日曜日のお昼。彼女の家に向かうその途中で誰かに声を掛けられた。
「あら、ごきげんよう。よく見れば貴女は
さんじゃないの。」
「あっ、美結ちゃん!こんにちは。」
「これからどちらにお出かけ?」
「今日氷海さんのお誕生日だからプレゼント持っていくんだ!」
「あら偶然ね。私も氷海さんのお家にこれからお邪魔して私からの愛の贈り物をお届けに行くところよ」
「そうなんだ!じゃあ一緒に」
「いーえ、とんでもない。尊敬すべき生徒会長様様からお褒めの言葉をいただくのはこの私一人だけでじゅーぶんよ。
貴女なんかより先を越されてたまるものですかっ!」
美結ちゃんはそれだけ言うと女の子とは思えないぐらいの猛スピードで先々に走ってしまった。
「あっ、待って、美結ちゃん…;;;」
まさに学園一のご令嬢と言われても過言ではない、生徒会長を務める氷海さんのお誕生日。
敏腕書記の美結ちゃんをはじめ、沢山のファンが今頃彼女の家に押しかけてきているだろう。プレゼントを手に、自分も歩を早めた。
何せ学年や男女問わず大人気の氷海さんだから当日に渡し損ねた人も多いぐらいだとか。
無理に当日じゃなくてもいいのよ、と優しく微笑まれたけどやはりお誕生日当日の方が本人ももっと嬉しいだろう。
氷のようにクールで女の子からモテるほどかっこよく、生徒会長という肩書きを背負っている事もあって、私達の悩みを何でも聞いてくれる。
そんな氷海さんが私達と同年代とは思えないぐらい頼りがいあって、しかもスタイルも抜群。
私にとって尊敬、憧れの存在であり「氷海さん」と呼びたくなるのだ。
私の家よりもお城みたいで一段と大きい氷海さんの家の前。予想通りパステル君人形を抱えた人だかりで溢れていた。
玄関口で多少嬉しいような困ったような表情の氷海さんの姿。知らない学年の先輩や後輩も居て、これだけ彼女の人気が広い事を再び知らされる。
先に行っていた美結ちゃんの姿がない。あんな速さだから既にプレゼントを渡して帰った後だろう。美結ちゃんの驚くべきスピードも尊敬する。
ようやくプレゼントを渡し終えたグループが私の横を通っていく。彼女お気に入りのパステル君人形を両手一杯に抱えた氷海さんと目があった。
「あら、
。」
「氷海さん、こんにちは!」
「…お見苦しい所を見られちゃったわね。」
「ううん、羨ましいなぁって思ってるよ。だってそんなに大量の誕生日プレゼントを貰ったこと無いもの」
「ふふ、
は良くても私は毎年疲れちゃうわ。」
「じゃあ美結ちゃんから貰ったプレゼントも、もっともっと凄い物でしょうね!見るのが楽しみだなぁ。」
「?美結とは一度も会っていないわよ。」
「あれっ??おかしいな、さっき道端で会ったばかりだけど…もしかして買いに行ってる所かな」
そういえば最初に会った美結ちゃんは何も持っていなくて手ぶらだった。そんなこんな考えていたら…
「まぁここでお話するのも何でしょうから、どうぞお上がりになって。お茶を用意するわ。」
「わっ、いいの?あ、ありがとうっ!」
時々対応には出なくちゃいけないけど、と付け加えた氷海さんから案内される。いかにもお金持ち、の匂いを思わせるお洒落な家の中に
遠慮しながらもお邪魔した。
「どうぞ、ハーブティーだけど。」
「ごめんね。お誕生日なのに何だか悪いよ。」
「いいえ、遠慮しないで。」
かちゃり、と金属音を立ててカップが小皿の上に丁寧に置かれる。こんな庶民的な私が手をつけるのを躊躇うほどのお上品なカップから
味わった事がないハーブティーの良い香りが漂う。そして傍らに美味しそうなビスケットが置かれた。
私の膝下に抱えられた氷海さんへの感謝を込めたお誕生日プレゼント。目の前に大事に置いた。
何かしら、と青く透き通った瞳がキラキラと輝いている。それを袋から取り出した時、氷海さんが呆気に取られたように口元に手を当てた。
それは、
「まぁ…パステル君、」
「うん。そうだよ。ちなみに私の手作りなんだ」
「えっ、
がっ?」
目を丸くしてこれには驚いたと言うような表情を見せた氷海さん。氷海さんとお揃いのセーターを着せ、腕章も付けるという細かい作業が苦労した。
そしてパステル君の服の胸元にキラリと輝いた雪の結晶を型どった小さなブローチ。お店やゲーセンのUFOキャッチャーで見るような
見事な出来栄えまでには行かなかった。けれど氷海さんは綺麗な長い髪をさらりと掻き上げてから、私の作ったパステル君人形を手に取り
少々戸惑いながらも愛おしげに眺める。頬を淡いピンク色に染めた顔がとても可愛らしかった。
「店先で一生懸命パステル君を眺めていたから不思議に思っていたけど…この為だったのね。すごい…才能あるわよ
。」
「そ、そこまでほどじゃないよ。…照れちゃうな」
「いいえ、私には真似出来ないわ。……あらやだ、どうしましょう。貴女のお誕生日、何か考えとかないと悪いわね。」
「ううん、そこまで焦る必要無いし、無理に凝ったものでなくてもいいよ!お友達として当然の行為だし、喜ぶ顔が見れれば
私は充分満足だから。」
「…
……。」
目を細めて私を見つめる氷海さん。パステル君人形を大事にそっと傍らに置くと、細い両腕が伸びてきて優しく抱きしめられた。
大人っぽくてキツくもない香水の甘い香り。氷海さんらしくないその行動に驚きを覚えつつも、胸の間に顔を埋められて自然と頬が熱くなった。
「氷海さん…?」
「貴女みたいな心優しい人に会えてずっと嬉しく思っていたの。…本当にありがとう、
。これからも私の大好きな友達で居てね。」
まるで告白されたようなその言葉に一瞬だけ目眩がした。うん、約束だからね。と呟いて彼女を優しく抱き返してあげた。
…時。どさり。とドアの方で何かが落ちる物音がして目をやると、大量のプレゼントを床に落としたまま呆然と立ち尽くしている
美結ちゃんがいつの間にかそこにいた。まるで信じられないものを見た、というように唇がわなわなと震えていた。
「あら、」
「あ”っっ…み、美結ちゃんっ……;;;」
「…っ……あ、あ、あ、あなたたち、そんな百合な関係だったなんてっっっ………ゆ、許さないわ
さーーーーーんっっっ!!!!!」
「いやぁーーーちょっと待って、落ち着いて美結ちゃんーーーーー!!!!;;;;」
じゃれ合う(?”)私達の光景を見て、パステル君人形を胸に抱いた氷海さんがくすり。と微笑んでいた。
-end-
★言っておきますが、mikko.は決してそんな趣味ではないので(断言)イラストでも何回か描いている氷海さん♪まぁ彼女が描きやすいから
という理由からですけども(爆)ひょっとしたらつぎドカ族の中で氷海姉さんが一番好きかもしれませんねっ(*´∀`*)
っていうかさすがラピストリアのメインキャラでもあって4人それぞれが魅力的でかっこいいですね!今後もどうなるのか楽しみですウフフ
…やっと氷海さんまで書けました;;;2月が終わるまでにまだまだ書きたいキャラがたっくさんいるのにこんなのろのろゆっくりじゃ
余裕で間に合わんぞぃ;;;;;(いやいやいや)
15.2.13