方が私的には
インパクト強いので、CD手に入れたら真っ先に大ボリュームにして聞きたいですねそして家中に流したい(笑)
最近休日の朝はお弁当作りで忙しいですけど、出来上がった時は達成感を感じて、慣れたら意外と楽しいですね♪
そして安心して二度寝するという悪い癖が;;;次の休みは一体いつになるのかしら…(死”)
15.1.14