最近になってからよく見かけるようになった。


遠くから見守るだけでは満足できなくなった




愛おしい、君の姿を。









世間は冬休みだろうか、近くで子供たちのはしゃいでいる声が聞こえて来てせっかくの安眠を妨げられた。
しばらく騒がしくなるな、としびれを切らしながら真っ白い世界に久々に顔を出すと
寝ぼけていた眼を一瞬で目覚めさせた存在が子供たちの中心にいた。
皆で雪だるまを作ったり雪合戦を楽しんでいる。そして一日中遊んだあと子供たち一人ひとりにマフラーを手渡し、
笑顔で別れを告げながら手を振っている。名前は知らない一人の女性。どうして見るだけで体が自然と温かくなるんだろうか。
未だに分からないし誰にも相談したことない、この気持ち。彼女の優しいあの笑顔が今でも忘れられなくて
その日以来遠くから傍観している僕がいた。



お姉ちゃーん、ばいばーいっ!」



彼女の名前を初めて知ったのはつい最近のこと。 、と心の中で何度もそう呟いた。
それから何週間も経たないうちに、いつの間にか自分の誕生日を迎えてしまった。もちろんその日も はいた。
毎年マサムネとナカジにしか祝ってもらっていない僕の誕生日。今日が僕の生まれた日だと言えば彼女もお祝いしてくれるだろうか。
何を言っているんだろう。と頭の中で打ち消す。知っているのはここによく来る事と名前だけで、まともに話をしたことがないなのに。
暗いし無口な僕ではさすがの も相手になんか出来ないだろう。それにいつまでもこんな行為を繰り返していてばかりいるなんて
まるでストーカーみたいじゃないか、僕。


と考えていたら偶然ばちっ、と目が合った。
まずい、気づかれた、と直感し、すかさず目を逸らし慌ててその場から立ち去ろうとしたら



「エッダくんっ!」



…え…?僕に、話しかけてきた…?そして名前を知っていることに二度驚き、足がぴたりと立ち止まる。
恐る恐る振り向くとこっちに向かってタタタと小走りに近づいて来る の姿。戸惑いと緊張が急速に高まってきた。



「あなた、エッダくんだよね?」

「…え、なん、で」

「さっき遊んでいた子達から聞いているからずっと知っているの。もちろんあなたがいる事もずっと前から知っていたんだよ」

「あ…そう、なんだ…」

「私が話しかけようとしたらいつの間にかいなくなっちゃうもの。ふふっ、遊んで欲しかったら自分も混ぜてって言えばよかったのに。」

「ご、ごめん。決して、怪しい意味で見ていた訳じゃぁ…」

「そうだっ、エッダくん!」

「え、何?」

「今度は、私と一緒に雪遊びしよっ!」

「(…………えっ………?)」



きょとんとなった。嘘、と思った。僕の手を引っぱっている所から見ると冗談じゃない事が分かり、体が硬直してしまった。
見ているだけの存在だった君が今、僕の目の前にいる。信じられない気持ちで一杯だった。ただ曖昧な返事をすることしか出来ない。
…いつもより体が物凄く熱く感じる。



「いい…の…?」

「うん!遠慮しないで、ほらっ、早くこっちにおいでっ!」

「……。////」



黙ってこくん、と首を縦に振ることが精一杯だった。



時が流れるのを忘れて、二人だけで雪遊びをした。僕から話すことは出来なかったけれど、大抵は彼女の方から
話してくれることが多かった。傍にいるだけで、顔全体まで熱さが行き届いている。鏡を見たらとんでもないぐらい真っ赤になっているだろう。
「こんな僕で良かったんだろうか。」と少しの不安もあった。けれどいつか僕の方にも笑いかけて欲しいと願っていた無邪気な笑顔が
こうして近くで見られるだけで満足だった。意識していなくてもつられるようにいつの間にか笑っている僕。―――楽しい。


全部、全部、君のおかげで。















夕焼けの色が辺りを包み、真っ白い大地がオレンジ色に染まって綺麗だった。夢のような時間は
どうしてこう過ぎ去るのが早いものなんだろうか。



「今日はすっごく楽しかったね、エッダくん。」

「うん。」



すっかり雪まみれの顔になった が僕に笑いかけてくれる。「僕も楽しかったよ。」と素直に言えばよかったのに
相変わらず短い返事しかできない。たった一言だけでいいのに。こんな簡単な事も出来やしない僕は男として失格だ。



「エッダくん、はい、これ!」



が鞄の中に手を入れ、ごそごそと何かを探ると取り出した物を見せてきた。
それは、子供たちにいつも渡しているあのマフラーのサイズの大きいものだった。



「あなたに渡そうと思って、一生懸命編んできたの」

「…これを、僕に……?」

「巻いてあげるね。」

「!…」



がちょっと背伸びをして分厚いコートの上からマフラーを丁寧に巻いてくれる。近い。熱い吐息が白くなって上へと消えていく。
やっぱり手製だったんだ。そう思うと寒さなんて感じられないぐらい、暖かさが倍以上になった。
まさか、くれるのだろうか。と を見ると首を少し横に傾けてにっこりと笑って見せた。


―――可愛い。これが僕の率直な感想だった。



「じゃあねエッダくんっ、また一緒に遊ぼうねっ!」

「…あっ、あのっ、 …」



………。「ありがとう」と言うタイミングを逃してしまい、 は夕日の中に溶けるように消えてしまった。
…明日もまた会えるかな。もし会えたら、その時はちゃんと伝えなくては、と強く心に決めた。


祝いの言葉はいらない。 からくれたこの宝物だけで充分だった。温かいプレゼント。大事に、そっと手を添えた。
今、嬉しさでこの胸が張り裂けそうだ。今日はなんて最高で、幸せいっぱいの誕生日だったんだろう、と。



-end-






★む〜〜〜ん、「温かい」と「暖かい」の区別が未だに分かりません……(?_?)←そこかいっ!
無口であってそして恥ずかしがり屋のエッダくん、なかなか考えやすかったです♪もっともっとからかうと反応が面白そうだ、へへへ(いじめんなし)
最近何かと連続出勤があって暇が無くてしんどいです…orzちなみに本日は8 日出勤の内のようやく6日目です、鬼かっっっ、俺の会社は!!!ヽ(`Д´)ノ

今回の「雪だるま作ろう」、Dさん小説のれりごー♪…「ありのままで」、「生まれて初めて」………
アナ雪が見事に絡んでますね(笑)


14.12.12