「明けまして、おめでとうございます!」

「おめでと〜〜!!☆」

「あけおめ、ことよろ!」

「おめでとうございます。」

「…おめでとう。」


「ふむ、おめでとう5人とも。今年もよろしくな。」


「こちらこそよろしくお願いします!」

「あとばーちゃん、これ、 と一緒に選んだばーちゃんへの誕生日プレゼント!」

「お誕生日おめでとうございます、茜さん!」

「おめでとう、茜さん!(パチパチパチ☆)」


「おぉ、前から欲しいと思っていたひざ掛けじゃないか。ありがとな二人共。嬉しいぞ。」










今日は烈くんの家で朝からお正月パーティー。本当は元旦に開きたかったけど
帰省したり、家のことで忙しかったりなどなど、お互い時間も合わず都合もなかなか取れなくて
5人こうして集まるのは今日で今年初めてとなる。そしてタイミングいいことに重なった
烈くんの実のお婆ちゃん・茜さんのお誕生日。お正月シーズンというめでたい時期に生まれたんだ、と初めて知り
更にめでたいことが二度もあるなんて、とこんなに嬉しい事は無かった。


烈くんのご家族たちが私達の為に美味しいおせち料理やお雑煮、おぜんざいをもてなし、
こたつに暖まれながらお腹いっぱい食べる。その後暖房の入った広い和室で
茜さんも参加しての双六、福笑い大会など、伝統遊戯を楽しむ。特にいろはかるたは最高に面白かった。
烈くんの何回ものお手つきに、みんな大笑いっぱなし。茜さんにとってはっちゃけた誕生日となった。


烈くん、風雅くん、氷海さん、そして鈴花ちゃんと一緒に過ごした楽しい思い出も去年の話になってしまうんだなぁとしみじみ思う。
早くも5日経ったのに新年が来たという実感が未だ沸かなかった。けれどこうしてみんなの元気な顔が見れてとても良かったし、
これからワクワクして来た。今年一年、きっといい事ありそうだなって。



さん。貴女と話がしたい。付き合ってくれるじゃろ?」

「?私と…ですか?」



午後に差し掛かった頃、茜さんに呼び止められたので少し緊張してしまった。見た目は幼い少女でも中身は私達よりかなり年上の
れっきとしたお婆ちゃんなので、いきなりきついお説教を聞かされるんじゃないだろうか、なんて思ったけど
「大丈夫じゃ、難しい話ではないし、別に叱ったりはせん。」と私を見上げながらにこにこ笑っていた。



「烈!お前もちょうど良い、わしと付き合え。」

「え、れ、烈くんも??」

「何だよ〜;;これから凧上げしようと張り切ってたってのに」

「まぁまぁ風雅君たちが楽しんでいる所を見守るのも悪くないじゃないか、ばーちゃん孝行せい」

「さっきひざ掛け贈ってやったばっかりじゃねぇかよぉ〜。。」



風雅くんに「たっぷりお説教もらっとけ」と冷やかされ、ぶつぶつ文句言いながらもこちらにやって来た烈くん。
長く伸びたベランダの廊下側。真ん中に茜さん、両端に私、烈くんが腰掛ける形となった。
私達の贈ったふかふかのひざ掛けを大事に覆っている茜さんの顔はとても満足げに笑っていた。



さんが烈たちと出会ってからどのぐらい経つかのう」

「そうですね、もう一年は過ぎていると思いますよ」



自分でそう言ってもうそんなに経つのか、と内心驚いている。4人と初めて対面したあの日がまるで昔のようでとても懐かしいな、と
自然と綻びる。もし私達お互い出会っていなかったらこんなに楽しい毎日はきっと無かったと思う。
その烈くんはつまらなさそうに風雅くんたちのはしゃぎ回っている光景を眺めながら
床に転がり落ちていたお手玉を上に放り投げてはキャッチして、を繰り返していた。



「烈も さんと出会ってからというもの、見違えるように優しくなって。昔の烈とは天と地の差じゃ。」

「え、何ですか?それ」

「…ふむ、話せば長くなるがな」

「あ”〜まぁた始まったよ、ばーちゃんの昔話。もう過去のことはどうでもいいっつの…。」

「烈。お前も黙って聞かんか。でないとお年玉はお前だけにやらんぞ。」

「イタタタタ…;;;」



ポカリとげんこつを喰らわす。さっすがお婆ちゃん迫力があるっ。けど、昔の烈くんって…?
本人や他のクラスメートの口から聞いたことないのでそんな話は全く知らない。
聞いてみたいという好奇心からいつの間にか茜さんに身を乗り出している私がいた。
自分の孫を目を細めて見つめながら語りだす。



「…昔のこいつは今みたいに素直に言うことをなかなか聞かんとんでもない頑固者じゃった。
勝負事には熱いが授業はまともに受けずに休日は朝からゲーセンに入り浸りで…。
祖母である流石のわしでも手に負えんぐらいじゃった。こいつの将来はどうなるかと毎日心配でたまらなかった。
勿論風雅君たちに会っても…性格は全く変わらんかった」

「…そう、だったんだ…」

「孫のガールフレンドに、自分の孫の失態談をチクるか?フツー…」

「事実じゃろうが。さっきの警告を忘れたか?」



茜さんから怖い剣幕で睨まれ、それ以上何も言えなくて小さくなる烈くん。親子愛が溢れていて何だか微笑ましい。
けどそんな烈くんは想像したことが無かったので、とてもびっくりしている。こんなこと言っちゃ悪いけど…不良に近かったんだね。



「ところがだ。烈の奴、突然人が変わったように急に穏やかになってわしの気を遣ったり心配もするようになりおった。
不思議になって聞けば… さん。貴女と友達になったおかげだからだ、と言うではないか。」

「わ、…私っ…?」



それは本当なの?と彼の方を見ると無言のまま頭を掻きながら小さく頷いていた。炎を操る烈くん。
本当に炎のように顔が赤くなっちゃってる。それって言い換えれば……
まるで私が烈くんそのものをガラリと変えたようなものじゃないか。そんな自覚はないのに何だか無性に恥ずかしくなってきた。
そんな私達二人を見て「ふふ。」と小さく笑う茜さん。



「優しい孫を持って大変幸せに思っている。これも全部 さんのおかげじゃ。わしからも礼を言うぞ。
ありがとう さん。色々世話を焼かす孫になるかもしれんが、皆といつまでも仲良くな。」

「は、はいっ!…」



茜さんの小さな腕がそっと伸びてきて、私の頭をくしゃくしゃに撫でる。小さいお婆ちゃんに撫でられるなんてな、と
とても照れくさくって仕方がないぐらいだった。そして、茜さんから烈くん達のことを託されたような気がして嬉しくなった。



「…い、言っとくけど、俺はもとから優しいんだからなっ!」

「嘘を付け。今更見栄を張っても無駄だぞ烈。お前も頭を撫でてやろうか?」

「そうだよ、見たい見たい!せっかくだからお婆ちゃんに撫でてもらったらー?」

「こっ、子供扱いすんなよなー!;;;」

「…さぁて、かったるい話はここまでにして、これからわしと一杯付き合えっ!」



一杯っ!?と驚いている間もなくとてつもなく大きなひょうたんの形をした瓶が床にどんっと叩きつけられる。
その中身を一気に飲み上げるとほろ酔い気分になってしまった茜さんを見てうわっ、やっぱり…;;と思った。
外見からすれば、子供がお酒を飲むなんてなんとも異様な光景だろう。



「ひっく、。o○ さん、烈、お前らも遠慮せんと飲めっ!」

「い、いえ、私達、まだ、未成年ですからっ…;;;」

「お前らよりも年上のわしが飲めと命令しているんじゃから飲め飲めっ!年齢がどーの関係ないっっ!」

「いや、だから〜;;;その…」

。とっとと退散しようぜ。」



これ以上付き合ってしまうと生きて帰れなさそうだ、と悟った烈くんが、尚も戸惑っている私の腕を取ると
不満げな表情の茜さんを残してこの場を後した。










「…全く年寄りってのはどぉしてこう、昔を話したがるのかなぁ…。俺たちも年行ったら皆あぁなるのかなぁ…;;」

「ふふっ、でも素敵なお婆ちゃんですごく羨ましいよ。ずっと大事にしてあげてね。」

「あぁ。勿論だよ!」



ちらりと茜さんを覗き見る。クールで穏やかだった性格は何処へやら、お酒を飲んで始終はしゃぎぱなしになっていた。
無邪気な笑顔。まるで本当の子供のようだ。思わず笑顔が零れてしまう。



約束しよう。烈くん達とずっとずっと、かけがえのない ”心友” でいることを。



「烈くん」

「ん?」

「また、これからもよろしくね。」

「おう!こちらこそよろしくな、 っ!」




今年も、幸せいっぱいの一年でありますように。




-end-






★つぎドカ繋がりで烈くんのお婆ちゃんの茜さんを書きました☆茜さんカッコイイですね( ´ω`)♥
こんなかこかわいいお婆ちゃん、逆に羨ましいですなぁ。
今年も夢小説をいっぱい書きまくる一年でありますように〜♪(*´∀`*)絵も……暇あれば頑張りますよ(をい)


14.12.31