━━━━出会わなければ良かった。
お前なんかと。
だって
こんな気持ちにさせたから。
お前のその笑顔を見るだけで。
・・・どうにか・・・なってしまって・・・心が・・・苦しくなりそうだ。
素顔を現したもう一人の自分が唆す。
『いい加減本当の事を言えよ。いつまでもそうやって隠すつもりかよ?』
・・・だから・・・。
・・・責任・・・取れよな。━━━━
「One's Real
Intention」
「・・・・・・・・・・・・ふぅ・・・。」
東京都江東区。気持ちいいぐらいの風が吹く、久々の晴天。
俺は愛用の目隠しを覆いながら早歩きで ”あいつ” の家の前にやって来た。
・・・溜息をひとつこぼして。
「・・・あいつらから逃げるために来たんだが・・・。ちと早く来てしまったな・・・」
━━━━それは、ここに来る約15分前━━━━
━━━━「だーかーら、なんべんも言ってんだろ?お前があの子を好きだって事だよ。」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・はぁ?」
とある喫茶店内。手元のコーラをストローで何気なくかき回した手を止め、周囲の人間を上目遣いで睨んだ。
その周囲の人間とは・・・
「Dの奴、この相談を俺様に持ちかけてきてなぁ。どーう思うよ皆の衆???」
とニヤニヤ笑いながら他の人間に言う独眼竜の旦那・・・マサムネ。普段はあの暑苦しいような格好だが
私服に着ていた。さすがにあんなカッコで街ん中歩くのは怪しまれるだろう。・・・夜ならまだしも。
「へーーーーぇマジかよ!!?ちょっと、俺ら、それ初めて聞いたんだが!?Dもなかなか可愛い奴だな♪」
と言うのは同じDes家の六の旦那。・・・そこまで興奮気味にならなくてもいいだろ。
「・・・お前みたいな人間が一人の女の子に・・・やるもんだぜ。」
と見直したように言うのは街の徘徊などでよく見かける蔵ノ助の旦那。タバコを吹かしながら俺を見る。
「・・・まぁ人誰しもひとつぐらい恋するのは悪い事じゃないぜ?けど・・・確かに意外だな。。」
と恋愛話に慣れているホストのお兄さん・・・ロミ夫の旦那が言う。・・・意外で悪かったな。
俺はもう少しでテーブルを拳で叩きたくなる衝動を抑えながらもなんとか冷静に言う。
「・・・だからよ・・・好きとか恋とかそんなもんじゃねーよ。なんでそんな展開にならなきゃなんねーんだよ。・・・
・・・俺の人生の中で煩わしいだけだ。俺はギター一筋なんだよっ」
とそっけなく言うと残り少ないコーラを一気に飲んだ。
「まぁそう言うのもいいけどなぁ。果たしてそうなのかD??お前はいつも素顔をそうやって隠すように
本音も隠すからなぁ。」
六の旦那が言う。あとの連中も深く頷いた。
「・・・・・・。」
・・・・・・・・・確かに言われたとおりだ。俺はつい黙りこくってしまう。
「それで、その子とはどういうきっかけで知り合ったんだ?」
ロミ夫の旦那が質問してくる。
「・・・・・・・・・あいつとは・・・。」
・・・俺のライブに欠かさず来ている、いわばファンである。俺もそいつの顔をよくよく見かける。
ただそんな関係だったがある時、ライブ終了後にそいつと偶然鉢合わせになり、
互いに驚いてしまった。そいつは俺と出会って嬉しいのか興奮気味に話し込んでしまい
「せっかく出会えたんですから、二人で何処か行きたいですね!」
・・・その一言で俺達は会う関係になってしまった。さすがの俺も「・・・・・は?」となって驚いたが。
ドキッとなってしまった・・・は、気のせいだ、きっと。
ちなみにそいつは ”
” と名乗った。
俺の話を聞いた蔵ノ助の旦那が恐ろしい事を言った。
「ふぅんなるほどな。・・・ちなみに━━━━その子とは今日で3回目だろ」
「Σはぁぁっっ!!!???」
「なんで知ってんだ」とバッと顔を上げる。その一言が周囲を余計厄介な事にさせる。
「マジかよ蔵!!?・・・だいぶ会ってんだなぁ。どうりで俺様に恋の相談をして来たわけだ★」
「だから恋じゃねぇって・・・!!」
「そりゃ、色々徘徊してるわけだからお前ら二人いるとこ見かけるぜ。・・・いや
見てしまったとでも言おうか」
「・・・けどそれ程その子のことが嫌ってわけじゃないんだろ?」
「Σいい関係になってるじゃないか!!!そろそろ告ったらどうよ?せっかくロミ夫もいるんだし
モテる男になれる有り難い方法教えてもらったらいいじゃねぇか♪ますます好感度がUPだぜぇ?
なぁイケメンさんよぉ☆」
「ばっかおまっっっ・・・・・」
六の旦那が照れている(ようには見えないが)ロミ夫の旦那の背中をバシンと叩く。
「そうだぜそうだぜぇ?早いとこ告らねぇと後悔するぜぇ??」
マサムネの旦那がさらにニヤニヤする。その場の雰囲気が盛り上がっているが
俺は激しく後悔した。・・・あぁこんな奴らに話すんじゃなかった、と。
「・・・・・・っ・・・だーっ、もういいっっっ!!!二度と相談せんッッッ!!
俺は行くぞッッッ!!!!」
ついにいてもたってもいられなくなり、素早く席から外し、この場から去ろうとする。
「安心しろよ俺たち尾行してカメラで撮ろうたぁ全然ないからなー」
「楽しいデートをな〜★★★」
「Σうるせぇッッッ!!!!!!!」
それだけ吐き捨てるとさっさと逃げるように店から出て行った。━━━━
━━━━そして今に至るわけだが。
「・・・
冷静に考えてみれば・・・旦那達の言ってる事は全部・・・間違いじゃねーけども」
むしろ図星である。全く自分でも情けねーぐらい、俺の考えてる事はなんでもお見通しなわけか。
よっぽど分かりやすいんだな・・・俺は。「ハァ・・・」と、もう一つ溜息をつく。
・・・そういえばあいつと会ってから全く大した事していない。ただ単に会って、ただ単にどっか行ったり飯食ったり、
ただ単に別れて━━━━ただそれだけの虚しいような日ばかりだった。・・・あいつは満足げに
いつも笑ってくれていたが。
・・・あいつを待っている間、確かに旦那に言われた通りに男を磨こうかな・・・俺はロミ夫の旦那みてーに
男力が無ぇから、そうすればあいつも・・・・・・などと余計な考えが頭ん中を駆け巡ったが・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
いや、やっぱやめとこう。俺らしくない。俺はギターに生きるロッカーなんだからな。
『自分に嘘は良くないぜ、嘘は。』
・・・・・・・・・・・・・・・・。
ところで約束の時間が早すぎたせいか、当然家から出てくる気配がない。あいつの部屋ん中とか
どうなってんのか見てみたい・・・と、ふと思ったが、いやいや変態かっつの・・・。。。
そんなどうでもいい事を考えていたその時。ドアが開いた。
━━━━ガチャ。
「!!きゃっ、ディ、Dさん!?」
「よぅ。
。」
「び、びっくりしました〜;いきなり目の前にいるものですから〜;;もしかして
待たせちゃいました?」
「いや。早く来てしまっただけだからな。逃げるために」
「逃げる??」
「いや、なんでもねぇ。・・・ほら、とっとと行くぞ」
「はいっ!今日も準備万端ですよっ!」
彼女・・・
もこの日を楽しみにしていたかのようなバリバリのテンションだった。
嬉しげに俺の後をついて行った。
「今日もいい天気ですね〜、そういえば私達が出かける時は必ず晴れですよね。」
「・・・あぁ。不思議だな。」
「ふふっ、私の日頃の行いか、それとも私が晴れ女だからかなっ?」
「さーて、大嵐になる前に帰ろかな。」
「・・・もーぅDさんったらいつも縁起の悪いこと、平気で言うから〜」
・・・そんな他愛もない会話を繰り広げながら、
は俺の前を軽い足取りで歩いて行く。
そんな歩き方すんなよな。・・・可愛すぎるから。
「冗談冗談。・・・お前さ、そろそろ俺に敬語使うのやめてくれないか」
「えっ??」
「だってさ、俺たち付きあっt・・・」
「Dさん?」
「・・・っ・・・出会って、もうこれで3回目だろっ?それに敬語使われるのあんまり
好きじゃねーんだよ。普通に接してくれた方がむしろいい。」
「・・・そうですか、 じゃぁよろしくねっ!D!」
「な”っっっ・・・いきなり馴れ馴れしいなっ・・・つか、早ッッッ;;;」
「だって、普通どうりに話してくれって言ったじゃない??今まで堅苦しかったから
やっぱこんな会話じゃないと!」
「はっきり言ったなこいつ・・・」
「じゃぁいつもの所へ早く行こ行こっ!」
「おいおい引っ張んなってっ・・・」
が嬉しそうに俺の腕を引っ張って行く。・・・本当なら手を引いて欲しかったんだが・・・何言ってんだ俺。
こうして傍から見るとまるで・・・・・・
いや、まさかな。こうして俺たちはいつもの場所へと向かうことになった。━━━
「とーうちゃく!」
「・・・お前も飽きないな〜本当に。。」
やって来たのはとあるゲーセンだった。ギターを使って音楽ゲームを楽しむ、いわば・・・
「ギタフリ」の前に来た。よくよくこれを使うのは彼女なりの理由があるからだ。
「私ね、Dみたいなかっこいいロッカーを目指す為に、Dがいない時も一生懸命練習してんだよ!
ほら、女性ロッカーもなかなかいいじゃない?」
と、
が目を輝かせてそう語る。俺に憧れて夢を追うのは悪くないし、・・・
何より嬉しかった。しかしいきなりデスヴォイスを出し始めたらさすがの俺もドン引きするが。。
「なるほど確かにな・・・って、Σをい、ちょっと待て。本物のギターを使わんと意味ないだろが。;」
「という事で!いざ、真剣ガチバトルだよ!!どっちかが負けたら今日の昼ご飯奢りね!」
「Σ話聞けよ;;;フン、どーせお前が負けて奢る運命になるのはすでに目に見えている」
俺は苦笑して見せる。この前もその前の日も超高い昼飯代を泣く泣く払ってくれたものな。
見てて面白かった。
「ううん、あれからいーっぱい特訓したんだから!!次に奢る運命にあるのはDの方なんだから!!」
「ハッ、どうだか。」
「ふふんそう笑ってられるのも今のうちなんだからねっ」
・・・ちょうど人が少なく筐体を独り占め(ふたり占め?)できる状態で、本当なら
こいつが一人ではしゃいでる所を後ろから見ていたかったのだが(反応とかが面白い為)バトルを余儀なく
されてしまった。こうして毎度ながらの二人の熱いギターバトルが開幕された。
「ウソっ、ま、また負けたァ・・」
「相変わらず下手くそだな
。」
「Dは手加減無さすぎるよ〜;;」
「お前が弱すぎるからだ。こんなレベル、俺にとっちゃ全然軽いほうだぜ?」
「・・・うぅ〜、も、もう一回!もう一回!次こそは絶対負けないんだから!!」
「おいおい、あんま欲張んなよ・・・」
「いーのっ!Dに勝つまでは止めないんだからっっ!」
・・・それでも
はとても楽しそうだった。悔しがる姿、泣きべそかく姿、はしゃぐ姿、
そして・・・笑う姿。
全くこんなに俺を・・・楽しませてくれる。笑わせてくれやがる。ちっとは自重しろよ。
お前が・・・可愛く見えて仕方なくなるだろ・・・。━━━━
━━━━5時間経過。外。
「・・・・・・・・・・・・・・ごめん、D・・・・・・・」
「あ?」
「・・・使い込みすぎて奢りのお金が無い。」
「ねーわwwwwwwwwwwwwwww」
指が痛くなるぐらい長時間続いたギターバトル。結果は予想通り、
の連敗であった。
・・・きっと上の文章に呆れと・・・そして怒りが混ざってるだろう。しかし呆れの方が大きすぎて
次のまともな言葉が出なかった。
「・・ったく、・・・欲張った結果がこれだな」
「うぅ”・・・Dが強すぎるのが悪い・・・」
「Σいやいやお前だろ。・・・で、どーすんだ?奢る運命は俺の方にあるとか言ったのはどこの誰だっけ?」
「くぅ・・・・;;」
悔しがる
を見ていて面白い。
思わず吹き出しそうになるのを何とか堪える。
は財布の中身をいじりながらもすがるような目で
こっちを見てくる。・・・何か言いたそうな顔だな。
しばらく俺も負けじとそんな
を見ていたが、諦めたように「・・・ふぅ・・・」と溜息をつくと
適当な金を渡して言った。
「・・・ほら、これで何か適当なもん買ってこいよ。」
その途端、
の目が一気にぱっと輝いた。
「わぁっ!いいの!?ありがとうD!!えっと、なんでもいい!?」
「(分かりやすい奴・・・)あぁ、お前の好きなもんでもいい」
「じゃぁ、ラーメン買ってくるね!」
「ラーメンなんかテイクアウト出来んのかよ・・・」
「ふふっ、冗談だよっ」
は嬉しげに俺の金を受け取ると再び店内に入っていった。
の走っていく姿。
彼女の髪が上下に綺麗に揺れる。
・・・・・触れてみたい・・・。いやいやいやだから変態かっての・・・。
・・・遅いな・・・・・・。飯買うのにどんだけ気合入れてきてんだあいつは。
・・・そんな
を待ってずいぶん長いあいだ経っただろうか。俺に別の声がかかった。
「あれ?Dちゃん??」
「!!誰・・・って、ドナ!?」
「何だよ〜せっかく久しぶりに会ったのにそこまで驚かなくてもいいじゃんか〜」
俺のライバルのダミやんの追っかけを未だ飽きずにやっているオーストリア出身のお嬢様・
ドナだった。ドナは俺を見かけるとスタスタと近づいてくる。
「お前なんでこんなところに・・・神出鬼没だな本当に」
「へへへダミやん様のライブをたっぷり堪能して今帰るとこなんだよ〜♪Dちゃんも
見たら良かったのに〜迫力あってすんごくカッコよかったよ」
「フン・・・死んでも見に行くかっての・・・」
「ところでこんなとこで何ボーっと突っ立ってたの??・・・・・・・・・あ〜、分かったぁ。
彼女さんとおデイトでしょっ!!?それでDちゃんの好きな物を彼女に買いに行かせて・・・」
「・・・!!!!・・・Σばっっっっっっか、お前っっっ・・・・・・・・・!!!!んなわけっっ・・・・・」
「わ〜、やっぱり〜。Dちゃん顔真っ赤だよ〜?」
「うるっっ・・・せぇよ、つか、誰から聞いたんだよそんなの!!!」
「Dちゃんの友達が僕に話してくれてたよ。Dくんに最近可愛い彼女が出来たらしい!!って。」
「・・・・・・・・・ブラウンの奴らかっ・・・(後でぶっ飛ばしたるッッ・・・)」
「Dちゃんもなかなかやるねぇ〜♪僕、見直しちゃったよ。早くお嫁さんにして貰ったらいーのにー♪」
「なっっっっ・・・・・・・・・に、言ってっっ・・・!!!!変なこと言うんじゃねぇよっっ!!!」
「うわ〜〜〜赤くなってるー、Dちゃんったらやっぱりウブでシャイで可愛い〜♥」
ドナは俺をからかうようにきゃっきゃと肩や背中をなんべんも叩いてくる。
「いーかげん早く認めちゃいなよ!でないと可愛い彼女さんから、いつか逃げられちゃうよぉ〜??」
「だからっっ・・・・・・あいつは彼女でも何でもねぇって言ってんだろがっっ!!!!」
「まーたそんな冷たいこと言って〜〜って、あ。」
「!!!!!・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」
・・・いつの間に俺らの会話を聞いていたのか、そして居たのか、
の姿があった。
飲み物と食い物を両手に持ったまま俺たち二人を信じられないような眼差しで見つめ、口を開け、・・・呆然と立ち尽くしている。
そして・・・手に持った物をぐしゃっと地に落とした。
やばいっ・・・この・・・展開はっっ・・・
「あ、えーと、君が
ちゃん??ども、こんにちは〜」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・っ・・・そっかぁ・・・そういう・・・事だったんだねっっ・・・分かったよっ・・・」
声も肩も震えている。
はそれだけ言うといきなりどこかへと走り出した。
「な、何がだよ・・・って待てっっ!!
!!!!」
「あっっっ、
ちゃん!;;・・・なんか変な勘違いされちゃったね。。」
「・・・っ・・・あ”ーくそっ・・・」
俺は他人事のように言うドナを放っておいて急いで
の後を追った。━━━━
━━━━━━━━いた。
辺りはすっかり夕暮れ。人通りの全く無い道端のベンチの上で。予想どうりそいつは泣いていた。顔を手で覆い、
声を上げながら。・・・涙を数滴落としながら。
「
」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」
声をかけても一向に俺の顔を見ようとしない。ただ延々と泣き続けている。
・・・・・・・・あ”ー・・・これだから女の子ってのはめんどくせぇ。俺はまいったように長い髪を
掻き上げた。
「・・・お前さぁ・・・解釈が早すぎだっての。しかも違うって・・・」
俺はため息混じりにそう言うと
の隣に座った。・・・くっつくくらいに。
がようやく喋り出す。・・・泣きじゃくりながら。
「・・・・・・・・・・っ・・・・・・何がっ・・・・違うの・・・?」
「 あ?・・・」
「あんなにっ・・・仲良さそうに話してたじゃないっ・・・・・・!!」
「・・・っ・・・・・・だからあいつは」
「・・・っ・・・私と話してる時はいつもそっけなくてっ・・・私がほとんど一人で盛り上がってるみたいでっ・・・
さっきの女の子と話してる時は、すごく会話が弾んでたじゃないっっっ・・・!!!!それにっ・・・
私よりっ・・・可愛いしさっ・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」
「・・・さっきの会話聞いちゃってっ・・・楽しそうな所見ちゃって・・・・・・すごくショック受けちゃった・・・だからっ・・・
私なんかと居ても・・・
・・・・・・楽しく、なかったんだねっ・・・・・・・・・。」
━━━━・・・・・・違うっ・・・・・・。
「・・・っ・・・だから話を聞けってっ・・・」
「もういいよっ・・・・・・。」
は怒ったような口調でそう否定すると、俺の傍を
静かに離れた。
「Dって・・・滅多に顔を見せないのとおんなじように、本当のこと・・・言わないもんねっ・・・。
これでようやく分かったよっっ・・・。Dのことがっっ・・・・・・。」
「!・・・・・・・・・」
━━━━・・・違うっっ・・・・・・。本当はそんなのじゃない。・・・そっけないのは・・・お前に緊張してるからだ・・・
顔を見せないのは・・・自分に素直に、・・・なれないからなんだよっっっ・・・
『だったらそう言えよ。そのままでまた一日終わるのか?』
・・・・・・・・・・・・っ・・・・・・・・・・・・。
「・・・・・・・・・っ・・・・・・
・・・頼むから泣くなよ・・・ こっちまでっ・・・気が狂ってしまうだろうがっ・・・」
俺はついにやけになり、泣いている
の顔を無理やり持ち上げると━━━━
「・・・っ・・・!!・・・んっ・・・・・・ぅっっ・・・・・・・。」
「・・・・・・・」
━━━━初めての、キスだった。
の唇の柔らかい感触。・・・俺は、こんな性格だから・・・こんな男だから・・・・・・一緒にいたって
が傷つくだけだ。・・・・・・もう・・・忘れて・・・・・・欲しい。嫌われても・・・構わなかった・・・。
・・・そしてどれだけ長いキスを交わしただろうか、俺はそっと静かに唇を離すと・・・
「・・・・・・これで・・・許してくれよな?・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・っ・・・・・・・・・・・・・・。」
は涙で真っ赤になってしまった顔で俺を見つめてくる。しばらく言葉を出さない。そんな彼女を放って行くように、
素早く傍から離れた。・・・・・・
と一緒にいたくない・・・。そんな気分だ。
「・・・悪かったな今日は。やな気分にさせちまって。・・・じゃな」
━━━━グイっ。
俺が去ろうとした直後。
が俺の服を引っ張った。・・・俯きながら。
「・・・あんだよ。」
「・・・嫌だ・・・。・・・お願いD・・・帰んないで・・・・・・」
「・・・帰んなって・・・もう外暗いし早く帰んないとお前、危ねーだろが。」
「いやだっっ・・・・・・。・・・Dと・・・もっと、一緒にいたいっ・・・・・・・・。」
「なっ・・・・・・・・・んでだよっ・・・。もういいんじゃねーのかよっっ・・・・・・。」
するとは俺の服を強く引っ張ると呟くように、言った。
「私っ・・・・・・Dのことが・・・・・・ずっと、・・・ずっと・・・・・・好きだったからっっっ・・・・・・」
「・・・・・・・・・は?・・・・・・・・・・・・・・・」
一瞬、自分の耳を疑ってしまった。・・・・・・・・・が・・・・・・俺のことを・・・・・・・・・・・・?
・・・・・・・・・好き・・・・・・・・・・・・・だって・・・・・・・・・・・・?
自然と顔が熱くなる。慌ててそれを拒否した。
「・・・・・・っ・・・い、・・・いや・・・・・・冗談・・・・・・・・・だろ・・・・・・?」
「・・・・・・・・・っ・・・・・・・・・。」
は俯いたまま、首を激しく左右に振る。同時にまだ溜まっていた涙が飛んだ。俺の服を引っ張る力が
ぐっと強くなる。
「・・・っ・・・冗談なんかじゃ・・・・・・無いっっ・・・・・・・・よっっっ・・・。・・・・・・本当っっ・・・・・・だもんっっ・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・っ・・・・・・・・・・・・・・・。」
服が破れるんじゃないかぐらい、さらに強く、強く引っ張られる。離そうと、しない。
「かっっっ・・・・・・・・・からかうんじゃねーよっっっ!!!!・・・俺は帰るっっ・・・からなっっ!!」
「待ってよDっっ・・・行かないでよっっっ・・・!!!」
背を向け逃げるように去る俺の背中を、がいきなり抱きしめてきた。
━━━━ぎゅっ。
「・・・っ・・・!!!!!よっっっ・・・・・・・・・よせっ・・・・・・っっっ・・・・・・!!!!」
俺は慌てて振りほどこうとしたが・・・体が動かない。が俺の背に顔をぴたりと寄せているのが・・・伝わる。・・・離さない。
自分でも情けないぐらい、心臓が大きく鳴り始めた。・・・何だよっ・・・この・・・感じは・・・・・・・・・。俺は・・・一体っっっ・・・。
俺はそのまま動かないでいてしまった。・・・が俺の心臓を余計に飛び上がらせるような発言をした。
「・・・・・・・・・・・・Dの家に・・・・・・行っても・・・・・・いい・・・?・・・」
「・・・っ・・・・・・だっっ・・・・・・だめに・・・決まってんだろっっ・・・・・・!!!」
「お願いっっ・・・・・・行かせてよっっ・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・っ・・・・・・・・・・・・。」
・・・子供のように顔をうずめる・・・・・・・・・・・・・
・・・あぁもう・・・・・・俺は一体・・・・・・どうすれば・・・いいんだよっっっ・・・・・・・・・。
気が付けば辺りはいつの間にか暗くなり、周りが見えてない状況だった。回避は出来ない。
・・・俺に残された選択肢は・・・・・・一つしか無かった━━━━
━━━━「・・・・・・・・・・・・・・・・・で。」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・。」
「もう・・・・・・満足しただろ?・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」
俺の部屋内。結局こいつの我侭で自分の部屋にまで連れてきてしまった。
・・・・・・今まで女を部屋に入れたことなど・・・・・・一度も無いのに。俺と
は特に何をするわけもなく
互いにただ黙って向かい合って座っているだけだった。しんとした静寂が流れる。
は相変わらず俯きながら正座をしている。一向に
帰る気配は無かった。
「・・・親御さん心配してんだろ」
「・・・いいの。うちの親、共働きでいつも真夜中に帰って来るから・・・」
━━━━帰ってくれよ・・・・・・━━━━
「・・・っ・・・だからってっ・・・まさか俺ん家に泊まるとか言うんじゃねーだろうな?」
「・・・・・・・・・・泊まらせて。」
━━━━頼む・・・から・・・・・・これ以上俺を・・・・・・苦しませないでくれっっ・・・・・・━━━━
「・・・・・・おいおい待てよっ・・・俺がお前の親に怒られちまうだろうがっ・・・今からでも遅くない。
送ってやるよ。・・・」
「・・・わたしね・・・」
━━━━そんな目で俺を見つめてくんなよ。・・・・・・・・・笑うなよっっ・・・・・・・・・━━━━
「・・・Dにあの時初めてキスされて・・・びっくりしたけど・・・ ・・・すごく・・・・・・嬉しかった。・・・」
「・・・っ・・・あれは・・・お前に対するほんの慰め程度だよっ・・・・・・あぁでもしねぇと許してくれねぇと
思ったからっ・・・」
『嘘をつけ。素直に言えよ』
━━━━・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。━━━━
━━━━・・・俺だって・・・お前に初めて抱き締められたとき・・・・・・・・・・本当はっっ・・・・・・━━━━
「・・・・・・敬語やめろって言われた時も・・・本当は・・・・・・すごく・・・嬉しかったんだよ・・・。大好きなDと・・・・・・
やっと・・・・・・恋人に・・・・・・なれたみたいでっ・・・・・・。」
「!・・・・・・・・・・・・」
━━━━・・・・・・・・・・・・恋、・・・・・・・・・・・・人?・・・・・・・・・・・・・・・━━━━
「・・・・・・今日は・・・今までの中ですごく嬉しくって・・・・・・最高の日だった。だから・・・ ・・・・私、Dが帰れ言っても
帰らないし・・・もっと、ずっと・・・・・・ずっと・・・・・・・・傍に、一緒に・・・いたい・・・・・・・・・。Dが・・・・・・欲しい・・・・・・。」
━━━━・・・・・・・・・・・・・・・っっっ・・・・・・・・・・・・・。━━━━
『早く、自分に正直になれよ。お前だってが・・・欲しいくせに』
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
・・・・・・なんでだ・・・・・・・・・?
なんでこんなに激しく・・・・・・心臓の鼓動が脈打ってんだ・・・・・・?あぁもう・・・・・・俺は一体・・・・・・どうなっちまったんだよっっ・・・
こいつと出会った時から・・・・・・俺はおかしくなりかけているっ・・・。本当は・・・ギター一筋に生きるつもりだったのにっ・・・。
俺に向かって目を細めて笑っているお前を見ていると・・・・・・余計に・・・・・・・・・。
本当の自分は・・・・・・・・・こいつを・・・を・・・・・・求めていたのか・・・・・・・・・?
・・・・・・・・・・・・っ・・・・・・・・・・・・・・・・。心臓が痛いほど脈を打つ。無言を守るのが耐え切れなくなり、
息遣いが・・・・・・荒くなる。こんなに激しい感情になるのは・・・・・・・・・生まれて初めてだ・・・・・・・・・。
「・・・・・・D?苦しい・・・・・・の・・・・・・?」
「・・・・・・・・・・・・・・・。」
・・・お前に・・・苦しめられてんだよ・・・・・・。
目隠し越しに彼女を見つめ・・・俺はとうとう我慢できなくなり・・・・・・・・・初めて、名前を呼んだ。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・。」
「・・・えっ・・・・・・・・・?」
彼女は少し驚いたように俺を見つめる。
「・・・・・・・・・一回しか言わねぇから。 ・・・俺も・・・
が・・・・・・・・・・・・好きだった。」
俺は彼女に静かに近寄り・・・・・・
を・・・
を・・・・・・激しく抱き締めた。痛いぐらいに・・・・・・力強く・・・
「!・・・あっ・・・」
俺に抱きしめられて動揺する。・・・本当ならこのままいっそのこと、倒れてしまいたい。
体のバランスを崩さないようにが必死に片手で床につく。俺はさらに強く、抱きしめる。
の綺麗な曲線の白い首筋が俺の唇に触れる。独り言のように、呟いた。・・・
「・・・っ・・・全く、こんな気持ちじゃなかったのによっ・・・・・・ほんと、自分でも情けねーぐらいだよっ・・・
こんなにも・・・俺を・・・・・・変えてしまうお前がいるなんてよっっ・・・・・・・・・。どうかしてるぜ、俺も・・・本当に・・・。
・・・お前の・・・せいだからな・・・・・・。最後まで責任・・・取れよな・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・D・・・・・・。」
は俺を・・・優しく抱き返してくれた。背中に回しているの両手が・・・温かい。
「・・・・・・責任取れって言ったって・・・・・・・・・どう取れば・・・いいの・・・・・・?」
「・・・・・・こうだよ。」
俺は
の体を強引に抱き抱えるとベッドの方に思い切り押し倒した。
━━━━どさっ。
「きゃっ!デ、・・・D!?」
戸惑う。しかし抵抗する様子はなく、ただ俺を見つめていた。
「
・・・・・・・・・お前だけに見せてやるよ。ありのままの・・・・・・俺を」
と言うと愛用の目隠しをゆっくりと下から剥すように外した。投げ捨てる。外した際に乱れてしまった長い髪を首を振って整える。
が俺の素顔を見た途端、顔をかぁっと
真っ赤にさせた。
「あっ・・・・・・。 ・・・D・・・やっぱり近くで見ると・・・・・・すごく・・・かっこいい・・・・・・。」
俺は他人に見せたことのない笑みを愛する人だけに初めて見せた。
が俺の頬にそっと手を伸ばし、静かに触れる。細く、綺麗なの白い手。黙って重ね合った。
「・・・それで・・・ずっといてよ。・・・」
「・・・お前と・・・二人っきりの時だけな。」
「・・・・・・D・・・わたし・・・・・・・・・すっごく、幸せだよ・・・・・・・・・。」
「・・・っ・・・・・・っっっ・・・・・・。」
の優しい笑顔・・・・・・愛おしくて堪らない。俺はそのままを押し倒したまま、静かに、ゆっくりと・・・
唇を重ね合った。
「・・・っ・・・・・・んっ・・・・・・んぅっ・・・・・・・・・。」
の甲高く、可愛い声。その声をもっと聞きたくての小さな唇を必死に吸い上げる。そして・・・吐息混じりに
舌を入れ、ゆっくりと・・・唇全体を舐め回す。も必死にそれに応えてくれた。俺の舌との小さな舌が絡み合う。
そして、互いに求め合うように両方の指と指を絡めあった。
「・・・っっ・・・・・・・・んっっ・・・・・・・・・はっ・・・・・・あぁっ・・・・・・・・D・・・・・・っ・・・・・・・・。」
「・・・っ・・・・・・・・・
・・・・・・・・・お前が・・・・・・欲しいっ・・・・・・。」
「んんっ・・・・・・はぁっ・・・ぁっ・・・・・・D・・・・・・だいすきっ・・・・・・愛してるっ・・・・・・。」
「・・・・・・俺もだぜ・・・・・・愛してるっ・・・・・・
・・・・・・。」
・・・どれぐらい長い時間こうしているのか分からない。けど・・・構わない。俺とは必死に抱き合い、
熱いキスを何度も繰り返していた。手を強く・・・・・・繋ぎあったまま・・・。━━━━
━━━━「・・・・・・・・・ねぇ。・・・・・・D・・・・・・」
「ん?」
月明かりだけが頼りの部屋。ベッドの中で俺の上に重なるようにして、人生初めて出来た恋人・・・
が幸せそうに俺にもたれかかっていた。月の光によって照らされる、の綺麗な顔。真っ白な肩。その肩を大事に抱きしめる。
が俺ににっこり笑って見つめてくれる。俺も笑って優しく応え、もっとよく顔が見えるようにの髪を丁寧にそっと
上げてやった。
「・・・・・・・さっきは・・・・・・ごめんね。勝手に・・・決めつけちゃって。」
「・・・いや。
の言う通り、俺も言わないことが多いから。・・・・・・・・・俺の方も悪かった。」
「・・・・・・それで?さっきの可愛い女の子は、Dのお友達?」
「まぁな。・・・・・・あんな奴が彼女でたまるかよ。俺の女は・・・・・・お前だけで十分だ。それに、
の方が
・・・・・・もっと可愛い。」
の耳元にそっと囁く。はそれを聞いて頬を赤くさせ・・・「ふふっ」と笑った。
「・・・もうっ・・・照れるからやめてっ・・・・・・////」
「本心だぜ?」
恥ずかしそうに顔を伏せる
の頭を俺はにっこり笑って優しく撫でてやった。
「・・・D・・・・・・・・・私、・・・幸せだよ。Dと・・・こうしていられるなんて・・・・・・夢、みたいっ・・・・・。」
「・・・・・・それ以上言うなよ、恥ずいだろ。・・明日からギター、とことん教えてやるから・・・・・・ゆっくり寝とけよ。」
「うん。・・・D、先生・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
は、眠ってしまったのだろうか。静かに寝息をたて始めた。
俺は
を強く抱き寄せ、髪を上げ、額に優しく口づけた。彼女が目覚めるまで・・・いつまでもずっと、離さなかった。
━━━━・・・お前と出会えて良かった。
俺を・・・こんな幸せな気持ちにさせたから。━━━━
ーendー
★・・・・・・・・ん〜甘い、甘い、甘いッッッ!!!
何もかも甘すぎる!!!!!!!!!!!!!(萌死)ひたすら甘い!!!略してひた
甘!!!!!!(略すなし)
何度も言いますが決して下心があって書いたつもりではn(ry
しかもロミ夫さん小説より妙に長い気がするという。。。。。;;;;;Σ(゚д゚lll)コンナハズデハ・・・!!
はい、ドキドキ恋に戸惑い中の、ちょっと可愛い面があるDさん。作れて&書けて自分でも楽しかったです〜(*´∀`*)
もしかしたらロミ夫さんの2番目に好きかもしれませんね、Dさんは(*´д`*)
そして最初の所、mikko.の嫁キャラ残り4人がちゃっかり仲良く共演しています♪(*´Д`)仲良しだったらいいなぁ〜
という、相変わらずの妄想で・・・(*≧∀≦*)
あぁ絵描くよりハマりそうだ・・・(←
※7・2文章を一部思いっきり変更しました。・・・んー、少しやりすぎた感がありますけど、まぁいいや♪ということで(←
14.4.12