『今日つよしのバースデーライブだね。頑張ってね!』





本番30分前に俺の携帯電話に送られてきた彼女からの着信メール。『頑張ってね』、だけで
『見に来る』までは書いていなかった、短い文面。顔文字付きで返事はしておいて携帯電話を閉じる。
…本当は来て欲しかったな。と、非常に残念に思いつつも。



多くのファンたちが押し寄せてくるライブ。特に大好きな彼女が来なければ、俺にとっての本当のライブは始まらないのだ。
…忙しくて来れない事情が重なってしまったんだろうか。いや、それともこっそり見に来てくれているのかもしれない。
そんな彼女が頭の中で気になってしまい、ライブに集中出来ない自分が目に浮かぶ。そのせいで変なミスでもしたら柄にもない。
心の気分がすぐれないまま準備を進め、時間だけが刻一刻と過ぎていく。



本番5分前。再び彼女からの着信メール。まさか、と確認する手が素早かった。



『前の席で見ているからね』



さっきまでの気分が嘘のようだった。花が咲いたように活気がぱぁっと咲く。
君が居る今夜のライブ。見守ってくれていると思うと、自然と力が沸々とみなぎってきた。



「今夜も熱いライブ、お前らに届けるぜっ!『儚きは我が決意』、いっくぜーっ!!!』




俺にとっての『本番』が、ここから始まった。――――――





























っ!お待たせっ!」




ライブが無事終了した帰りの人ごみをなるべく避けてからだいぶ遅い時間帯になった暗がりの中で。
俺の帰りを待っていた大好きな彼女――― の姿を見かけると冒頭の台詞を言いながら傍に駆け寄る。
は俺の姿に気づくと大きく手を振ってくれた。



「来てくれてたんだな。へへっ、嬉しくて気合入れちまったぜ!」

「当たり前でしょ。彼氏の誕生日ライブを知っていて見に来ない彼女がいますか。今日のつよし、すごくかっこ良かったよ。」

「そりゃあな、大好きな の為にここまで頑張ってきたからな!」

「やだ、もうっ…////」



恥ずかしがって照れ笑いをする が、暗い夜でもとても眩しく見える。日常やライブの疲れを一気に忘れさせてくれる彼女の笑顔を見るのが
俺の人生の中で一番の楽しみなのだ。自分の首に巻いていたマフラーを解くと
の首に
ぐるぐると巻いてあげた。



「ほら、着ていけよ。」

「そ、そんな、これ、つよしのマフラーでしょ?」

「いいよ、俺のライブに来てくれた礼っ!」



立春を過ぎてもまだ寒さが残る季節だ。
厚いマフラーの上から覗く、真っ赤な顔の が堪らなく可愛いかった。まだちらほらと人がいる夜道を、互いの手を繋いで帰る。
繋いだ手の温もりが感じられる、マフラーはいらない程の幸せなひと時が俺は大好きだった。出来れば長く続いて欲しい、そう思うほど。
しばらく歩いていると、 が周囲に誰もいない事を確認してから足を止めた。胸が高鳴った。ライブの帰りの時でしか味わえない、
頑張ったご褒美のキスだ。待ってましたと言わんばかりに自然と頬が緩む。そんな俺を呆れたように笑う



「さっすが 、分かってくれてるなっ!」

「いつもの事でしょ。それにしなかったら、つよしがまたうるさいだろうから。」

「人目なんか気にせずに堂々としたら良かったのに。誰も見ちゃいないぜ?」

「そこまで恥ずかしい事は出来ません。」



そうきっぱり言ってから はそっと目を閉じ、繋いだ手はそのままで少し背伸びをして顔をゆっくり近づける。
―――― 眩暈を覚えた。いつもの頬ではなく、唇の方だったから。



「ちょっっっ……////っと、 っ!それは反則っっ……!!」

「ふふ、いつもの所じゃつまらないだろうって思ったから。嬉しい?」

「う、う、嬉しいっていうかっ……!」



いつもと違う大胆な行動に驚いている、と言いたかった。さっきよりも一段と照れたように頬に赤みを帯びた の顔。
その顔も、マジで可愛すぎるから反則だってっ…!既に熱いレベルに達していた。



「遅いけどこれから私の家に来る?バースデーケーキ買ってあるんだ」

「マジでっ!!?さっさと帰って食べよーぜっ!そんで二人だけでパーティー開こうぜぃっ!!」

「慌てない慌てない。ちゃんと家に帰り着いてからね。」

「おっけ〜っ!!☆」




春を感じさせてくれるような暖かい笑顔。どれだけ俺を幸せな気持ちにさせてくれるだろう。


一日の偉業を成し遂げた後の君の笑顔が、俺にとっての何よりの、最高のご褒美なんだ。




-end-






★最近最後ら辺がいつもグダグダな感じがするが……気のせいか???(´・ω・`)うん、気のせいでしょうっっっ!!!(←
王子様に対抗するようにDJのつよしくんを書きました♪7日間もの連勤があったので次の休みまでの間に1話、2話仕上げたかったんですが無理でしたねっ★ (死)
次こそは必ずっ…!次回の目標は5日連勤の内に、3話完成させるぞいっ!!!(ヾノ・∀・`)ムリムリ

…最近厄介な事件が多いせいで放心状態に陥っています。。。う”〜〜ん、頭が痛い…果たしてこんな悠長な毎日を送っていいのだろうか、と
常々思っております……。。。。。


15.2.7